男性ブランコ、KOC準々決勝敗退で賞レースに対する意識変化 漫才挑戦による成長も語る
●KOCとM-1の2冠目指すも「そこまで意識するのはやめようと」
昨年の『キングオブコント』で準優勝し、人気芸人の仲間入りを果たしたお笑いコンビ・男性ブランコ(浦井のりひろ、平井まさあき)。優勝を狙った今年の『キングオブコント』は準々決勝敗退と悔しい結果に。切り替えて臨んでいる『M-1グランプリ』では初の決勝進出を決め、漫才でも注目を集めている。2人にインタビューし、大きく変わったという賞レースへの思いや今後の目標を聞いた。
――今年の『キングオブコント』を戦い終えた直後、「来年に向けて頑張ろう」と気持ちを切り替えたとおっしゃっていましたね。
平井:そうせざるを得なかったというか、早く『M-1』に専念できるようになったので逆に良かったと思うようにしました。
――ここがよくなかったなと分析などされたのでしょうか。
平井:正面を切ってぶつかったから、ただただ足りなかったんだなと。
お眼鏡にかなわなかったんだなと思いました。
浦井:縁がなかったんだなと。
――『M-1』は、2020年は参加されませんでしたが、昨年からまた出場されるように。コントと漫才の準備のバランスはどのようにしていたのでしょうか。
平井:今年に関しては、前半はほぼコント。漫才は、各月でゆにばーすとやっている新ネタライブで漫才をやっていて、そこだけでした。
――やはり『キングオブコント』を優先に考えられているのですね。
平井:はい。
今はほぼほぼ漫才しかやってないですけど。
――『M-1』を戦いきってから来年の『キングオブコント』に切り替えると。
平井:そうですね。
――『キングオブコント』により重きを置きつつ、両方優勝を目指していくことになるのでしょうか。
平井:そうなんですけど、今年優勝するぞという感じで『キングオブコント』に臨んで準々で負けてしまったので、そこまで賞レースを意識するのはやめようと思っています。もちろん頑張りますけど、もっと先を見据えて。その過程でいいものが生まれて、賞レースで優勝していたねってなるのがいいのかなと思っています。
浦井:頑張りますけど、そこだけ見るのではなくもっと全体を見ようと。
やりたいことがその先にあるので、そのために一生懸命やっていくという考えになりました。――賞レース優勝がゴールではないわけですね。
平井:はい。今年でちょっと目が覚めたというか、これだけ照準を合わせてやったのに無理だったので、好きなことやらせていただこうかなって。もちろん賞レースのために面白いネタを作るという意識はありますが、今年のように100%それだけに振るのはやめます。
――では、もっと先に掲げている目標とは?
平井:全国ツアーで地方で30回公演してもチケットが即完するコンビになるというのが目標です。そうなるための一つの手段として、賞レース優勝があると。
――賞レースに対する意識の変化を教えていただきましたが、その上で、来年の『キングオブコント』はどのように戦いたいと、今の時点で考えていることを教えてください。
平井:決勝でやりたいネタが1個あるので、それをやりたいなというくらいですね。来年はそんなに対策とかはしないかもしれません。今年気張ってやりすぎてしまったのでその反動で。気張りすぎてもしんどいだけなので、そこまで気張らず、楽しんでやるくらいの心持ちのほうがいいパフォーマンスにつながるのではないかなと。
●「誰もやってないことを」オンリーワンのコンビを目指す
――ちなみに、今年の『キングオブコント』の決勝はご覧になりましたか?
平井:見ました。面白かったです。
浦井:全組面白かったですが、ニッポンの社長さんのケツの顔で一番笑いました。
――優勝したビスケットブラザーズさん含め、吉本のお仲間たちがたくさん出場されていましたね。
平井:ビスブラめちゃくちゃ面白かったです。
浦井:あのネタされたら嫌だなと思っていて、そのネタでちゃんと優勝されて。
――吉本の芸人さんたちは、ライバルだけれども、お互いアドバイスし合ったりしていると聞き、素敵な関係だなと感じました。
平井:優勝してよかったねとはならず、そこは悔しさが大きいですけど。同期のビスブラが優勝して、そもそもコロチキが優勝した時点で、僕らの期で初優勝というのはなくなったので。
浦井:優勝されるのは嫌ですけど、アドバイスはお互いすごくするんです。シンプルにお笑いが好きで、このネタが面白くなってほしいと思うから、こうしたらもっとよくなるというのは言う。変ですよね(笑)
平井:だからこそ、誰もやってないことを探そうとします。
――以前から水族館や動物園など館・園系でライブがしたいとおっしゃっていましたが、ほかの人がやっていないことを、という思いからでしょうか。
平井:そうですね。ほかの人がやっていないことなら、純粋に面白いことを追求できるので。
浦井:(賞レースに)出ないで済むならもう出たくないです。
――オンリーワンの存在になって、全国ツアーのチケットが即完するコンビになれれば、賞レース優勝という称号がなくてもいいわけですね。
2人:そうですね。
――オンリーワンの存在として目指すところは、館・園系でライブをするお笑いコンビでしょうか?
