芸能人の熱愛報道は、プライバシー権の侵害? 弁護士の見解は
毎日世間を賑わす、週刊誌による熱愛報道や、収賄などの犯罪についての報道だが、たとえば芸能人を張り込んで、恋愛関係をチェックする行為について、違法性はないのだろうか? アディーレ法律事務所所属弁護士の鈴木淳也氏に話を聞いた。
○プライバシー権の侵害になるケースはある
――週刊誌など、芸能人を"張り込み"で待ち伏せしたりするのは罪にはならないのでしょうか?
張り込みは犯罪に直結するわけではありません。敷地に侵入すれば、住居・建造物の侵入となりますが、そうでなければ犯罪に問うのは難しいでしょう。ただ、肖像権・プライバシー権の侵害が成立する可能性は考えられます。
報道される内容が、「私生活上の事実」または、「私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄」であること。そして、一般人の感受性を基準にして、公開してほしくないであろうと認められる事柄であれば、プライバシー権の侵害となりえます。
――熱愛等の場合と、犯罪の場合と、プライバシーの扱いは違うのですか?
熱愛であっても、犯罪であっても、普通の人であれば公開して欲しくないことであり、プライバシー権の侵害となりえます。ただ、すでに公然の事実となっている場合には、侵害とはなりません。
ただ、「社会の正当な関心ごと」に関する事柄について、公益的な価値のある報道については、私生活上の事実に関する内容であっても、「違法性はない」と判断されることが多いです。
熱愛報道は、「社会の正当な関心ごと」とは言いにくいでしょう。一方で、犯罪報道は公益性が高く、「社会の正当な関心ごと」として、違法性はないと判断される可能性が高くなります。
――一般人が張り込みを行って、自分でSNSなどにスクープをアップするのは?
むやみやたらに写真を撮れば肖像権の侵害ですし、状況次第ではプライバシー権の侵害となります。
発信力=権利侵害の程度からすれば、週刊誌などの方が大きいでしょうが、今はSNSの普及により一般人でも大きな発信力を持っている人も多いので、そこの部分での違いは小さいでしょう。ケース次第と言わざるを得ませんが、基本的に扱いの差はないと考えます。個人を特定しなければいけないという点では、週刊誌よりも訴える労力はかかりますが、責任としては異なりません。――しつこい場合、ストーカー扱いなどにならないのですか?
ストーカー規制法は、「特定の者に対する恋愛感情」「その他の好意の感情」または「それが満たされなかったことに対する怨恨の感情」を満たす目的でのつきまとい行為等を処罰の対象としています。
したがって、そういった感情のない場合は、ストーカー扱いとすることはできません。
取材対象者プロフィール:鈴木淳也弁護士
弁護士法人アディーレ法律事務所所属。札幌弁護士会所属。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。また「ハンゲキ!」(フジテレビ)では詐欺師を追い詰めるクールな弁護士として出演。さらに「5時に夢中」(TOKYO MX)にレギュラー出演するなど幅広いメディアで活躍中。