既存の抗生物質にアルツハイマー病などの認知症予防効果 - 大阪市大が確認
同成果は、同大 医学研究科 脳神経科学の富山貴美 准教授らのグループと、金沢大学、富山大学、米国ノースウェスタン大学らの共同研究によるもの。詳細は英国の神経学雑誌「Brain」にオンライン掲載された。
これまでの研究から、アルツハイマー病はAβとタウというたんぱく質が脳に蓄積することで、脳内で数分子~数十分子からなる会合体「オリゴマー」を形成し、神経細胞の機能を阻害することで発症すると考えられている。また、前頭側頭型認知症は、タウやTDP-43というたんぱく質が、レビー小体型認知症はパーキンソン病と同じαシヌクレインというたんぱく質がそれぞれ蓄積することで、同様にオリゴマーを形成し、発症につながると考えられている。
もっとも研究が進んでいるアルツハイマー病では、治療薬としてAβを標的とする薬(Aβ産生酵素阻害薬、Aβワクチン、Aβ抗体など)が数多く開発されてきたが、臨床試験ではいずれも有効性が確認されないため、その多くが開発中止になっている。この原因として、発症後にAβを除去しても、多くの神経細胞が死んでしまっており、手遅れであることが考えられ、近年では治療よりも予防に向けた研究が進められつつある。ただし、認知症予防のためには、長期にわたって薬を服用し続ける必要があるため、副作用が少なく、かつ安価で内服可能な予防薬の開発が求められている状況にある。
今回、研究グループでは、リファンピシンを含む5つの経口摂取可能な低分子化合物のAβオリゴマーの細胞内蓄積の抑制度合いを調査し、リファンピシンがもっとも効果があることを発見した。また、タウやαシヌクレインのオリゴマー形成も抑制できることも確認したことから、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、いずれにも効く可能性があることが示されたとする。
実際にマウスを用いた経口投与実験では、1カ月間の投与により、Aβオリゴマーが細胞内に蓄積するタイプのアルツハイマー病モデルマウスではAβオリゴマーが減少し、シナプスの回復とともに記憶障害も改善されたほか、老人斑を形成するタイプのアルツハイマー病モデルマウスでもシナプスが回復したが、老人班が逆にやや増加傾向を示したとする。これは、Aβオリゴマーを解離させて生じたモノマーが老人班に取り込まれて成長を促したためと考えられるが、近年の研究では、老人班は有毒なオリゴマーを封じ込めるために形成されるものと考えられており、わずかな増加であればそれほど問題にならないと思われるとしている。
また、タウが過剰にリン酸化され、タウオリゴマーが細胞内に蓄積する前頭側頭型認知症モデルマウスでは、タウオリゴマー、リン酸化タウがともに減少し、シナプスが回復し、記憶障害も改善されたことが確認されたとする。
さらに、若いマウスでは、経口投与量を少なくしても同様の効果が得られることも確認したとのことで、投与期間を長くすることで、投与量の削減などにつながることも期待されるという。
これらの結果を受けて研究グループは、リファンピシンは1960年代から用いられているため、副作用に関する情報も蓄積されており、ジェネリック薬品として安価に供給される点も含め、一部の患者で問題となる肝障害や薬物相互作用といった副作用をクリアできれば、認知症の予防薬として活用が期待できるようになるとしており、副作用の抑制に向けた投与方法の工夫などを進め、めどが立てば、臨床試験で実際の予防効果をヒトで確認していきたいとしている。なお、すでに発症してしまった患者に対しては効果がないとのことで、あくまで発症リスクの高い未発症者への発症阻止薬としての利用法になるとし、こうした研究が進むことで、新たな予防薬の開発につながることを期待したいとしている。
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