平井:いろいろ模索していきますが、変わった場所で単独ライブをするというのはみんなやってないですし、自分も興味があるのでやっていきたいなと。館や園だけでなく、廃墟、街を使ったコントとか、いろんな場所でできると思うので、そういうのを突き詰めていきたいです。
――その第1弾として、12月9日にオンラインコントライブ「トワイライト水族館」を開催されます。閉館後のサンシャイン水族館で様々な水槽をバックに撮影したコントに加え、生中継もあるそうですが、水族館でのコントはいかがでしたか?
平井:めちゃくちゃうれしかったです。実際やってみると想定外のことがたくさんあって、それを知れたのもよかったです。生き物たちに光を当てたらダメとか、大声を出したらストレスになってしまうとか、勉強になりました。
浦井:劇場ではないところでやる新鮮さがあり、決まったときはすごく楽しみになりました。後ろにでっかい水槽があって魚たちが泳いでいる前でコントをやるというのが変すぎて面白かったです。
――平井さんは生き物好きですごく詳しいので、そういった知識を生かしたコントもやられたら、それも男性ブランコさんならではのネタになりそうです。
平井:知識を入れ込んだアカデミックなコントも面白そうですね。
――面白くて勉強にもなったら、学校とかに呼ばれそうです。
浦井:校外学習みたいな。
平井:Eテレ的な番組も好きなので、そういうのにも出られたらうれしいです。
●漫才をやるようになって柔軟に! コントも「遊びができた」
――漫才はお二人の人柄を好きになってもらえる余地があると考え、漫才もやっていこうと昨年決められたとおっしゃっていましたが、漫才を改めてやるようになってコンビとして成長できているなと感じていることがありましたらお聞かせください。平井:コントはガッツリ台本にしていますが、漫才は台本がなく、「ボケやるからツッコんで」という感じでアドリブ満載。その場のやりとりの中で生まれるボケのほうが強いボケになることがあって、コントではそういう作り方はしてなかったですが、コントもちょっとそういう感じを入れてみたり。これまでコントはガチガチでしたが遊びができた気がします。
――最初に決めすぎず、遊び部分を残しておいて仕上げていくということでしょうか?
平井:はい。そうやって作り上げていったほうがいい感じになる気がしています。
――浦井さんはいかがですか?
浦井:変化に対応できるようになりました。急に変なこと言われても落ち着いて、漫才のときは自分で返すし、コントのときはそのときのキャラクターで考えて返す。柔軟になった気がします。
――平場のトークにも生きそうですね。
浦井:臨機応変さは生きるだろうなとは思います。
――コントも漫才も力を入れられるようになって、笑わせる武器が倍になったという感じでしょうか。
平井:選べるようになるのはいいことですね。NGK(なんばグランド花月)に時々出演させてもらいますが、NGKは漫才のほうがウケ的にいいんですよ。NGKのお客さんは僕らのこと知らない方が多いので、そういうところではしっかり自己紹介も入れて、漫才をするほうがいいのかなと。NGKでコントでウケるようになりたいという思いもありますが。
――最近、お二人の中で変わったことや変えたことがあれば教えてください。
浦井:(平井は)最近夜な夜な飲みに行くように。
平井:そうなんです。そいつどいつの(松本)竹馬とトニーフランクとめっちゃ家が近いのでよく飲みに行っています。
――今年からですか?
平井:今年からです。お酒そんなに強くないので飲み歩いたりしてなかったのに、こんな楽しいんだと気づいてしまい(笑)
――平井さんから見て浦井さんが変わったなということはありますか?
平井:ちょっと前からめちゃくちゃいろんなことをしてくれるようになりました。道を調べてくれたり、コント台本の締め切りを言ってくれたり。
浦井:去年の『キングオブコント』以降忙しくなって、ネタに集中してもらうために雑念をとらないといけないなと思い、こまごましたところは引き受けようと思いました。平井:マジでむちゃくちゃ楽になりました。お任せしていいんだと。
浦井:そうしたら……(笑)
平井:飲み歩くように(笑)
――そのためではなかったと(笑)。でもネタ作りにもプラスになっているわけですよね!?
平井:はい! プラスになっていると思います。
■男性ブランコ
浦井のりひろ(1987年12月3日生まれ、京都府出身)、平井まさあき(1987年8月1日生まれ、兵庫県出身)によるお笑いコンビ。2011年結成。大学時代に演劇サークルで出会い、2010年、大学卒業後に2人そろってNSCに入学。『キングオブコント2021』で、ザ・マミィと同率で準優勝し、一気に注目を集める。