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大学デビューの落とし穴 (24) 3月:大学の包容力をナメるな!

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大学デビューの落とし穴 (24) 3月:大学の包容力をナメるな!
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大学1年生のみなさん! 「大学デビューのホントのところ」、知りたくないですか? 本連載は、かつて大学デビューに半分成功・半分失敗したトミヤマユキコ(ライター・大学講師)と清田隆之(恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)が、過去の失敗を踏まえ、時に己の黒歴史を披露しながら、辛く苦しい学生生活を送らないためのちょっとした知恵をお授けする。そんな連載です。
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○最終回を前に、すでに泣きそうになってます

さて、早いもので3月……というかもう4月目前です。コラムというのは書き出しが最も難しいところなのですが、私はこの連載を「もう○月だよ! 早いよ!」というパターン一辺倒で乗り切ってきました。そんな『大学デビューの落とし穴』もこれが最終回。もう1年経ったのかよ! マジで早すぎて怖えよ……。

私は今、連載のラストをどんな原稿にするか模索するため、過去の全23回をすべて読み返してきました。そしてちょっと泣きそうになっているところです。


大学とは基本的に放任主義の場所であり、誰も何も言ってくれない。そういう環境では、閉じた人間関係の中に引きこもったり、マニュアルを提供してくれる何かに飛びつきたくなったりするのも致し方ない。しかし、「自分と向き合う時間がたっぷりある」というのが大学生の特権であり、恐れずトライアンドエラーを繰り返してみよう(もちろん上手なリスクヘッジも忘れずに)!

……というようなメッセージを、我々はここで大学生たちに送ってきたつもりです。手前味噌で恐縮ですが、地味ながらもなかなか素敵なアドバイスではないかと思います。

○本当に散々だった私の大学デビュー

そしてトミヤマさんは前回、「学生の心をケアすることも大学教員の大事な仕事になっている」という近年の傾向を紹介しながら、「失敗しない方法を考えているヒマがあったら、失敗をリカバーする技術を磨いた方がよっぽどいい」と述べました。

こんな先輩、俺も大学時代にマジで欲しかったよ……と、ここでちょっぴり涙腺が崩壊しかけたわけです。

思えば、私の大学デビューは本当に散々なものでした。中高一貫の男子校に通い、大学受験に失敗。
そして浪人時代は毎日朝6時から夜12時まで必死に勉強し、念願の大学にめでたく入学。ここから華やかなキャンパスライフが始まるかと思いきや……待っていたのは敗北感と焦燥感に充ち満ちた日々でした。

授業にマジでついて行けない、クラスは女子ばかりで何をしゃべっていいかわからない、知らない人が怖くて新歓コンパに参加できない、だからどのサークルにも入れない、友達が全然できない、金がない、やることがない、コネもセンスも才能もない、ないないない、何にもない……。そして5月の誕生日に、高校時代から2年間つき合ってきた彼女にフラれました。

○大学は"いること"をただただ許してくれる

しかし、大学というのはとにかく"包容力"のハンパない場所でした。スタートダッシュにつまずいてふて腐れてる私になぞ一切の関心も示さず、図書館で一日中スヤスヤ寝てても、キャンパスのベンチでずっとマンガを読んでても、中高時代の友達を呼んで食堂でダベっていても、一向にお構いなし。

こんなことが許されるのって、実は人生の中で大学だけなんじゃないかと思います。中学や高校だと先生に叱られるはずだし、実家じゃ親に心配されるし、会社だったら即効クビになるでしょう。
しかし大学だけは、私たちのことを子ども扱いも大人扱いもせず、"いること"をただただ許してくれる。

こんな場所、よく考えたら大学以外になかなか見当たりません。私は現在フリーランスの文筆業者ですが、近所の公園で日中ぼけーっと座ってるだけで子連れのママさんたちにビンビン警戒されてしまいます。ああ、何も問わず存在を許容してくれた大学の包容力が恋しい……。

○社会は結構"穴だらけ"なところだ!

ともあれ、あのころ大学が懐深く放置してくれたことは、その後の人生で決定的に役立っているような気がしています。

なぜなら、「素材と環境だけ与えてやるからあとはお前の好きなようにやれ」「困ったら言え。少しは手を貸してやるから」という大学の態度は、実は「社会」そのものだからです。

これは大人になって実感していることですが、社会というのはさほど精密にできていません。
むしろ結構"穴だらけ"です。学校みたいに厳しい規則があるわけじゃないし、受験勉強のように努力と結果が直結するわけでもない。そもそも何をすれば幸せに生きられるのか、誰も教えてはくれません。社会が提供してくれるインフラやシステムを適当に活用しながら、自分なりに生きていくしかない。ルールは「税金を納める」「罪を犯さない」くらいのもんです。もしかしたら、社会というのは大学以上に放任主義な場所かもしれない。

そんな社会を生きる上で役に立っているのが、大学時代のトライアンドエラーです。

○人生は何でもあり。
だから焦るべからず!

はっきり言って、大人になったってトライアンドエラーの連続です。会社に入ったって結婚したってTOEICで高得点取ったって「人生これで安泰!」となるわけではありません。

トミヤマさんも「大学が就職予備校化している」と書いていましたが、「社会人に求められる能力を大学生の内から身につけておき、即戦力な人材になってなるべくいい企業に就職しよう!」という風潮がかつてないくらい強まっていることは確かでしょう。

そんな中で、一回の失敗を"致命傷"と捉え、だらだら過ごすことやくよくよ悩むことを"時間の無駄"と考えてしまう感性が育ってしまうのも、無理はない話だと思います。

でも、社会は案外テキトーだし、人生は思いのほか長い。そんな毎日をたくましく生き抜いていくためにも、大学という懐の深い場所に抱かれながら、ぜひトライアンドエラーする力を磨いていってください。変な自己啓発ブロガーに煽られ、「人脈広げなきゃ!」「コミュ力上げなきゃ!」「英語勉強しなきゃ!」「留学しなきゃ!」「フォロワー増やさなきゃ!」「セルフブランディングしなきゃ!」などと焦る必要はありません。

何を言いたいんだかわからなくなってきましたが、要するに「人生は結構何でもあり」ということを伝えたかったわけです。
それを知り、少しでも肩の力を抜いてもらえたらなと思います。互いにがんばっていきましょう。一年間どうもありがとうございました\(^o^)/

清田隆之/桃山商事
1980年、東京生まれ。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける"恋バナ収集ユニット"「桃山商事」代表。男女のすれ違いを考えるPodcast番
組『二軍ラジオ』を更新中。雑誌『精神看護』やウェブメディア「日経ウーマンオンライン」「messy」などでコラムを連載。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』
(原書房)がある。

Twitter @momoyama_radio
トミヤマユキコ
ライター・大学講師。「週刊朝日」「文學界」でブックレビュー、「ESSE」「タバブックス」でコミックレビューの連載を持つライター。早稲田大学などでサブカルチャー関連講義を担当する研究者としての顔も持っている。「パンケーキは肉だ」を合い言葉に、年間200食を食べ歩き『パンケーキ・ノート』(リトルモア)にまとめた。
Twitter @tomicatomica

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