4年の歳月をかけてリファインされた怪物DAW、アップル「Logic Pro X」の魅力に迫る! - 後編
前回、前々回と、4年ぶりにアップデートされたアップルのDAW「Logic Pro X」の目玉機能をチェックしてきたが、今回は作品のアウトプットの部分について紹介していこう。
新バージョンで追加された目玉機能をまとめておくと、以下の通り。
仮想セッションプレイヤー …… "Drummer"
ボーカルのピッチ修正からタイミングの微調整まで、意のままに …… "Flex Pitch"
複数のトラックを統合してコントロール …… "Track Stack"
さらなる進化を遂げたMIDIエフェクト …… "Arpeggiator"
複数のプラグインパラメータを一度にコントロール …… "Smart Control"
新設計のビンテージキーボード・シンセサイザー群 …… "Retro Synth"
新登場の"Bass Amp Designer"と新しい"Pedalboard ストンプボックス"
さらにパワフルになった"ミキサーセクション"
機能強化された"スコアエディタ"
生まれたての作品を世界へ …… "SoundCloud"や"Final Cut Pro X"との連携
新しい"サウンドライブラリ"&"ループ"
"Logic Remote" (無料・要iPad互換 iOS 6.0以降)
スタジオのクオリティをステージで再現 …… "Main Stage 3"
最終回となる今回は、SoundCloudやFinal Cut Pro Xとの連携、iPadからワイヤレスで操作が可能な"Logic Remote"、ライブパフォーマンスで活躍する"MainStage 3"の機能をチェックしていこう。
○生まれたての作品を世界へ …… "SoundCloud"や"Final Cut Pro X"との連携
一昔前では考えられなかった、楽曲の共有。それがLogicから直接、Sound Cloudにアクセスし、生まれたばかりの作品を分かち合う。そんな事もLogicなら手軽に可能。
また、メディアブラウザを使ってLogic Pro Xの内容をFinal Cut Pro Xにシームレスに移動、ここで味わえる快適さは、Macを知り尽くしたAppleだからこその強みだろう。○新しい"サウンドライブラリ"&"ループ"
Logicが持つ特徴の一つでもある、ループ&サウンドライブラリセクション。
今回のバージョンアップに併せ、世界のサウンドクリエータたちの手によって再構築されているのも見逃せない。今までのバージョンのループも保持しながら、Logic Pro Xの新機能を最大限に生かすパッチまで、さらにその領域を拡張。ライブラリパッチは、前述のアルペジエータ、MIDIプラグイン、"TrackStack"の機能に最適化され、"SmartControl"のカスタムセットまで読み込むほどの充実ぶりだ。また、自分のオリジナルサウンドができたら、パッチとして保存でき、"TrackStack"を含む全ての処理、ミキサーのルーティングや、"SmartControl"までが保存されるのだ。
●iPadからの操作を可能とする"Logic Remote"と、進化した"Main Stage 3"
○iPadからワイヤレスでの操作を可能とする"Logic Remote"
また、今回の"Logic Pro X"の登場に併せて用意された"Logic Remote"アプリケーションも見逃せない。このアプリケーションはMacとiPadをワイヤレスで組み合わせ、"Logic Pro X"を部屋中の好きなところから自由に操作できるというモノ。「ただのトランスポート?」そう早合点した人はちょっと待って欲しい。このiPadを利用した"Logic Remote"は、"Logic Pro X" の魅力を倍加して止まない"魔法のアプリケーション"と呼べるモノなのだ。
トランスポート、ミキサーの操作は勿論(マルチタッチ対応で複数のフェーダー&ソロ。ミュートボタンを同時に操作。これはもうまさにアナログミキサー感覚!)、時には、鍵盤や、ギターを模したインターフェースに早変わりし、非常に使い勝手のよいデータ入力も行えるのだ。また、前述のアルペジエータとも非常に相性が良く、ラッチ可能な操作子で、リアルタイムにアルペジオを生成することができるのだ。ワイヤレスの利を生かして、ブースからのコントロールが自在な点も見逃せない。ロケートは勿論、ループ再生や、マーカーの設定など、主要なコントロールは全てiPad上で行えるのだ。そう、従来不便だったこんなシーン……例えば、一人で歌録りをする状況などでは、机上のRecボタンを押し→ヴォーカルブースに駆け込み歌う→ブースを出てロケートを停止→またRecボタンを押し……というあの無間地獄から解放されるのだ。また、ミックス確認においても、iPadを手にソファーに腰掛け、客観的に聴きながらミックス確認&修正作業、などという離れ業までこなしてしまう。
それがこの"Logic Remote"なのだ。アプリはApp Storeから無料でダウンロードできる。システム条件は、iOS 6以降をインストールした第2世代以降のiPadまたはiPad miniとなっている。
○スタジオのクオリティをステージで再現 …… "Main Stage 3"
"Logic Remote"に言及したからには、この"MainStage 3"にも是非触れておきたい。あのナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーも、実際にステージで使用しているこのアプリケーションは、前述のソフトウェア音源を含む80を超える音源(パッチ数は1500以上)、そして多数のMIDIプラグインやAudio Unitsプラグインを内包、スタジオで吟味されたオリジナルパッチを"Logic Pro X"から読み込める、完全互換保証の優れモノだ。外部キーボード、フットペダル、そしてドラムパッドに至るまで、自分好みのデバイスを接続、あらゆる場所でスタジオクオリティ・サウンドを再現できるのだ。部屋の中と外までシームレスにしてしまう"MainStage 3"。さあ、書を捨てよ、町へ出よう。
以上、3回にわたって触れてきた"Logic Pro X"の魅力だが、その凄さは皆さんに伝わっただろうか。
しかし……最後の最後に、まだ驚くべき事実は残っていた。それはこれ以上ない、コストパフォーマンスの高さだ。AppStoreのダウンロード販売で、なんと17,000円! くれぐれも念を押しておくが、この価格はアップグレード価格などではなく、フルバージョン価格なのだ。筆者がその昔購入した、Appleが取り扱う前のLogic Ver.3などは、13万円もしたのに……。 しかも、欲しい時にダウンロード。入手後、即・音楽制作へ突入できるとは、何と素晴らしい時代になったのだろうか。
「広く・そして深く」……初心者から、熟練の上級者まで、実に懐の広い"Logic Pro X"。
初めて手に取るユーザーには、何より「触れて・見て・聴いて」これに尽きるだろう。そして以前からのユーザーには、細かい部分での気配りが何より嬉しく、音楽制作の後押しをしてくれる頼もしい相棒に、今まで以上に「触れて・見て・聴いて」欲しいと願うばかりである。※本稿執筆中に、Logic Pro Xについては、アップデート版となるバージョン10.0.2の提供が開始されている。このアップデートでは以下の点が改善され、全般的な安定性とパフォーマンスが向上している。
Flex Pitch編集で「取り消し」コマンドが正しく動作するようになった
Vintage Electric Pianoプラグインがすべてのサンプルレートで正しく動作するようになった
「録音して取り込む」キーコマンドで、MIDI音源が削除されなくなった
Drummerリージョンをダブルクリックしてエディタを開閉できるようになった
ピアノロールエディタに空のウインドウが表示される問題の改善