大泉洋、49歳で“焦り”芽生えるも未来に期待感「いい仕事と出会えるイメージしか持っていない」
●カッコよさより面白さ「笑わせたい人なんです」
俳優としてのみならず、バラエティ番組でも抜群のトーク力で活躍している大泉洋。近年は司会業も務め、Amazon Original番組『ザ・マスクド・シンガー』では2年連続MCを担当している。大泉にインタビューし、同番組や司会業への思い、根底にある「笑わせたい」という欲求、そして今後について話を聞いた。
『ザ・マスクド・シンガー』は、マスクで正体を隠した有名人が実力勝負のパフォーマンスに挑み、出演者や視聴者がその正体を推理するエンターテインメント番組。シーズン2は8月4日より毎週木曜20時にPrime Videoで独占配信される。
全米を中心に世界で人気を博した番組の日本版ということで配信開始前から注目を集めていた同番組。大泉はシーズン1で関心の高さを感じたそうで、TEAM NACSのメンバーからも反応があったと明かす。
「地上波のテレビに出ていたのとは違う反応がありました。
注目度が高かったんだなと。仕事をしていて、うちのメンバーから『見た』と言われることはそんなにないんですけど、『ザ・マスクド・シンガー』はメンバーの中にも好きな人がいました」
そして、「シーズン1がとにかく楽しかったので、シーズン2も楽しめたらいいなと思って挑みました」と述べ、「よりスケールアップしています。僕の登場の仕方がもっと派手になっていたり、パフォーマーを当てるヒントの出方が違ったり。出てくる人を当てるという面白さが倍増されていると思います」とシーズン2の魅力をアピールした。
司会をする上で、アメリカ版の司会者の振る舞いを参考にしたという。「僕はどうしても面白くしたいという思いがあるのですが、それプラス、アメリカの司会者のスマートな感じやカッコよさが必要なのかなと」。登場シーンはまさに“カッコいい大泉洋”が見られる。
「シーズン1の最初は、なんで司会者がこんなカッコよく出てこないといけないのだろうという照れがありましたが、シーズン2になったので慣れたというか、ここは割り切ってカッコよく出た方が番組としてはきれいにいくんだろうなと。
シーズン2は、僕の登場はよりグレードアップしています!」
番組に合わせてカッコよさも出しつつ、大泉が何よりも大切にしていることはやはり、「笑わせる」ことだ。「僕は何をしたい人かというと、笑わせたい人なんです。例えば真面目にお話を聞いてくださいというお仕事であれば、僕じゃないほうがいいのではと思います。もちろん芸人さんは芸人さんで面白いですし、僕なりのやり方でできる面白さを求めています」
笑いの程度については番組に合わせて調整。「僕がやることですべてを笑いに変えたいというわけではなくて、例えば『SONGS』では、僕とアーティストの絡みの中に何か笑いが生まれればと思っています。もちろん、笑いだけあればいいということではないし、番組の性質を僕なりに考えて加減しています」と説明し、『ザ・マスクド・シンガー』に関しては「笑いに特化して司会をしていい番組かなと思ってやっています」と話した。
●俳優業とバラエティ…どちらかではなく両方が不可欠
また、笑ってもらうためにも「役者以外の仕事においては、とにかく楽しむことしか考えていない」ときっぱり。「僕が楽しんでいるところを見て人々が楽しんでくれると思っているので、バラエティに関しては僕がどれだけ楽しめるかだと思っています」と明かした。
北海道テレビ制作のバラエティ番組『水曜どうでしょう』をきっかけに全国区の人気者になった大泉。「芸人さんという形をとらなかったですが、僕は運がいいことに今の仕事がなんとなくやれた。大学時代にやったアルバイトの延長戦で『水曜どうでしょう』という番組が始まったものだから。芸人になるんだという強い信念でなったわけではないわけですが、今のメディアへの出方が僕には一番向いていたんだろうなと。ラッキーだったと思います」
そして、北海道で活動していく中で、バラエティだけではなく俳優業への思いも増していったという。「人を笑わせたいという思いだけで10年間やっていたけれど、毎日同じことをしているとどこか飽きてしまう自分もいて、モノを作りたいという衝動も同じく僕にはあるのかなと。バラエティで瞬発的に人を笑わすことと、時間をかけてドラマ、映画、舞台を作っていくことと、両方やりたいんでしょうね」。そして東京進出後、俳優としても存在感を増していった。
