広瀬香美、「ロマンスの神様」は“私の人生”「一生大事に歌っていく」
●TikTok上半期トレンド大賞でようやく再ブレイク実感
1990年代に「ロマンスの神様」をはじめ数々のヒット曲を生み出した音楽家の広瀬香美が、令和に再ブレイク。2020年にYouTubeの“歌ってみた”動画が人気を博し、今年はTikTokで「ロマンスの神様」がブームに。今月15日に発表された「TikTok2022上半期トレンド」で同楽曲が大賞に輝いた。SNSで輝きを放つ広瀬にインタビューし、再ブレイクの心境や「ロマンスの神様」への思いを聞いた。
TikTokでは、TikTokクリエイター・タイガの振り付けが今年2月に「ロマンスの神様」の“踊ってみた”動画を投稿したことがきっかけで同楽曲が広まり、広瀬自身も「私も踊ってみた!」とダンス動画を投稿。関連動画の総再生数は16億回を超え、「Billbard JAPAN TikTok Weekly Top 20」で1位にもなった。
SNSでブームを巻き起こしているが、広瀬自身は再ブレイクの実感があまりなかったという。
「『再ブレイクしていますね』ってよく言われるんですけど、あまり実感が湧いていなくて。
ネットの世界のことなので、動画を撮ってYouTubeやTikTokに上げて、そこの反応でしかないので、これを再ブレイクって言うんだって、ちょっとギャップがありました」
だが、「TikTok2022上半期トレンド」で「ロマンスの神様」が大賞に選ばれ、ようやくブレイクを実感。「TikTok自体すごくブレイクしているので、それの大賞ということは! という感じでようやく気持ちがついていきました。トロフィーもいただいて。本当にありがとうございます!」と感謝した。
YouTube、TikTokと、新しいツールで輝きを放つ広瀬だが、2009年にはTwitterでも注目を集め、「Twitterの女王」とも呼ばれていた。
「自分の指針として、5人ぐらいの人から言われたらやってみるという、第一陣ではないんです。早いほうだと思いますが、第二陣の性格をしていて、Twitterのときも何人かに勧められて始めて。YouTubeのときも複数の方から『やったほうがいいよ』と言われ、そのときコロナ禍だったので家にいないといけなくて、コンサートもレコーディングもなくなって何もすることがないからやってみようかって始めました。
そしてTikTokも、『(『ロマンスの神様』が)バズってます!』って3人のスタッフから強く言われて、見てみたら本当にバズっていて、そうしたら体が動いて次の日に自分も踊った動画を上げていました(笑)」
Twitterでの成功体験があったからこそ、YouTubeやTikTokも前向きに挑戦。「楽しいんですよね!」と心からどのツールも楽しんでいる。
ただTikTokに関しては、「ロマンスの神様」がバズる前からアカウントを開設していたものの、コンサートやYouTubeの告知程度からスタート。「層が違うSNSさんだと思っていたので、みんな私のこと知らないと思いますけど、知ってねって感じでお付き合いしていました」と少し遠慮していたという。
そして、「ロマンスの神様」がバズっていることを知り、「動画を見ると小さいお子様も、違う国の方々も踊っていて、すごいなあと。世界規模なのだと知り、私が踊っても違和感ないなと思ったので踊ってみました」と自身もダンスに挑戦。そこからは“違う層のSNSさん”という遠慮はなくなった。
最初に「ロマンスの神様」のダンス動画を投稿した2日後には、「雪山からありがとう~」とスキー場で踊る動画も投稿。
このフットワークの軽さとノリの良さに驚かされる。
今ではTikTokにドハマり。「もう大好きです! よくできていますよね~気づいたら1時間くらいずっと見てしまって。ハマっています(笑)」とのめり込んでいる。
●「ロマンスの神様」を生み出すために生まれてきたと言っても…
「ロマンスの神様」は1993年にリリースされた楽曲で、スキー用品店「アルペン」のCMソングとして起用され、ミリオンセラーを記録した。
