前田公輝、朝ドラで得た“役との距離感”「見え方が変わってきた」 近年の変化と今後を語る
●大きな夢が叶っているさなかに写真集を撮影
現在放送中のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で、黒島結菜扮するヒロイン・暢子の幼馴染・砂川智を演じている俳優の前田公輝。そんな彼が『ちむどんどん』の舞台となっている沖縄で全編撮り下ろした2年ぶりのセカンド写真集『ちゅらたび』を10月5日に発売する。「大きく人生が変わった」という朝ドラへの出演を含む近年の変化や、未来へ向けての思いを語った。
写真集の撮影の舞台となったのは沖縄。前田にとって沖縄は、ずっと出演を焦がれていたという連続テレビ小説のロケ地であることはもちろん、子役時代に出演していた『天才てれびくんMAX』で初めて長期ロケに行った所であり、なにかと縁がある特別な場所だったという。
「小学生のとき、関東圏以外で初めて長期ロケに行ったのが沖縄だったんです。そのとき子供ながらに素敵だなと思ったのですが、その後もすごく縁があるなという出来事があって。『ちむどんどん』が沖縄を舞台にしたドラマということもうれしかったのですが、写真集の撮影も沖縄でできるなんて、また思い出が一つ増えました」
全編沖縄で撮り下ろした写真集には、前田の沖縄旅がリアルに感じられるようなプライベート感満載のカットが多数収録されている。
「今回の写真集のコンセプトは、友人だったり、恋人だったり、家族と一緒に旅をしているような距離感を意識しました。それがファースト写真集との大きく違う点。結構距離を詰めて撮った写真もあったのですが、カメラマンさんが近すぎてかなりリアルなものもありました(笑)。今回僕は撮った写真を一切見ていないんです。それは第三者から見た客観的な僕が詰まった一冊にして欲しかったから。その意味でも読んでくださる人の目線の写真集になったと思います」
強い思い入れのある沖縄という場所。前田を魅了する魅力はどこにあるのだろうか――。
「美しい海と景色はもちろんなのですが、僕のなかでは“食”がとても大きいんですよね。
(『ちむどんどん』で演じている)智も沖縄の食材に魅力を感じて食品卸という夢ができたのですが、今回の撮影でさらに僕自身も沖縄料理に魅了されました。もともとソーキそばが大好きなのですが、そこに油脂豆腐が乗っているものがあるんです。油脂豆腐と言えば智が作っていた食べ物。その2つの組み合わせが衝撃的なおいしさでした。智を演じるために、いろいろな豆腐を食べたのですが、そのなかで油脂豆腐が大好きになったので、この出会いは最高でした(笑)」。
○■「やっぱり朝ドラってすごいな」反響を実感
完成した写真集を見た前田は「いまの自分」が色濃く映し出されていると感じたようだ。
「ちょうど『ちむどんどん』の撮影も時間が経って、役との距離感がようやくつかめてきたタイミングで、プライベートを切り取っていただく時間を設けてもらえたのは、本当に意味のあることだなと感じていました。2020年のときに出させていただいた写真集のときは、まだ朝ドラ出演も決まっていなかったですし、これから役者としてどう生きていこうかという葛藤もあった時期でした。
それが今回は、一つの大きな夢が叶っているさなかに撮影していただいたものなので、気持ち的にも少しリラックスできている表情が出ていると思います」
大きな夢だったという朝ドラへの出演。劇中、智は暢子との恋には破れてしまったが、反響は非常に大きかったという。
「まずネットに毎日自分の名前が出るというのがすごいなと思いました。いままで連絡がまったくなかった親戚から連絡が来たり、あとは家庭を持っている同世代のお母さん、お父さんとかはよく観てくれているようで、連絡をくれたりしています。役の名前で呼んでもらえることも『やっぱり朝ドラってすごいな』と実感しています」
●役との距離感つかみ客観的に考えられるように
朝ドラの現場で多くのことを学んだという前田。
「最初『ちむどんどん』の現場に入ったときは、天下の朝ドラの舞台だと思いすぎて自分自身にかなりプレッシャーをかけてしまったんです。肩に力が入りすぎちゃって空回りも多くて……。でも数カ月経って『このままじゃ多分持たないな』と感じて、役との距離感をしっかり保つことを意識したんです。
そこから熱さは忘れずに、でも客観的に役に対して考えられるようになりました。ほかの現場でも少し見え方が変わってきたので、とても大きなことを得られたのかなと思っています」。
『ちむどんどん』の放送中に、前田の代表作の一つと言っても過言ではない「HiGH&LOW」シリーズの最新作映画『HiGH&LOW THE WORST X』の公開も迎える(9月9日公開)。本シリーズで前田は「漆黒の凶悪高校」と呼ばれる鬼邪高校でも最強の一人である轟洋介を演じる。『ちむどんどん』の智とは真逆とも言っていいほどのふり幅だが、2019年公開の前作『HiGH&LOW THE WORST』でも、鬼邪高校初代番長・村山良樹を演じた山田裕貴が、同時期に連続テレビ小説『なつぞら』では爽やかな好青年を演じ、そのギャップが話題になった。
「どちらも気づいてもらえるといいですね。どうやって伝えるといいのか考えなければいけませんね。でも山田さんは今回の『ちむどんんどん』にも出演されていますが、先日たまたま楽屋がご一緒のときがあって、質問攻めにしてしまったんです。
熱い話もしていただいて、すごく刺激を受けましたし『裕貴くんすごい!』って驚くことが多かったです」
○■30代は「より大切だと思えることに集中していきたい」
子役時代から芸能活動を行っている前田だが、「お芝居でご飯を食べて行きたい」と思えたのは16歳のときだったという。
「『ひぐらしのなく頃に』という映画で主演をやらせていただいたのですが、そのとき現場でテイクを何度も繰り返すような経験をして、お芝居というものの深さみたいなものに目覚めました。そのとき将来役者一本でやれたらいいなと思ったんです」。
そこから数々の映画やドラマに出演し、キャリアを重ねてきた前田。そして念願だったという朝ドラの現場を経て、いまどんな思いがいま心に宿っているのだろうか――。
「『ちむどんどん』で客観的な目線を意識するようになって、より自分の強みや弱点みたいなものが見えてきた気がします。30代はそのバランスを考えながら、仕事や友達との距離感をしっかり保っていきたいですね。この2年間で写真集もそうですが、オンラインサロンやブランド開発など、役者以外のこともたくさん経験させてもらいました。
そのなかで、より自分にとって大切だと思えることに集中して時間をさけるような10年にしていきたいですね。しっかりゆとりをもって、智のように突っ走りすぎないように(笑)」
■前田公輝
1991年4月3日生まれ、神奈川県出身。6歳から子役として活躍し、2003~06年にはNHK教育の『天才てれびくんMAX』にレギュラー出演。2008年、映画『ひぐらしのなく頃に』で映画初主演して以降、多くのドラマや映画に出演。2019年は映画『HiGH&LOW THE WORST』やドラマ『貴族誕生 -PRINCE OF LEGEND-』で話題に。現在NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で、ヒロインの幼なじみ・砂川智役を好演中。9月9日に映画『HiGH&LOW THE WORST X』の公開を控える。
スタイリスト:千葉良(AVGVST)ヘアメイク:松田蓉子