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阿部寛、苦難の若手時代を経てたどり着いた今 60代への期待も「役の幅が広がっていったら面白い」

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阿部寛、苦難の若手時代を経てたどり着いた今 60代への期待も「役の幅が広がっていったら面白い」

●キャリア初の配信ドラマ「可能性と興味を感じている」
映画やドラマなど出演作が途切れず、常に新しいチャレンジをしながら第一線を走り続けている役者、阿部寛。ディズニープラス「スター」の日本発オリジナルドラマシリーズとして9月14日より独占配信される『すべて忘れてしまうから』では、キャリア初となる配信ドラマ出演を果たし、人気ドラマ『まだ結婚できない男』(19年/フジテレビ系)以来、久々にラブストーリーに身を投じている。若手俳優にとっても憧れの存在となった阿部が、もがいていた20代と30代。そして60代への展望を明かした。

燃え殻の同名エッセイを原作に、ハロウィンの夜に突如姿を消した恋人をめぐる、ミステリアスでビタースイートなラブストーリーを描く本作。阿部演じる、そこそこ売れっ子のミステリー作家“M”が、消えた恋人“F”を探すうちに、“M”の知らなかった“F”の一面や秘密が明らかになっていく。

配信ドラマに初参戦した阿部だが、自身のプライベートタイムにも配信作品を鑑賞することがあるそうで、「『イカゲーム』もついに観てしまって、めちゃくちゃ面白かった」と笑いながら、「映像を取り巻く環境が大きく変化してきている。自分も新たな道に入っていかなければいけないなと思っています。
そう感じていたタイミングで配信作品に出演させていただけて、ありがたかったですね」としみじみ。

「配信作品に可能性と興味を感じている」と続け、「海外の方々が、本作をどのように受け止めてくれるのかも楽しみです。また本作は、話ごとのラストに毎回ちがうミュージシャンが登場して歌うなど、新しい作品つくりの挑戦の場に参加できたこともいい刺激をもらえた」と喜びを口にする。

演じた“M”は、流されるままに生きる、地味で主体性のない男性だ。阿部曰く「近年は、強い男の役を演じることが多かった」とのことで、本作のような役柄は「自分の中でも久々に新鮮でした」とにっこり。ラブストーリーへの出演も久しぶりだが、阿部は「今回は、ミステリアスな要素もあって異色のラブストーリーで」と前置きしつつ、「恋愛のあれこれって、お互いにとっては真剣でもはたから見るとコミカルだったりもするし。相手の内面を探り合ったり、傷つけ合ったりすることもある。演じる上では、人間のいろいろな一面を表現することができるので、今作も面白かった」と醍醐味を語り、「『結婚できない男』もある意味、僕にとってひとつの転機になった作品。
演じていて、とても面白い役でした」と笑顔を見せる。

『スワロウテイル』(96)以来26年ぶりに女優業に復活したChara、阿部とは15年ぶりの共演となる宮藤官九郎をはじめ、個性豊かな共演者が顔をそろえている。

阿部は、Charaの紡ぎだす独特のセリフ回しと唯一無二の存在感に触れ、「幸せな時間でした」と目尻を下げ、「宮藤さんに関しては、脚本家としてももう大先生で、ご自身で監督もやられてもいるのに、現場では誰よりも謙虚。その姿勢がいつもすばらしいなと思った」と絶賛。ベテランと若手が絶妙に混ざり合ったキャスティングが叶った撮影現場は、「雰囲気もとてもよかったですね。セットも『ここまで作り込んでいるんだ!』と驚くようなものばかりで、丁寧に時間をかけてものづくりができる現場。贅沢な現場で新しいチャレンジをさせてもらいました」と充実感をにじませる。

●60代も「限界を決めずに役に全力で挑んでいきたい」

1980年代から『メンズノンノ』のカリスマモデルとして活躍し、1987年に映画『はいからさんが通る』で俳優デビューした阿部。
58歳となった今年は、水中捜査を行うスペシャリスト集団の隊長を演じたTBS日曜劇場『DCU~手錠を持ったダイバー~』、豪快な“昭和の男”に扮した映画『とんび』、ドラム演奏にトライする鬼刑事を演じた『異動辞令は音楽隊!』など、話題作に続々出演。7月に開催された「ニューヨーク・アジアン映画祭」では、アジアで最も活躍する俳優に贈られる「スター・アジア賞」を日本人として初めて受賞するなど、その勢いは増すばかり。そんな阿部にとって20代、30代は挫折を味わい、もがいていた時期だと振り返る。

「モデルとして人気が出て、映画に大抜てきをしてもらったことで俳優の世界に入って。当然、実力がなかったので、すぐに落ちていった」と苦笑い。「下積みもしていないから、そうなった時にどうしたらいいかわからない。さらにセリフがなくても済むような、見た目だけを求められているような役しかもらえない。すごくつらかったですね。
『役の幅を広げたい』と思っても、自分でできなければ、いろいろ様々な役をいただけるわけがないし。そういった時期が7年くらい続いた」という中、阿部は30歳を目前にしたタイミングで、つかこうへいの舞台『熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン』に主演した。阿部は「ようやくチャンスをいただけた時には、いろいろな習い事をしたり、積み重ねてきたものをふんだんに出し、何でもやれるということを見せていった。一つのチャンスというものが、どれだけ大事かということを実感していたから」と役者として花開くまでの、苦難の道のりを回顧。

「役の幅が狭かったからこそ、『こういう役もできます』ということを見せ続けていく。そうやって貪欲に臨まないと仕事がなかったので必死でしたが、だんだんとそれが楽しくなっていって。役作りも楽しくなるし、新しい役に向かうごとにいろいろなことが学べた。次第に主演を任せていただけるようになって、責任感も生まれてきた。
そうやって今に至ります」と穏やかに微笑む。

自分を見つめ、悩みながら壁を乗り越えてきたからこそ、今の阿部寛がいる。60代に向かう今の心境も、「いろいろな作品に恵まれて、今年は海外で賞をいただくこともできた。これからも、一作一作、一瞬一瞬を楽しんでいる今の状況を、変わらずに続けていきたい。さらに演じる役の幅が広がっていったら面白いなと思う。年齢を重ねたからこそできる、力の抜けたような役も演じていきたいし、そこから逆行したっていい。60代になったからといって限界を決めずに、役に全力で挑んでいきたい」と変わらず貪欲だ。「これからも見てくれる方に喜んでもらえるような作品をつくっていきたいです」と清々しく宣言していた。


■阿部寛
1964年6月22日生まれ。神奈川県出身。1987年映画デビュー。2000年から始まったドラマ「TRICK」シリーズではクセのある物理学教授・上田次郎を演じてブレイクを果たし、『歩いても歩いても』(07)、『青い鳥』(08)で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。2012年には大ヒットを記録した『テルマエ・ロマエ』で第36回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝く。第38回日本アカデミー賞では『ふしぎな岬の物語』(14)で優秀主演男優賞、『柘榴坂の仇討』(14)で優秀助演男優賞をダブル受賞。「結婚できない男」(06、19)、TBS日曜劇場『新参者』(10)、『下町ロケット』(15、18)、『ドラゴン桜』(05、21)など数々のテレビドラマでも主演を務める。

(C)Moegara, FUSOSHA 2020

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