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帝国劇場出演が「オリンピック出場」になる - 100年以上の歴史を支えるプライド・冒険・先人の教え

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帝国劇場出演が「オリンピック出場」になる - 100年以上の歴史を支えるプライド・冒険・先人の教え

●ライブエンタメを行う、劇場の存在意義
『アナと雪の女王』『レ・ミゼラブル』などのミュージカル映画がヒットし、井上芳雄、山崎育三郎、浦井健治などのミュージカル俳優がTVドラマに出演。更に「2.5次元ミュージカル」の隆盛など、日本のミュージカル界は新たな動きを見せている。

移り変わる時代の中で、100年以上の歴史を持ち、今なお第一線で多くの作品を上演する「帝国劇場」を支えるのは一体どのような考え方なのだろうか? 副支配人・竹本一輔氏と、東宝演劇部宣伝室長・洗秀樹氏に取材を行った。

○『テニミュ』は大きなファクター

――有楽町・日比谷エリアは、日生劇場、東京宝塚劇場などの大劇場が多いですが、良い効果はありますか?

竹本規模が全然違うのですが、ニューヨークのブロードウェイ、ロンドンのウェスト・エンドのように、劇場が密集している方が、賑わいがでますよね。創業者の小林一三が、界隈の映画館をつくったのですが、この規模の大劇場が集積しているエリアは他にありません。

競合している劇場と比べられることはありますが、意識はしないです。私たちは大衆娯楽を提供する場所でありつづけるべきだと思っています。

――現在2.5次元ミュージカルなどの上演が盛んですが、ミュージカルシーンが活性化しているように感じますか?

竹本ミュージカル『テニスの王子様』は大きなファクターだと思います。
『テニミュ』出身の若い方が今、うちの舞台にも出ています。若いタレントを志す方が、TV・映画のほかに「舞台に出たい」「舞台で役者になりたい」と思えるようになっていけばいいなと思いますね。

洗現在、帝劇に出ることについて、ある種「オリンピック出場」と近いイメージを持っていただけていると思います。我々は日本一の劇場で日本一の公演をお届けしているというプライドは常に持ちながらやっています。

○ライブエンタメに関わる人間として

――劇場運営において、観客から意見をすいあげることはありますか?

竹本一人ひとりのお客様にどこまでコミットできるかと考えると、限界は存在します。だから、その瞬間のサービスに最善をつくすしかないんですよね。役者さんも、調子が悪い時にお客さんに気づかれるのはプロの仕事ではなく、そのときの状態でベストをつくすのがすべてだと思います。表方も裏方も全員、劇場の中に立ってお客様をむかえる者であるという気持ちでないと、簡単にチープになってしまいます。
毎日同じことをやっている中で、漫然とルーティン・ワークにしないのは、一期一会と考えているからです。

――劇場に関わる方全員がライブという意識を持っていると。

竹本そうしないと、劇場の存在理由がありません。お客様は劇場にライブを求めてくる。そこにどこまで真剣に取り組むかがすべてだと思っています。今の時代だから、評判は瞬時に伝わります。ライブエンタメに関わる人間にとって、その時々の瞬間のお客様の感想を、聞かないふり・見ないふりで済ますという選択肢は、ないと思います。

●何かを生み出す場としての劇場
○ただ芝居を流す小屋ではない

――観客も含めて、劇場から発信されるものがとても重要になってくるんですね。


竹本劇場から発せられる情報が、色々なものへ影響を及ぼすような場でなければいけないなと思います。ここでほかのアイディアや、次に観たい何かが生まれる。そういったライブエンタメの場が、これからはもっと大事になってくるのではないでしょうか。ただ芝居を流す小屋ではなく、何かを生み出す場でないと。私達のように川上から川下まで全部やっていくことで、すべてのセクションが情報を共有できるのは良いことだと思います。

洗それは思いますね。「違う業界でこんなことやっていたよ」「こんなことできないかな」と、突拍子もない意見が出てきて、その場では実現しなくても、あとから「この前言っていたこと、今できるんじゃない?」などと、ポロッとうまくいくこともあります。

――おふたりも仲良さそうな雰囲気が伝わってきます。


竹本そういうのは超えていますね(笑)。

洗「みんなで成功させよう」という空気は強いです。それは、成功しなかったときの悔しさを知っているから。「けっこう空席あるな」「評判があんまり良くない」と聞くと、宣伝の打ち出し方が悪かったのだと落ち込んでしまいます。新しいチャレンジをしていれば、成功しない時も当然あります。そういったときに、「次はこうしよう」という意見を交わしやすいですね。

そして、成功体験も自分で振り出しに戻していかないといけません。成功体験をリセットして、お客様のご期待を上回るものを提供し続けないと。


――時代の空気もつかまないと……。洗大事ですね。同じ演目を宣伝する場合も、20年前と今だと全然違います。TVと新聞がメディアとして大きな力を持っていた時代と、今のSNSの時代とでは手法も違いますし、人の感覚も違ってきていると思います。

――『レ・ミゼラブル』のフラッシュモブ映像も面白い宣伝でした。

洗それも「役者を集めるのが困難だ」とか「時間がない」とか議論にはなったのですが、結果的にはお客様に面白がっていただけたのかなと。あの時に『レ・ミゼラブル』で行ったのが良かったのだと思います。一度ウケたからと別の作品で行っても、二番煎じではサプライズをお届けすることは出来ません。


○成功と失敗の繰り返し

――そういった試みを続けてきたからこそ、100年の歴史があるのでしょうか。

竹本同じように、のたうち回っていたと思うんですよ。失敗と成功の繰り返しです。けっこう狭い所帯なので、いがみあっていてもしょうがないし、目の前にあることを考えないと、先も何もなくなってしまいます。

――そういった歴史は共有されているんですか?

竹本40年前を知っているプロデューサーたちがまだいて、私たちに情報を残してくれているのはありがたいですね。私たちは会社員なので定年がありますが、「死ぬまでやる」と考えているクリエイティブの方たちの思考や取り組み方は、普通では学べません。

――どういった思考なのでしょうか。

竹本「できないと思っていることをやる」ということだと思うんです。
往々にして、「そんなことはできない」と言ってしまうのですが「できないというな、まずやってみろ」と返されます(笑)。失敗を咎める社風ではないのもありがたいですね。あとはもう、各々が他人事にしない。すべて自分ごとにして、各自徹底的にプロ意識を持つことが、劇場を支えているのだと思います。

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