『あな歌』萩原健太郎監督が語る注目ポイント「共通したモチーフとして…」
小説家の燃え殻氏による書き下ろし、成田凌主演によるHuluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(全8話・Hulu独占配信中)の撮影セット写真&場面写真が27日、公開された。
同作は、デビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)がベストセラーとなった燃え殻氏による、映像化のための書き下ろし新作。17歳と27歳に人生の分岐点を迎えた者たちが抱く夢と葛藤、そして後悔を描き、正解が出づらい現代社会を痛々しくも瑞々しく映し出している。
配信がスタートすると、映像の美しさも話題に。気だるい朝、なんてことない昼下がり、自分だけが取り残されているような気になってしまうくらい眩しい夜、そんな見慣れたはずの風景が見たことのない新しい景色にも見えるような描写になっている。
萩原健太郎監督は「自分の人生の主人公から降りた人たちの話でもあるので、彼ら自身も一見日の目が当たらない影のような場所に存在していたいと考えました」とコメント。人物だけでなく、彼らの部屋、街、空に至るまで「とにかく着飾らせることなく、ありのままを美しく撮る。光ではなく影を美しく撮る。
そういうことを意識しました。」と、そのこだわりを明かした。
第1話で登場する荻野(成田凌)が訪れるスナックは、壁の電飾やカウンターに並ぶ小物など、ノスタルジックで非現実的な甘い雰囲気の漂うセットが組まれた。
そのセットには「荻野の状況をロマンチックに映像として表現したいと思い、『消滅する星』をモチーフに、寒色で統一した色味、星をイメージしたイルミネーション、星が消滅したガス化を表したフォグでイメージを構築しました」と、スナックで人生最大の決意を固める荻野の心情に寄り添ったセット作りだったと説明。
また、第3話で登場する、小説家志望で本がたくさん並ぶ片桐(藤原季節)の部屋については「彼女・あやのイメージカラーを黄色にして、彼女が来てからの部屋といなくなった後の部屋で、片桐の喪失感を表現しました」と、思わず本編を見返したくなるポイントも。なお、片桐の机に並ぶ書籍の著者・並木翔平(ジャルジャル・後藤淳平)は第5話に登場する。
さらに、天井まで壁一面、ポスターの張り巡らされた島田まさみ(前田敦子)の部屋は、一瞬見ただけで目に焼き付くほどのインパクトを放つが、「まさみの部屋は、彼女がモノマネ対象である『八木今日子』に依存した人生を過ごしているように見せるために、『八木今日子』のポスターで壁と天井を埋め尽くしました」と萩原監督。「本物に囲まれた空間にポツリと存在している偽物のまさみが、作中のある出来事を通して、本物へと生まれ変わる。そうした彼女の成長を見せられる空間になったと思います」と語るその部屋の、隅々まで張り巡らされたポスターの中の「八木今日子」も、島田まさみ演じる前田敦子が登場している。
そして、街や空の描写については「映画やドラマでよく実景を挟むのですが、今回意識したことは、普段の生活動線であまり目にいかないような場所を、普通ではない視点から切り取りました。そしてそれが美しく見えることが重要だと考えました。つまり、登場人物たちの状況と重ねたかったんです。どんな物でも視点を変えれば良い側面が見える。生き方まで見えない空気に支配される現代の日本で、少しでも呼吸が楽になることを映像として表現したいと思いました」と新しい視点での楽しみ方もできるポイントを語っている。
そして最後に、萩原監督は視聴者に向け「今作はオムニバスでありますが、共通したモチーフとして『星』が出てきます。星の見えない東京で、星になれなかった人たちの話として観ていただくと別の楽しみ方が出来るかもしれません。映像だけでなく、歌詞にも出てくるのでぜひ注目して観てください」とメッセージを送った。
(C)HJ ホールディングス