ちなみに、「笑わせたい」という欲求は、「本能としか言いようがない」とのこと。「物心ついたときには人を笑わせたいとしか思ってなかった。保育園に通っていた頃から、同じ年の子供たちというより、大人が笑ってくれることがうれしい子供でした。みんなが夢中になっていた昆虫採集やプラモデルには全然興味がなく、延々とバラエティを見ていて、親からは『テレビばっかり見るんじゃない』しか言われていませんでした(笑)。子供の頃から落語も好きでしたし、そうやってどんどん吸収していったのだと思います」と振り返る。
NHKの音楽番組『SONGS』で“責任者”という番組の顔を務め、『NHK紅白歌合戦』で2020年と2021年に司会を担当。そして、『ザ・マスクド・シンガー』でも2年連続で司会を務めているが、「司会をすることに慣れたくない」と言う。
「僕は司会者だけをやっていきたいという思いがあるわけでもないので、司会者として上手になりたいとも思わない。
不慣れなところも笑ってもらえるんだったらそのほうがいいのかなと。僕が司会をすることは、イレギュラーでどこか特別でありたいと思っています」
また、俳優以外の仕事をやることは、俳優にとってはいいことではないと考えているものの、大泉にはそれ以外の仕事もなくてはならないのだという。
「同じことをずっとやっていると疲れてくるというか、役者で使う脳とは違うものをバラエティで使っているからいいのかなと。役者をやる上では本当は、役者以外の姿を見せることでイメージをみんな持ってしまうのでいいことではないと思いますが、役者だけをやっていると違うことをしたくなってしまう。やっぱり人を笑わせたいという気持ちが強い人なので」
●焦り感じるも楽観的「これからもワクワクしながら」
現在49歳。「40歳になってから49歳までが早かったですが、『50歳から60歳のほうが早いよ』という声を聞くので、焦りも出てきました。今では定年もだいぶ延びましたが、昔のサラリーマンは60歳で一区切り。それがあと11年で来ると思うとあっという間な気がしています」と焦りを明かす。
「もちろん10年以上前から役でいうとお父さん役なわけで、これがもう少ししたらおじいちゃん役になっちゃうのかと。そのときにおじいちゃんの役を楽しめばいいわけだけど、やれる役がどんどんなくなってくるのかなという焦りもあります」
焦りがあるとはいえ、決して悲観的になっているわけではなく、何歳までにこれを実現したいという目標を立てているわけでもない。
「僕はこういう風になりたいと、未来に目標を立てることができない人間なんです。漠然といい仕事がしたいと思っているだけで、漠然と未来を楽しみにしていることがとても大事な気がしています。結局、未来はとても楽しみで、仕事に関しては常に楽観的というか、なぜか知らないけど、いい仕事と出会えるといういいイメージしか持っていない。毎日毎日楽しみに生きています」
実際に喜びを感じる仕事と出会ってきたからこそ、将来に対して明るいイメージが持てているのだろうと分析する大泉。最近の活動で特に自身にとって大きな経験になった仕事を尋ねると、源頼朝役を演じた大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を挙げた。
冷酷非情な一面も描かれた頼朝。
大泉は「僕のことを嫌いになる方も多かったと思いますが、こんな役に出会えることもなかなかないなと。そして、作品として圧倒的に面白いので、その作品にあれだけ重要な役で関われて、日本中から嫌われるような役とお芝居ができたことは自分にとってはすごく大きな出来事だったと思います」と噛みしめる。
そして、「引き続き役者の仕事もそれ以外も今のようできて、面白いお仕事と出会えたら」と期待。「これからもワクワクしながら生きていくのかなと思います」と心を躍らせていた。
■大泉洋
1973年4月3日、北海道江別市生まれ。演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。バラエティ番組『水曜どうでしょう』(HTB)でブレイクし、数々のドラマや映画に出演。TEAM NACS公演や三谷幸喜作品など、舞台でも活躍している。近年の主な出演作は、TBS『ノーサイド・ゲーム』(2019)、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022)、フジテレビ『元彼の遺言状』(2022)、Netflix『浅草キッド』(2021)など。主演映画『月の満ち欠け』が12月2日公開予定。バラエティ番組でも活躍するほか、『NHK紅白歌合戦』では2019年と2020年の2年連続で司会を務めた。
ヘアメイク:白石義人(ima.)スタイリスト:九(Yolken)