Windows 10 Insider Previewを試す(第45回) - 遂にMicrosoft Edge拡張機能をサポートしたビルド14291
2016年3月17日(現地時間。日本は18日早朝)、MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド14291をリリースした。今月2回めとなる本ビルドでは、Microsoft Edgeの拡張機能サポート、タッチボードや手描きキーボードの日本語拡張、従来の「Insider Hub」を「Feedbuck Hub」に統合するなど多くの改善を加わえている。
○Microsoft Edgeが拡張機能をサポート
前ビルドであるビルド14279は多くのバグを残していたためか、本ビルドに至るまで約10日間もの時間を要した。1カ月を3分割すれば順当なため、"要した"という表現は適切ではないものの、ビルド14279まで発生していたバグの一部は改善したが、已然と残る問題もあるので、最後までご覧頂きたい。
さて、ビルド14291最大の特徴は待望のMicrosoft Edge拡張機能のサポートである。先日、拡張機能ページが一瞬Web上で公開されるというトラブルもあったが、振り返ってみれば本ビルドのリリースに合わせて公開するつもりだったのだろう。
本ビルドのMicrosoft Edgeは34.14291.1001.0に、EdgeHTMLは14.14291へ更新し、<詳細>メニューには<拡張機能>が加わった。
<拡張機能の入手>から拡張機能ダウンロードページ(プレビュー版)を開き、各拡張機能をダウンロードする仕組みだ。
執筆時点で入手できるのは「Microsoft Translator」「Reddit Enhancement Suite」「Mouse Gestures」の3つ。1つめはお馴染みのMicrosoft製翻訳ツール、2つめは英語圏で人気の掲示板Redditを使いやすくする機能セット、3つめは文字どおりMicrosoft Edgeでマウスジェスチャーを有効にする拡張機能である。それぞれを展開したフォルダーを参照し、インストールする仕組みだ。今回はあくまでもプレビュー版のため、インストールに伴う手順は煩雑だが、今後はWindows Storeから提供を行う予定である。
なお、ジェネラルマネージャーのDrew DeBruyne氏のブログ記事によれば、Microsoft Edge拡張機能はこれだけに留まらず、AdBlockやAdblock Plus、Amazon、LastPass、Evernoteなどの移植を予定しているという。Microsoft Edge自身にも改良が加わり、タブのピン留め機能が加わった。こちらは開いているタブをFaviconサイズに縮めて固定するというもの。
ピン留めを解除しない限り、Microsoft Edgeを終了しても次回起動時に開くため、Webメールやスケジュール、ポータルサイトなど頻繁にアクセスするサイトをピン留めしておくと便利だ。
また、URLペースト時にそのままWebサイトにアクセスする<Paest and Go>が加わり、クリップボードの内容が文字列の場合は<Paste and search>へ自動的に切り替わる。筆者はまだMicrosoft Edgeを常用Webブラウザーとしていないため、使用時はURLのコピー&ペーストを行っていたが、その都度[Enter]キーを押すのを面倒に感じていた。本機能が加わることで、わずかながら操作性が改善したといえるだろう。
●UWPアプリも改善されたが……
○UWPアプリも改善されたが……
Microsoft Engineering Systems Team CVPのGabriel Aul氏の説明によれば、UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーションの「マップ」も改善を加えたという。例えばWindows 10で起動すると、タブ機能などいくつかのUI改善が加わり、Windows 10 Mobileで起動するとほぼ同じUIになったことが確認できる。
「マップ」の改善ポイントは、Windows Mapsチーム プロダクトマーケティングマネージャーのKushal Kapoor氏の公式ブログが詳しい。タブを使った検索結果の複数保持機能をアピールしながら、公共施設や観光地などの提供情報拡大、バスの乗り換えやカーナビに関する改善も加わったという。
このあたりは米国に限った更新らしく、日本国内で乗り換えを試したところ、提示された手順は以前のまま。加えて日本地図自体も相変わらず改善されず、軸や角度を変更しても地図上の文字列は追従しない点はファーストリリース版と同じだ。この点はWindows 10 Mobile国内展開の大きな障壁となるだろう。
更新したUWPアプリケーションは「アラーム&クロック」も含まれる。インラインタイムピッカーとデザインを変更し、わずかながら使い勝手がよくなった。もっとも個人的にはちょっとした用事であればCortanaのリマインダーを使った方が便利に感じるので、正直に述べると興味を惹かれる改善ではない。
我々として嬉しいのは日本語環境に対する2つの強化だ。1つめは日本語に対応した片手かなタッチキーボードの搭載。
キーボードレスのタブレットを片手で使う際に、スマートフォンで馴染んだキーボードレイアウトが使用可能になる。この片手かなタッチキーボードはタッチキーボードと同じく任意の場所に移動できるため、右手でも左手でもよい。
もう1つは日本語の手描き入力モードである。もちろん以前から同機能は用意されてきたが、1文字ずつ認識させる旧態依然の手描き入力モードだった。個人的には往年のZaurusを連想していたが、今回のは英語版の手描き入力で早々に採用されていたテキストボックスにそのまま描き込むと文書として認識する仕組みが日本語に対応した形だ。公式ブログでは触れていないが、日本マイクロソフトの傘下にあるマイクロソフトデベロップメントの努力やフィードバックが実った結果と思われる。
