西野七瀬、女優としての4年で訪れた“真逆”の変化「いろんなことに興味」「まさか自分が…」
●主演・竹野内豊から学んだ自由さと集中力
13日公開の映画『イチケイのカラス』に出演する女優・西野七瀬。同作は『モーニング』(講談社)で連載された同名漫画の実写化で、2021年4月期にフジテレビ系「月9」枠のドラマになった人気作品だ。劇場版となる今作は、東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称:イチケイ)を舞台に、型破り裁判官・入間みちお(竹野内豊)と特例判事補の坂間千鶴(黒木華)の活躍を描いたドラマから、2年後の世界を描いている。
今回、みちおが赴任した岡山地方裁判所秋名支部の左陪席・赤城公子を演じた西野を取材。竹野内との共演エピソードから、自身の転機、女優として4年の活動を経て訪れた変化について語ってくれた。
○■裁判官役に初挑戦「説得力をもって伝わるように」
――ドラマ『イチケイのカラス』の劇場版となる同作で、初めての裁判官役に挑戦しました。
初めて法服に袖を通したのですが、普段着ることができないものなので、とても嬉しかったです。その分、しっかりと法服が似合うようにならないといけないなと、気を引き締めて撮影に臨みました。
法廷でのシーンでは豪華なキャストの方がたくさんいらっしゃって、そこで裁判官として発言する場面もあったので、説得力をもって伝わるように意識しました。
――人気シリーズである今作の魅力を教えてください。
なんと言っても、竹野内豊さん演じる入間みちおの空気感や人間性が魅力だと思います。私が演じた赤城公子は、基本的にずっとみちおと行動を共にしているので、よりその魅力を感じました。序盤は、みちおの裁判長らしからぬ行動に「ありえない!」「なんだ、この人!?」というリアクションをする役割でもあったので、今作に臨むにあたって、改めてドラマ版を観るということはしませんでした。なので、そのリアクションはある意味、新鮮に演じられたのかなと思います。
また、クランクインの前に田中亮監督からも、「竹野内さんはいい意味ですごく自由な方だから、それを近くで見られるのはいい経験になる」と声をかけて頂いたんです。実際に撮影に入ってご一緒すると、その意味がすごくわかって(笑)。
竹野内さんもふわふわ~という印象があって、テレビで観ていたイメージよりもとても親しみやすかったです。
○■最後までつかみきれなかった竹野内豊の魅力
――竹野内さんとみちおは少し似ている部分もありそうですね。
そうなんです! 「撮影を始めます」と声がかかったのに、急に小部屋に入っていってガチャって鍵を閉めて立てこもって、スタッフさんを慌てさせたりするお茶目な部分があったり。法廷のシーンでは隣に座っているんですが、竹野内さんはセリフの量も長さもあるので、邪魔しないように静かにしていると、急に「アリクイの威嚇って知ってる?」といった不意打ちの質問などで話しかけてくださいます(笑)。
すごく印象的だったのは、竹野内さんがすごく言いづらいセリフがあって、お1人でつぶやきながら練習されてたんです。そうしたら急に「どうする?」と竹野内さんが出演されているCMのセリフをボソッとおっしゃったんですよ(笑)。私は「あ、CMのやつだ!」と内心思って、それに続くセリフも知っていたんですけど、そこで私が急に入っていって変な空気になったらどうしようとためらっていたら、ご自身で「GOする!」とおっしゃって(笑)。知っていたのに踏み込めなくて、後悔しています(笑)。
基本的に本番以外だと、お姿を見ることあまりがなくて、どこかに行ってしまうんですよ。海辺のシーンでは海岸沿いを歩いて行ってしまって(笑)。最後まで竹野内さんという方をつかみきれなかったですね。
○■竹野内豊との共通点「突拍子もない質問を……」
――そんなチャーミングな竹野内さんは、まさにみちおにぴったりですね。お芝居の面で勉強になったことはありますか?
