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プラスチックス40周年! 中西俊夫・立花ハジメ・島武実語るバンドの歩みと現在

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プラスチックス40周年! 中西俊夫・立花ハジメ・島武実語るバンドの歩みと現在

●プラスチックスの40年間
1970年代末から80年代初頭にかけて精力的に活動したテクノポップバンド・プラスチックスが2016年、結成40周年を迎え再結成し、初の公式アーカイブ本『PLASTICS 情報過多 -TOO MUCH INFO-』(発売中 3,800円税別 徳間書店)を刊行。それを記念したトークイベントが5日、都内で行われ、中西俊夫らメンバー3人が登壇した。

「Too Much Information」。これは、バンドの1stアルバム『WELCOME PLASTICS』(80年)に収録されている楽曲のタイトルで、その中では、情報に埋め尽くされ記号化していく世界都市・東京の様子がシニカルに歌われていた。それとよく似た副題が冠されたアーカイブ本は、当時の雑誌記事のスクラップなどで、彼らが"どう語られてきたか"、そして現在のメンバーのインタビューや著名人のコメントなどで"今、どう語るか"といった主に2つの視点で構成されている。

しかしトークで中西自身も語っているように、バンドはこれまで数度、散発的に再結成公演を行ってきてはいるものの今年に至るまで、活動の空白期間は短くない。そのため、ここであらためて、彼らの活動歴を振り返りたい。

○バンドのこれまでと現在

プラスチックスは1976年、イラストレーター・中西、スタイリスト・佐藤チカ、グラフィックデザイナー・立花ハジメを中心として結成。
幾度かのメンバー交代を経て、1979年のデビュー時には3人に加え、後にプロデューサーとして名をはせた故・佐久間正英さんと作詞家・島武実が集まった。

もともとプロのミュージシャンだったのは佐久間さん1人というアマチュア精神を押し出したバンドは、リズムマシン・CR-78による軽快なドラムやシンセサイザーなどのチープな電子音を基調としたテクノポップサウンドを構築する。"ヘタウマ"な演奏と皮肉っぽくも軽く見せた姿勢で評価を獲得し、ザ・スミスやアズテック・カメラといったバンドが在籍した英国の名インディーレーベル、ラフ・トレードからデビュー。逆輸入的に日本でも話題となるとP-MODELやヒカシューと共に"テクノポップ御三家"として、並び評された。

以降も、海外ではB-52’sやラモーンズなど名だたるアーティストと共演。国内でも音楽番組など多数のメディアに登場した。1981年、デビューからわずか2年で解散してしまったが、その都市的でシニカルな"キッチュ"に満ちた感覚は、その後もピチカート・ファイヴや、現在ではポリシックス、きゃりーぱみゅぱみゅなどにも受け継がれていると言えよう。

そんなプラスチックスの40周年となる今春は、アーカイブ本のほか、さまざまな企画が進行している。
4月には、3枚のオリジナルアルバムのリマスター盤をデラックス・エディションとして再発。トーキング・ヘッズの前座を務めた米国・ニューヨークでのパフォーマンスを収めたライブ盤『We Love You Oh No! PLASTICS Live in Central Park NYC 1981』もリリースされた。5月10日には、ブルーノート東京で2部公演を開催する。

●トークイベントで明かされたメンバーの思い
トークイベントに登場したのは、中西、立花、島の3人。セックス・ピストルズのシャツを着込んだ中西をはじめ、ラフな装いでひょうひょうとした雰囲気を醸し出しているが、全員還暦を迎えていることもあり、テクノポップの立役者であったバンドの一員たる貫禄を見せた。

○「あっと言う間」の40年と再発されたオリジナルアルバム3枚

「40周年って言っても、実質上(活動していたのは)4年くらいで、後の35、6年はほとんど何もやってないからね」と笑う中西。「あっと言う間に時間がたってしまって、いっぱい人も死んでね…」と、始まりから佐久間さん(2014年に逝去)を思わせる発言を繰り出すと、島も「再結成も2、3回しかないから、4年と2日って感じだよね」と口をそろえる。

初となるリマスター盤の発売は昨年、捨てようとしていたカセットテープを聴き返したところ、「再発したい」という思いが強くなったことで、実現に至った。
おのおのが特に気に入っているアルバムは、立花は悩みながらも決められず「全部」、中西も「全部だよね」としつつ「強いて言うと『WELCOME PLASTICS』かな」と回答。島が「僕も同じだけど、2枚目(『ORIGATO PLASTICO』)をこないだ聴いてビックリした」と話すと、中西が当時を振り返り「いきなりホワイトアルバム(ザ・ビートルズの10枚目となったアルバムの通称)になっちゃったからね。皆けんかしてるし」と苦笑した。○タイトルミスのライブ盤と島の"几帳面さ"でできたアーカイブ本

