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目指すは“必要悪”に代わる新たな広告観 - LINEが示した広告メディア戦略

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目指すは“必要悪”に代わる新たな広告観 - LINEが示した広告メディア戦略
●大手企業が顧客の中心だった広告メディアからの脱却
LINEは、同社の事業戦略を発表するイベント「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」を3月24日に開催した。イベントでは、決済サービスであるLINE Payが大手クレジットカード会社のJCBと提携して発行する電子マネーカード「LINE Pay Card」や、LINE、Facebook、Twitterのデータ通信料が無料となるMVNOサービス「LINE Mobile」など注目の新発表が目白押しとなったが、広告メディアとしてのLINEについては、今後どのような展開を予定しているのだろうか。同社の上級執行役員 法人ビジネス担当である田端信太郎氏のプレゼンテーションを基にレポートする。

このイベントでは、冒頭に同社代表取締役社長である出澤剛氏が、サービスインから5周年を迎えるLINEが今後目指すものとして、“世界中の人と人との関係性だけでなく、ユーザーと様々な情報やサービス、モノとの距離を縮め、心地よい関係性を創出する”という意味の「Closing the distance」というコーポレーションミッションを掲げている。広告メディア戦略においてもこのミッションを実現すべく、オープン化へと戦略を転換するという。

田端氏は、これまでの広告メディアとしてのLINEについて、「これまで十分に開かれていると言えるものではなかった。LINEは数千万人のユーザーにマスメディアのように広告メッセージを届けながら、広告は一方通行であり、そのコストも安価とは言えないもの。結果的に、LINEを広告メディアとして活用できるのは、大手企業の一部に留まっていた」と語る。


同社ではこうした課題を踏まえて、広告メディア戦略をシフトしていくという。田端氏が広告リーチに加える価値として掲げたのは、「Relevance(関連性)」「Personal」そして「Everyone」という3つのキーワードだ。

○広告を“自分に関係のあるもの”にするために

ユーザーが接触する広告がユーザーの興味関心、サービスを利用する意図や文脈に適合し、どれだけ高い関連性を担保できるかどうかという意味の「Relevance」の強化について、田端氏は「広告主にとっては無駄な広告配信が減ることで広告効果が高まり、ユーザーにとっては自分にとって全く無関係な広告を見せられることが減り、サービスを利用する上での利便性が高まる」とメリットを説明。同社では、LINEの中に存在するインタレストグラフとソーシャルグラフを組み合わせて、例えば利用しているスタンプや企業アカウントとの繋がり、LINE Liveの視聴動向といったユーザーの利用状況を広告のレリバンシー評価に活かすという。

田端氏は、「例えば、LINEにはファッションブランドの公式アカウントが多数存在するが、こうしたアカウントと積極的に友達になっているユーザーがいれば、そのユーザーはファッションへの感度が高くおしゃれで、都会に住む20代女性だと推定することもできる。そのようなユーザー属性のモデルができれば、ファッション業界だけでなくコスメなどの業界もこうしたプロフィールのユーザーに特別なオファーをしたいと考えるだろう。また、このようなファッション感度の高いユーザーと繋がっている友達もまた、ファッションへの関心が高いとも推定することが可能だ」とLINEにおける広告レリバンシーを説明。ユーザーが繋がっている公式アカウントや利用しているスタンプなどからわかるインタレストグラフを基に広告のターゲットをより具体化させ、また更にそのユーザーのソーシャルグラフから広告のターゲットに準じるユーザーを推定するという構造のようだ。


●広告システムは「PROGRAMATIC」へと転換
また田端氏は、このレリバンシーに加えて、システムがユーザーの興味関心に応じて広告配信を自動的に最適化し、必要な期間に必要な量の広告を配信できるダイナミックな広告取引を実現するという概念である「PROGRAMATIC」という方向にシフトしていくと説明。2月にはアドテクノロジー企業であるM.T. Burnに出資と業務提携を行い、6月には新たな広告システムによる広告配信を開始するという。

なお、こうした説明の最後に田端氏はユーザーのプライバシー保護についても言及。

「我々はLINEが個人間のダイレクトなコミュニケーションの基盤であることを強く肝に銘じている。LINEが広告配信のためにユーザー間のコミュニケーションを参照するということはあり得ない。ユーザーの電話番号、電子メール、コンタクト情報をビジネスパートナーに引き渡すといったことも決してやってはいけない。今や社会の通信インフラの一部となっているという立場を自覚しながら、広告ビジネスを推進していきたい」と田端氏は語り、本人特定性を担保するような情報や高い機密性が求められるコミュニケーション履歴などについては保護するという同社の基本方針を強調した。○スタンプクリエイターと広告主企業との間にエコシステムを生み出す

最後に田端氏は、LINEにおける広告タッチポイントの今後について説明した。
田端氏の説明によると、既にLINEアプリの月間ユーザー数は、TwitterやFacebookを大きく上回っており十分な広告リーチを確保しているが、このタッチポイントを今後はさらに増やしていくという。具体的には月間2200万人が利用しているLINEニュースや、LINEアプリの中で利用する頻度が多いアカウント情報のページ、そして人気タイトルを多数展開しているLINEゲームなどにおいても、PROGRAMATICを採用した新しい広告システムの広告掲載面として展開していくという。

加えて田端氏は、これまで価格が2000万円から4000万円と高価だったスポンサードスタンプについて、中小企業やローカルビジネスでも展開できるようにするという。具体的には、「LINE Creators Market」に登録している54万人以上のスタンプクリエイターを活用。ここで一般発売されているスタンプの配信権利を企業がクリエイターから買い上げ、自社のLINE公式アカウントなどで特典スタンプとして配信できるようにする。これによって企業は安価でスタンプをマーケティングに活用することができ、一方クリエイターにとってはスタンプの新たな収入機会が生まれるのだという。

○次はBtoCのコミュニケーションが変わる番だ

こうした説明の締めくくりとして、田端氏は「LINE AD Platform for everyone」というメッセージを掲げ、「これまで主に大企業(による利用)が中心だった広告メディアとしてのLINEを、リーチの拡大、広告をユーザーにとって意味のあるものにするためのレリバンシー評価、柔軟な広告システムによって、中小企業を含むあらゆる企業・ブランドと消費者とのコミュニケーションをよりスムーズにする基盤として進化していきたい」と語った。

LINEはこの5年でCtoC(個人間)のコミュニケーションを大きく変えてきた。
田端氏は、「次はBtoCのコミュニケーションが変わる番だ」と意気込みを語る。

「これまで、広告は無料メディアを支えるための“必要悪”だと思われてきたが、LINEはそうは考えていない。ユーザーと広告のレリバンシー=見たいもの、興味がありそうなもの、アクションを起こしたいもの、役に立ちそうなもの、楽しめそうなもの、そうしたものを広告に盛り込むことを追求する。そして、“必要悪”だと思われてきた古い広告へのイメージをぶち壊し、新しい広告観を生み出していきたい」(田端氏)

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