竹野内さんの本番に対する集中力はとても勉強になりました。本番中に少しでも物音や話声が聞こえたりすると、すぐに気づいて「もう一回やりましょう」と仕切り直してくださって。私だったら気づくことができなかったり、気づいても言えないと思うところでもしっかりと作品のために言ってくださるのがかっこいいなと思いました。
――主演としての責任感もあるかもしれませんね。
西野さんも主演を務めた経験もありますが、今回の座長・竹野内さんの立ち振る舞いで影響を受けた部分はありますか?
先ほどお話しした通り、竹野内さんは終始現場を和ませてくださいました。私は自分のお芝居だけでいっぱいいっぱいになってしまうタイプなので、周囲に目を配ることができていないなと感じます。ただ、私も竹野内さんのアリクイの質問のような、そのときふと気になった突拍子もない質問をしてしまうことはあって……(笑)。今回の撮影でも柄本時生さんに「お金を何に使ってますか?」と聞いて驚かれてしまいました(笑)。そういう部分は、竹野内さんと近いところがあるのかもしれません。
――また、『グータンヌーボ2』で長らく共演されている田中みな実さんとも共演されましたが、お芝居の現場では違った一面は見られましたか?
バラエティとは違った感覚でしたね。一緒のシーンが法廷での重たい雰囲気のところだったので、みな実さんの鬼気迫る演技に刺激を受けました。でも前室とかでは、私が持って行った漢字ドリルを一緒にやったり、普段通りに話したりしていたので、お互いに少し普段とは違った部分を見せることに気恥ずかしさもありました。
●自身でも驚く変化「まさか自分がこんな風に変わるとは」
○■自身の性格分析は「頑固」「周りからはマイペースと……」
――今作では、自由奔放でマイペースなみちおと、真面目な優等生タイプの坂間の2人を中心に物語が進んでいきますが、西野さんはどちらのタイプだと思いますか?
難しいですね~(笑)。どちらかと言えば、みちおだと思いますが、どちらの要素もある気がします。みちおみたいにマイペースにしていたいという気持ちもありますし、私は結構頑固なので、そういった部分は坂間さんっぽいかもしれません。
――周りからもマイペースと言われることは多いですか?
そうですね……(笑)。周りのスタッフさんにも言われますし、共演した方からも言われます。「マイペースに現場にいてくれたから、すごく助かりました」と声をかけていただくこともあって、ご迷惑をかけてなくてよかったと安心したこともありました。頑固と繋がる部分があると思っていて、良くも悪くも周りに流されないところを、マイペースと言ってくださってるのかなと……。自分ではマイペースだと思ってはいないんですけどね(笑)。
○■人生の転機は“乃木坂46”「思いもよらぬ方向に」
――確かに他の人から言われて気づくことですよね。また、1つのテーマとしてみちおのセリフの中に「法廷は人生の分岐点」というキーワードがありましたが、西野さんの人生の分岐点はどこだと思いますか?
それはやっぱり乃木坂46に入ったことだと思います。乃木坂46で芸能界に入って、人生が大きく変わりました。もともと芸能界への憧れはあまりなくて、進学して就職して生きていくと思っていたから、小さい頃の想像とは全く違う、思いもよらぬ方向に来ています。――グループ卒業後の現在は1人の女優として活動していますが、グループでの経験で現在に活きていると感じる部分はありますか?
あると思います。でも自分で活動しながら、あの経験が活きた! と感じることはあまりなくて……。それはグループでの経験が自分の中の基盤みたいなものになっていて、あまり意識してない部分だからだと思います。なので、もしかしたら周りから見たら、アイドルやっていたからこそと感じていただける部分があるかもしれません。
○■グループ卒業後の4年で生まれた気持ちの余裕「いいバランス」
――無意識下ともいえるくらい自身のベースになっているんですね。女優として活動してきたこの4年で変化はありましたか?