一連のアニバーサリー企画は、中西によると「島ちゃんがセントラルパークのテープを発見してからの話」。しかし、そのパフォーマンスを収めたライブ盤にミスが発覚した。これに中西は「誰も気がついてないんだけど」と前置きしながら、「(タイトルに)"81"ってあるじゃん。ライブは80年だった」と明かす。

テープを掘り出した島も「それが分かった時はすごい焦って」と打ち明け、中西が「Facebookで(告知した時)も誰か気付くかと思ったんだけど、そうでもなくて。
すいませんでした」と謝罪。司会から「拡散しちゃって良いんですか?」と問われると、「公表しちゃったんで良いですよ」といたずらに笑ってみせた。

一方、初のオフィシャル書籍となったアーカイブ本について、中西は「もっと早く出したかった。何でこんな時間がかかったんだろう…」とコメント。そこで思い出したように「島ちゃんが(資料を)ためこんでたからだ。それを一気に放出したからこんなことに」と話題を振ると、島は「一度も捨てることができなくて…ずっと持ち歩いてた」と告白。舞台上で初めて同誌を読み始めた立花に「しゃべれよ」とツッコミを入れつつ、中西は「うれしいね。当時からインタビューで『写真集出したい』とも言ってたから」と補足した。


当時の雑誌記事も掲載されていることには、中西も「チカさんの(出身の)長野の新聞とかね(笑)。よく持ってたね」と感心。それを受けて島は「小さい記事まで全部ファイルに詰めてた。まだまだあるんですけど、出そうと思えば2冊目も」と発言し、観客だけでなくメンバー2人をも驚かせた。そんな島の几帳面さはリマスター盤の特典であるDVDの映像も、VHSに収めていたほどだ。

○それぞれのメンバーへの思い

その場で一通り読み終えた立花は、同誌内のインタビューで「島ちゃんがすごい僕のこと褒めてくれててうれしかった」と喜びを口にする。島は、「バンドからソロまで(各メンバーの印象は)変わらない」としながら、通読してみると佐藤の語り口が「面白い」など新たな発見もあったようで、「こうして今があるんだなってね」としみじみ。「佐久間くんのインタビューがあれば良かったんだけど、まあ彼はいろんなとこでしゃべってたので」とその不在を惜しみながら、立花には「すごいマジメ…真面目ですね」と称賛を重ねた。
そんな2人をよそに、「僕は全部想定内」と中西。メンバーの発言に驚きはなかったというが、著名人として布袋寅泰から寄せられたコメントの「中西さんの目は笑ってなかった」という一文には「ちょっとウケました。『どんだけ怖がられてたんだ』って」とツッコミを入れた。

○「ちゃんとやんないとこの先、生きていけない」 - 意気込みの再結成ライブ

40年目にして最長の舞台となる再結成ライブについて、中西は「2部のステージなんで(オリジナルの曲を収録しているアルバムは)2枚しかないから1、2回しかやってなかった曲も全部やらないと」と身構えながらも、「集大成的なものにしようかな」と気合十分。立花も「楽しみにしてます。ちゃんとやんないとこの先、生きていけない」と強い意気込みを語った。

そんな3人も最年少だった中西が今年還暦となり、全員が60歳超え。「なってしまった。
意外とくるもんだな」と感慨を語ると、立花は「なった時にはあんまり…その翌々年に誕生日祝いを皆がやってくれて。それはすごいうれしかった」と振り返る。これに、中西はすかさず「この人、イケズで『還暦のパーティーなんかやんない』って言ってたら本当にスルーされたから、2年後にサプライズでだけどね」と裏側をポロリ。続けて、「でも下手に派手にやると早死にしちゃうからね。まーちゃんみたいに」と佐久間さんをしのぶと、島も「そうねぇ…佐久間くんは派手にやったよねえ」と懐かしんだ。

デビュー40周年となったプラスチックス。再結成ライブは10日、ブルーノート東京で2部構成で実施する。なお、それ以降の活動継続も明かしているが、夏フェスなどへの出演については、中西いわく「ちょっと秘密」とのこと。黎明期のテクノポップを支えたそのサウンドに、あらためて耳を傾けたい。

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