映画で話題の「後妻業」とは? 高齢者とその家族が巻き込まれるトラブル
「後妻業」は普段聞きなれない言葉かもしれません。そもそも「後妻」というのは、妻と死別または離婚した男が後に迎えた妻のことで、後妻業というのは、資産家の独身老人男性の後妻になって財産を奪う女性のことを指します。もちろん日本語として後妻業という言葉があるわけではありませんが、黒川博行氏が、小説『後妻業』と発表し、またその実写版が映画『後妻業の女』として公開されたことから、そういった女性の生きざまを描いたため広く認知される言葉となりました。
○後妻業は犯罪じゃないの?
それでは、愛情もなく、遺産を目当てに結婚することは犯罪なのでしょうか? 結論から申し上げると、残念ながら遺産目当てで結婚すること自体は犯罪ではありません。これに対して家族や相続人は、遺産目当てであるのを隠して結婚しているのだから詐欺だと言いたくなるでしょう。しかしながら、そもそも、遺産目当てというのは言い換えれば相手の経済力に好意を抱くことともいえます。ルックスに好意を抱いて結婚することや、性格に好意を抱いて結婚することが許されるのですから、経済力に好意を抱いて結婚しても何ら問題ないでしょう。
ただし、後妻が夫を保険金目的で殺害などすると、殺人罪が成立し犯罪となってしまいます。
これは当然ですね。
○財産を守るためには
後妻業の女の場合、「公正証書遺言」を作成し、遺産のほとんどを自分が受け取れるようにします。こうした事態を防ぐためには、周囲の家族が普段から密に本人と接触をしてコミュニケーションをとり、後妻の相続分が多くならないように遺言書を作成してもらうことが必要です。もっとも、その前提として、妻が後妻業であることを夫に気づいてもらうことが必要ですが、うまくコントロールされているでしょうから実際は難しいかもしれません。
○まとめ
映画、『後妻業の女』が話題になり、相続について関心が高まっています。しかし、後妻業かどうかの判断は難しいですし、後妻の内心なんて分かることの方が少ないでしょう。やはり、後妻がいるいないに関わらず、親子・兄弟などの家族とは日頃からコミュニケーションをとっておくと、家族のピンチに早く気づけるでしょうね。
岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。
慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。