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iPhone SEに託す、アップルの狙い

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iPhone SEに託す、アップルの狙い
●性能はiPhone 6sを踏襲
アップルは、米国時間3月21日に、カリフォルニア州クパティーノの本社でメディアイベントを開催し、4インチiPhone SE、9.7インチiPad Proなどを発表した。新iPhoneは例年9月に発表されるが、この時期に新製品を公表したアップルは何を狙っているのか。

○発表されたiPhone SEとは

今回発表されたのは、4インチRetinaディスプレイを搭載するiPhone SEだ。アップルはこれまで、2013年に発売されたiPhone 5sを併売してきたが、2年ぶりに4インチモデルの最新機種を投入することになった。

iPhone SEは、16GB 399ドル、64GB 499ドルと、これまでのiPhone 5sと比較しても価格を大きく引き下げた「エントリーモデル」という位置づけになる。しかし、その性能は、iPhone 6sをそのまま踏襲したもので、2015年の最新モデルそのものだった。

iPhone SEは、ディスプレイが小さく、感圧タッチパネルである3D Touchに対応していない点以外は、iPhone 6sと同等。A9プロセッサ、M9モーションコプロセッサ、1200万画素センサーの4Kビデオ撮影対応カメラ、セルフィー向けフラッシュ「Retina Flash」をサポートする500万画素インカメラ、最大150Mbpsの通信速度とVoLTEをサポートするセルラー機能、そしてNFCチップを内蔵しApple Payをサポートした。


スマートフォンは大画面化が一段落しており、4.5インチ以上が標準的なサイズとなった。そのため、iPhone SEは、4インチサイズとしては最高のスペックを誇るスマートフォンと言っても過言ではないだろう。

4インチサイズのiPhoneとしては、かつてiPhone 5cも販売されたが、廉価版ながら性能に妥協があったことから、振るわなかった経験がある。小さいから性能が低い、という概念を打ち壊す、全部入りの4インチスマートフォンを投入した意図はどこにあるのか。

●アップルの現況と2つのニーズ
○背景1:iPhone・スマホ成長の減速

アップルのビジネスで最も収益を上げているのは、紛れもなくiPhoneだ。全体の収益の68%を占め、2015年は、2億3122万台を販売。前年よりも6200万台多く販売することができた。これは、iPhone 6シリーズによる大画面化の恩恵だ。


しかし、2016年第1四半期の販売台数は、7480万台と、前年同期と比較してたった30万台の増加だった。iPhoneセールスの成長に急ブレーキが掛かり、2016年第2四半期は、前年同期割れを見込んでいる。

スマートフォンの販売台数の成長鈍化は、アップルに限ったことではない。台湾の調査会社Trend Forceによると、世界の2015年のスマートフォン販売台数は、12億9270万台で、前年と比較して10.3%の伸びに留まった。

この数字は、それまでの成長率が25%を超えていたことと比較すると、大きな減速となる。2016年は、さらに低成長になると予測されている。

アップルはスマートフォンメーカーの中ではシェアを微増させているが、スマートフォン市場全体の販売減少のトレンドは、iPhoneのセールスにも影響を与えることになる。iPhoneの売り上げが鈍化すれば、iPhoneを主力製品としているアップルの成長鈍化になることは明らかだ。


○背景2:2つの取りこぼしの穴を埋める

iPhone SEは、これまでアップルが得意としてきたハイエンド、先進ユーザーの囲い込みとは異なる、新たな層へのリーチを拡げる点がポイントだ。その層とは、「小型のiPhoneへのニーズ」、そして「より低価格のiPhoneへのニーズ」の2つだ。

アップルによると、2015年に4インチiPhoneとなるiPhone 5sを3000万台販売したという。現在の世界でのiPhoneユーザーの約4割が、4インチを初めてのiPhoneに選んでいる。また調査によると、米国では20%のユーザーが4インチのiPhoneを好むという。

iPhone 6以降の4.7インチ、もしくは5.5インチのスマートフォンは、片手の操作で全画面をカバーすることは難しく、また手に馴染むサイズとは言いがたい。例えば女性や若年層のユーザー、あるいはiPadと併用しているユーザーにとっては、よりコンパクトなiPhoneへのニーズがある。

また、低価格のiPhoneは、中国を始めとした途上国でのiPhoneのエントリーモデルとしての役割もある。
中国市場においてはユーザーの約6割が、初めてのiPhoneとして4インチモデルを選んでいる。これは、4インチのiPhone 5sが、iPhone 6シリーズよりも低価格である点が挙げられる。

小型のiPhoneを好む先進国ユーザー、そしてより低価格のiPhoneを求める新興国ユーザーの2つのニーズが、4インチモデルのiPhone SEを用意する主たる理由と言えるだろう。

●Apple Payを収益源に
○背景3:Apple Payを本格的な収益源へと成長させる

iPhone SEは、HD対応ディスプレイと3D Touchの2点以外は、性能の妥協なく最新のiPhoneの機能を盛り込んだ。4インチを好んで使い続けているユーザー、そして低価格のiPhoneを求めるユーザーに対しても、最新のiPhoneの機能を提供できるようになる。

この点で特に影響が大きいと見られるのが、クレジットカード決済をiPhoneのNFCチップと指紋認証で実現するApple Payだ。

Apple Payは、現在、米国、英国、オーストラリア、カナダ、そして中国でサービスを開始している。特に中国は2016年2月にサービスを開始したが、既に300万枚のクレジットカードが登録された。


Apple Payの決済によって、アップルは決済金額の0.15%を手数料として得られる。日々の決済にアップル Payを利用すると、アップルにとって新たな収益源となり得るのだ。

特に人口の多い中国でApple Payを開始した意義は大きい。彼らが国内で、あるいは対応国への旅行でApple Payを利用すれば、Apple Payにとって大きな成長を遂げる原動力となる。

4インチの低価格iPhoneのApple Payのサポートは、特に中国のユーザーのApple Pay利用を増加させる点で、デバイス販売以外の収益を大きく伸ばせるだろう。

○アップルのビジネス全体に成長余地を与える

iPhone SEは、既存のiPhone 6以降のユーザーにとっては、さほど魅力的には映らないかもしれない。しかし、iPhoneの販売が中心のアップルのビジネスにとって、iPhone SEは成長余地を確保する重要なデバイスとなる。アップルはiPhone SEの発売によって、第2四半期もしくは第3四半期の、セールスが最も落ち込む期間に、新たな販売のピークを作ることができるだろう。
iPhone SEによって、iPhoneのセールスは、年間で1000万台から1500万台の上乗せ効果を見込む予測もある。実際、iPhone 5sが2015年に2000万台販売されたことを考えると、これより価格が安く、高い性能となるiPhone SEは、 古い4インチデバイスの買い換えと新興国の開拓によって、さらに多くの台数を売り上げるだろう。

少なくとも、iPhone 5cのような「失敗」の烙印は、押されないどころか、アップル自体の成長を助ける役割を担っていくことになる。

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