変化はたくさんありました。グループのときはお休みもあまりなく、お仕事をさせて頂いていて、日々たくさんの方とお仕事をしていたので、休みの日に誰かと会うという発想がなかったんですよ(笑)。家で1人ゆっくりするのがいちばんだったんですけど、今は真逆で、休みこそ人に合わないと息抜きできないし、いろんなことに興味が出てきていて、アクティブに過ごしています。本来の性格も含めて、まさか自分がこんな風に変わるとは全く思っていなかったので、少し驚いています(笑)。
――確かに以前の西野さんは割とインドアな印象がありました。それはお1人で仕事をするようになったことが関係しているんでしょうか?
以前は、お仕事にいっぱいいっぱいで余裕がなかったんだと思います。1人でいろいろな現場を経験させていただいたおかげで、様々なコミュニティができて、それぞれでいろんな自分を見つけることができたのかな。今は、ありがたいことに仕事も頂けていますし、友達も増えて、いいバランスで充実した生活を送れているなと感じています。
――時間と気持ちに余裕ができたことが大きいと。
あとは趣味の謎解きですね! 趣味があるから仕事をがんばれるし、仕事がないと趣味も楽しめない(笑)。仕事だけだと、どうしてもしんどくなってしまうので……。もちろんお仕事も楽しんでやらせていただいているんですが、それ以外でも楽しいことがあったほうが結果的にいい仕事ができているような気がします。ライフワークバランスっていうんですかね? 大事にしています。
○■2022年は「走り抜いたいい1年」今年の目標は“ワカサギ釣り”
――プライベートの面では大きな変化があった4年だったわけですが、お仕事の面ではいかがでしょうか?
正直、グループから卒業したときに想像していたものとは全然違いました。こんなにたくさんの作品に携われるとは思っていなかったです。作品ごとにたくさん思い出や印象的な部分があって、どれがいちばんとは言い難いですが、例えば、まさか主演をさせて頂けるなんて思ってもいなかったので、それは驚きましたし、嬉しかったですね。
――特に、2022年は第45回日本アカデミー賞 優秀助演女優賞・新人俳優賞の受賞から始まり、ドラマ、映画、舞台、バラエティ、そして久しぶりに乃木坂46のステージにも立たれるなど充実した1年を過ごされたかと思います。忙しいなかで、やり残したことはありましたか?
お仕事の面では、本当に充実した日々を過ごさせていただいて、やり残したことはないと言えるくらいに走り抜いた、いい1年だったなと思います。唯一心残りがあるとすれば、夏ごろに旅行に行く計画があったのですが、台風が直撃してキャンセルになってしまったんです。ただ、今はもっと気になるスポットができまして……(笑)。アメリカ・フロリダにあるユニバーサル・スタジオに脱出ゲームができたので、そこに行きたいなと密かに考えています。世の中が落ち着いたら絶対行きたいです!
――仕事を充実させるためのご褒美としては最高ですね。昨年はいい1年だったとおっしゃっていましたが、今年はどんなことに挑戦したいですか?
また、プライベートの話で申し訳ないんですけど、ワカサギ釣りをずっとやりたいと言っていて(笑)。できるシーズンが決まっていて、お仕事があると難しいので、今年はどうにか行きたいですね。去年、海釣りに挑戦してタイを釣ることができて、すごく楽しかったので、お仕事をがんばるために今年はワカサギを狙います(笑)。
■西野七瀬
1994年5月25日生まれ、大阪府出身。2011年に乃木坂46の1期生としてデビュー、2018年12月にグループを卒業。その後女優としてドラマ『あなたの番です』(日本テレビ)、ドラマ『言霊荘』(テレビ朝日)、映画『恋は光』などに出演。2022年には、映画『孤狼の血 LEVEL2』で、第45回日本アカデミー賞 優秀助演女優賞・新人俳優賞を受賞した。1月13日から公開される映画『イチケイのカラス』に出演。