Windows Insider Program参加者はご承知のとおり、「Windowsフィードバック」と「Insider Hub」という2つのUWPアプリケーションが提供されてきた(前者は通常のWindows 10でも使用可能)。本ビルド以降は両アプリケーションの機能を統合した「Feedback Hub」を使用することになる。
ただし、Feedback Hubは不安定らしくスクリーンショットを作成するショートカットキー(PCは[Win]+[Shift]+[?]キー。Windows 10 Mobileデバイスはボリュームアップボタン+電源ボタン)を押すとハングアップするが、次のビルドで修正が予定されている。また、「Windowsフィードバック」をスタートメニューにピン留めすると、正しく動作しない問題は将来的な修正タスクに含んでいるとAul氏は説明した。
●Windows 10 Mobileも着々と進化
○Windows 10 Mobileも着々と進化
最後に本ビルドで加わった修正を列挙する。通知領域で発生していた表示の乱れや、デバイスの取り外しアイコンのデザインが古くなってしまう問題、Wi-Fi接続時にWEP暗号化を使用した際にセキュリティ保護がなされなかった問題を修正。8インチ未満のデバイスをポートレートモードで使用する際、Microsoft Edgeの「ページ内の検索」ツールバーに<×>ボタンが表示されない問題や、サジェスト検索時に発生していた問題を修正した。
なお、以前のビルドで発生してたSurface Pro 3/Pro 4/Bookでハングアップする問題は未解決。Aul氏は電源ボタンを長押しして、強制的な再起動を実行する手順を紹介している。
また、Xbox OneおよびXbox 360用コントローラーをPCに接続するとOSがハングアップする問題が新たに確認された。いずれもエンドユーザーレベルでは対応できない問題のため、SurfaceシリーズユーザーやXboxコントローラーをお使いの方は本ビルドを避けた方が安全だろう。
また、Hyper-Vの仮想スイッチが有効な環境では、通知領域のネットワークアイコンが正しく表示されない問題が新たに加わったが、こちらはクライアントHyper-Vに限らず、VMware Workstationでも同様の問題が発生する。もっともアイコンの状態に限らず、ネットワークには正しく接続できるため、次ビルドまで我慢する他はないだろう。なお、ビルド14271から発生していた「QQ」や「カスペルスキー アンチ ウイルス」などに起因する問題は未解決だ。
今回はWindows 10 Mobileも同じくビルド14291に更新している。こちらは前回の時点でビルド14267だったが、途中でビルド14283へ更新しているが、こちらは日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 エバンジェリスト 高橋忍氏のブログ記事が詳しいので、そちらを参照してほしい。
Windows 10 Mobile Insider Preview ビルド14291では、Windows 10 Insider Previewで説明したWEP暗号化の問題やテキスト入力時に複数の単語を入力すると反応が遅くなる問題、フォントサイズを大きくしてもアプリケーションなどが反応しない問題を改善。
また、「設定」がフォトピッカーが誤動作する現象も改善している。
Microsoftが認識している問題は少なくない。デバイスリセットする際にアプリケーションの再インストールが失敗し、正しく動作しなくなる問題を同社認識しているという。対応策としてAul氏はバックアップ機能の無効化を推奨している。日本では関係ないもののMicrosoft Bnad 1/2とペアリングしている場合、APIエラーが発生する問題が発生しているそうだ。Aul氏はデバイスリセットや言語変更を推奨しているが、音声通話などにも影響をおよぼしているため、私見ながら根深いバグのように感じられる。
Windowsフィードバック改め「Feedback Hub」で問題を提案するとアプリケーションごと落ちてしまう現象は本ビルドでも確認した。Windows 10およびWindows 10 Mobileを改善しようとするユーザーのやる気を根本から削いでしまうため、早期の対応を期待したい。さらに日本未発売のため、大半のユーザーに影響はないが「Microsoft Display Dock」のガジェットアプリケーションが正常に動作しないようだ。Aul氏は「Continuum for Phoneは使用できるが、USB Type-Cに関する安定性に問題があるものの使用に支障はない」と説明している。
また、「設定」の<更新とセキュリティ(Update&Security)>に<Windows Update Program>が加わったが、こちらを選択してもアプリケーションがハングアップするため、本ビルドでは「Windows Insider」の使用を推奨しているが、Feedback Hubがリリースしたばかりなので致し方ないだろう。
ビルド14291はMicrosoft Edgeの機能拡張やUWPアプリケーションの更新、Windows 10 Mobileの機能向上など多くの面で改良が加わっている。以前のビルドでは携帯データネットワークを無効にしてもモバイルホットスポットによるテザリングが可能だったが、本ビルドからは携帯データネットワークの有効化が必要になるなど、整合性を整えつつある。まもなく開発者向けカンファレンス「Build 2016」も開催することから、開発チームには一段の努力を期待したい。
阿久津良和(Cactus)