広瀬は「まだ無名で、デビューして2年目の頃だったのでよくわからないまま、CMで流れんだというところから作り始めて、CMに乗っかってバーンと!」と当時を振り返る。
そして、「『ロマンスの神様』のメロディー自体は、5歳の頃から作曲家になりたくてずっと曲は作って面白いメロディーをたくさん貯めていて、パーツパーツをつなぎあわせて作りました。歌詞に関しては、CMソングなのでハッピーソングでお願いしますというご依頼もあって。
(CMが)スキーショップやスキー場で恋が芽生えるようなストーリーだと聞き、ぜひたくさんの恋が芽生えるようにと思いながら作ったので、私がロマンスの神様みたいになりました(笑)」と曲に込めた思いを説明した。「ロマンスの神様」はブレイクのきっかけになった曲であり、再ブレイクも呼び込んでくれた曲に。
広瀬にとってどんな曲になっているか尋ねると「もう私の人生ですね」と表現。「こうなってくると、私は『ロマンスの神様』を生み出すために生まれてきて、これを歌い続けるために生きていると言っても過言ではないなと。大切な人生なので、一生大事に歌っていこうと思っています」と愛おしそうに話し、「20年後またヒットして、世界的TikTok大賞みたいな、それを狙っています(笑)」と冗談交じりに野望を口にした。
1992年にデビューしてから30周年という節目に人気が再燃。今年は徹底的に「ロマンスの神様」をフィーチャーしていくつもりだという。
「30周年という節目の年に『ロマンスの神様』がまた皆様に歌っていただけるようになって本当にありがたいなと思っていますので、また冬にコンサートがやってきますが、もう最初と中盤と最後と、3回ぐらい歌ってもいいくらいの年かなと(笑)。
『ロマンスの神様コンサート』というタイトルでいいんじゃないのって言っているくらいフィーチャーしていきたいと思っています」
●今の時代ならではの曲の作り方で新曲を生み出したい
YouTube、TikTokという新たなツールを用いるようになって、音楽に関して新たな気づきもあったという。
「昔のCMソングの作り方とは違うなと。私はアルバムをたくさん聴いていただくという時代にデビューさせていただきましたが、今はサビの部分だけ作って、バズったらその前後を作っていくという、そのような若者の作り方は見習わないといけないし、それを得意になっていかないと生き残っていけないと感じています」
今後は、TikTokで学んだ今の時代ならではの曲の作り方で、新曲制作にチャレンジしていきたいと考えている。
「TikTokさんらしい曲の作り方をしてバズっていく、そこから新曲を生み出していくというのが私の目標です。『ロマンスの神様』をきっかけに私のことを知ってくださった皆さまにも刺さるような楽曲を生み出せたら」と力を籠め、「音楽の先生というか、新人アーティストでもいいかな(笑)。あの人貫禄あるけど新人っていう、そういう音楽家になっていきたいと思います」
柔軟な発想とフットワークの軽さで、若い世代の心もつかんだ広瀬。動画から伝わる明るいキャラクターも人気の秘訣だろう。時代にあわせて進化していく広瀬の今後の挑戦からも目が離せない。
■広瀬香美
福岡県太宰府出身。5歳より音楽の英才教育を受け作曲家を志す。福岡女学院中学校・高等学校(音楽科)、国立音楽大学音楽学部作曲学科卒業後に渡米。LAにて、マイケル・ジャクソンのヴォイス トレーナーであるセス・リッグス氏に師事。 滞在中に制作した自作のデモ音源がレコード会社の耳に留まり、1992年にビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)よりデビュー。「ロマンスの神様」「ゲレンデがとけるほど恋したい」などのヒット曲を生み出し「冬の女王」と呼ばれる。2020年にYouTubeの“歌ってみた”動画が人気となり再ブレイク、2022年にはTikTokクリエイター・タイガの振り付けが「ロマンスの神様」の“踊ってみた”動画を投稿したことをきっかけに同楽曲の人気が再燃。同楽曲が「TikTok2022上半期トレンド」の大賞に輝いた。