編成部長に直撃! - テレ東、今は"辛抱の時" ヒット番組の法則=ジワジワ認知拡大に期待
●最初からゴールデンで行こうと決めていた
テレビ局が一斉に衣替えを行う春の番組改編。今回も各局、課題の時間帯に新番組を投入したり、リニューアルを図ったりと、録画視聴が増える中でリアルタイム視聴を取り込むためのタイムテーブルを作成した。この戦略を考えるのが、"テレビ局の中枢"とも言われる「編成部」。今回は、民放キー局の「編成部長」に、春改編を総括してもらい、今後の展望についても語ってもらった。
4番目に登場するのは、他局にないオリジナリティあふれる番組制作でおなじみのテレビ東京。この4月にも、終電を逃した人にフォーカスを当てる『家、ついて行ってイイですか?』という実に"テレ東らしい"番組が、深夜のレギュラー化から半年でゴールデンに進出した。この土曜夜の改革の成果は――?
(視聴率の数字は、ビデオリサーチ調べ・関東地区)
――今年の春改編は、木~土曜を中心に着手したと説明されていました。やはり目玉は『土曜スペシャル』を縮小させ、20時台に『家、ついて行ってイイですか?』を深夜から進出させたことだと思うのですが、ここまでの状況はいかがですか?
これまで『土曜スペシャル』は良い時に視聴率10%を超えていたんですが、NHKさんで『ブラタモリ』、テレ朝さんで『池上彰のニュースそうだったのか!!』が始まるなど環境が変わって、数字がとれなくなってきたので、改編しました。
『土スペ』『家ついて行って』共に同時間帯の数字はちょっと下がっていますが、『家ついて行って』は、内容的にはとても良いので、辛抱してやっていったら、徐々に認知されていくと思っています。
――深夜でレギュラー化されてから半年でのゴールデン進出でした。とても迅速な決断だったように見えます。
もともとゴールデンで行こうと踏んでいたんです。特番はやっていたんですが、家ついて行っていい人がどれくらいいるのか未知数で、レギュラーになってもあのスタイルで回していけるのかというのが一番不安だったので、制作体制を作ってもらうために、昨年10月に深夜でレギュラー化させ、大丈夫だったら4月からゴールデンで行こうと決めていました。深夜でやっていた時は、M2(男性20~34歳)・F2(女性20~34歳)、男女の30代・40代も非常に多くのファンが付いてくれたので、土曜なら20時台でも視聴習慣さえつけば、年配層も含め幅広い層で見てもらえると考えています。――ほかにも、『木曜8時のコンサート』を『金曜7時のコンサート』に移動させ、木曜20時台に『世界!ニッポン行きたい人応援団』をスタートさせました。こちらはいかがですか?
木曜は若い層の数字もとれて上がりました。
金曜は少し下がっているという状況です。総論として、4月の熊本地震で潮目が変わってきたという気がしています。東日本大震災の時も随分感じたのですが、大きな災害があると、NHKさんに大きくとられる傾向があって、中でも年配の視聴者層に支えられているテレ東が、一番影響を受けやすいんです。それに春の改編で『クローズアップ現代』が22時に移動して、19時半から娯楽番組が始まったので、19時台・20時台が食われていますね。そういうこともあるので、全日帯・ゴールデン帯を含めて視聴率は全体的に下がっていますが、今は我慢するしかないという気持ちで辛抱しています。
――いろいろ騒動になりました『開運!なんでも鑑定団』も、若返りを図ってリニューアルされましたよね。こちらの効果はいかがですか?
世帯視聴率でいうと、昨年の同時期からはちょっとだけ下がっていますが、今まで支えてくださった高齢層だけに頼らず、40代・50代の層を取り込むという方針を出してリニューアルして、そこの層は確実に増えています。引き続き、高齢層の方々にも見ていただきながら、40・50代も狙っていきたいと思います。
――朝の情報番組は7時半スタートから、6時40分スタートに前倒しして『モーニングチャージ!』にリニューアルされました。
このゾーンを開拓するのは諦めずにやっていかなければいけないので、まさに辛抱の時間帯ですね。『Newsモーニングサテライト』という経済色の強い番組を受け、男性30~40代、女性の50代を意識して経済ネタの特集を構成するようにしたのですが、数字は上がってきているので、今の時間の方が戦いやすいと考えています。もうちょっと伸ばしていきたいと思っているので、編成的にはまだまだ辛抱です。
(C)テレビ東京
●社屋移転でもう1回ブランド確立を
――― 一方ドラマでは、土曜深夜に「土曜ドラマ24」を新設して『昼のセント酒』をスタートさせました。こちらは金曜深夜の「ドラマ24」の成功を受けて、ドラマ枠を増設したということでしょうか。
もちろんそれもありますが、今回Amazonプライム・ビデオでも配信するという新しいスキームで番組を構築できることになりましたので、テレビ東京らしい話題性の高いものを出そうということでスタートしました。人気シリーズ『孤独のグルメ』の久住昌之さん原案の『昼のセント酒』は初回2%台で、最近は3.2%をマークするなど、この時間では結構いい数字がとれるようになってきて、Amazonさんでの配信も好調だと聞いています。
次の7月クールも欅坂46総出演の『徳山大五郎を誰が殺したか?』と、話題になるものを提供していきます。
――金曜20時台と、24時台も7月スタートの新ドラマが出そろいましたね。こちらの期待はいかがですか。
「金曜8時のドラマ」は伊原剛志さん主演の『ヤッさん~築地発!おいしい事件簿~』です。この秋に市場が移転する築地が舞台ということでタイムリーだと思いますし、20時台ということでドラマとしては時間帯が早いので、この枠では人情モノ、喜劇というのが求められていると思って決めました。
――『三匹のおっさん』や『釣りバカ日誌』も好評でしたね。
何年かやらせていただいた中での分析から、やはりその辺が当たりどころですね。共同テレビで『リーガルハイ』や『アンフェア』などを手がけてきた稲田秀樹さんが、テレビ東京に移籍して最初のプロデュース作品ということで、新しい手腕にも期待しています。
――金曜24時台は生瀬勝久さん主演で『侠飯~おとこめし~』。また"夜食テロ"になりそうな予感です(笑)
テレ朝さんも23時台で料理を扱ったドラマになるそうなので、ちょっとお腹いっぱいになってしまう恐れもありますが(笑)、やはり生瀬さんにやっていただくので非常に面白い作品になると期待しています。
――秋には六本木3丁目に社屋を移転されますね。編成的な盛り上げ展開も行っていく予定ですか?
他局さんのように自前で社屋を作って移転するということではないので、地味にやっていきたいと思います(笑)。それに、「引っ越しなんて自分たちの勝手な話だろ」ということもあるのですが、移転に引っ掛け、「六本木3丁目移転プロジェクト」と題して、力を入れた大型の特番は仕掛けていこうと思っています。第1弾は宮部みゆきさん原作の『模倣犯』を、中谷美紀さんの主演で初めてテレビドラマ化します。これを機会にもう1回テレビ東京のブランドイメージを確立したいという狙いもあります。
――新社屋といえば、昨年の『テレ東音楽祭(2)』で、関ジャニ∞さんが工事中の建物内で歌っていましたね(笑)
今年も『テレ東音楽祭(3)』(きょう29日18:25~22:48放送)がありますが、かなりパワーアップしています。
最初は2部制で演歌・歌謡曲と若めの曲を分けていたんですが、今年が3回目になってどんどん若い方にシフトしていて、かなり多くの人気アーティストの方々に出ていただけるようになりました。
――10月改編に向けての展望はいかがでしょうか。
正直言って4月の改編でずば抜けて良くなったという番組は今のところありません。うちの番組は他局さんと違って、ジワジワと良くなっていくという特性がありますので、辛抱強く我慢しながら、やり続けていくしかないと思っています。その上で、木・金・土の検証をしっかりやって、辛抱できない番組もあるかもしれないですが、なるべく定着させるために頑張っていきたいとは思っています。
また、演歌・歌謡番組や2時間ドラマのような年配層向けの番組はどんどんBSで見る時代になってきて、地上波では厳しいという認識もあるので、この先いろいろ考えていかなければならない時期に来ていると思いますね。特にうちは年配層を多く持っているのですが、今後のことを考えて30代・40代もとっていきたい。『YOUは何しに日本へ?』や『ありえへん∞世界』、昨年10月にスタートした『ウソのような本当の瞬間! 30秒後に絶対見られるTV』は、その層が高くなってきているので、『家、ついて行ってイイですか?』もそうしていきたいですね。
(C)テレビ東京(C)「侠飯~おとこめし~」製作委員会