軽部アナ・ガリタさん・月9Pが集結! フジテレビ最前線の3人が語る仕事論 -「テレビ屋の声」特別編
●営業に異動して「5kg体重減りました」
東京・有明の武蔵野大学でこのほど、フジテレビアナウンサーの軽部真一氏、バラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』のプロデューサーから営業局に異動した明松功氏、月9ドラマ『好きな人がいること』などのプロデューサー・藤野良太氏が登壇するトークイベントが開催された。同大学のマスメディアゼミの集大成として行われたもので、マスコミを目指す学生らに向け、テレビ業界での仕事論を中心に、ここでしか聞けない裏話も飛び出した。
今回は、テレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家など、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載企画「テレビ屋の声」の特別編として、この模様をレポートする。
○トップアナウンサーの条件とは
軽部アナは「スタッフと一緒に汗をかくアナウンサーが求められている」と語り、セクショナリズムに陥らず、出る側のアナウンサーも"スタッフ意識"を持つことが重要だと説明した。
それを実践している例として挙げたのは、『とくダネ!』に出演する笠井信輔アナ。自らのコーナーでは、原稿チェックなど編集長のような役割も担い、『とくダネ!』放送前の『めざましテレビ』に出演している軽部アナよりも、早く出社して準備しているそうだ。ただ、「深夜2時くらいに家を出るので、寝ぼけた状態で、息子の服を着て会社に来たことがありますけどね(笑)」と、ほほえましい一面も明かした。
さらに、『みんなのニュース』の伊藤利尋アナも、「アナウンス室の忘年会とかで、相当面白いVTRを作ってくる。
そういうセンスを持つことが、トップアナウンサーになれる要因じゃないかな」と分析し、新入社員の藤井弘輝アナら若手陣にも、日々伝えているそうだ。
また、アナウンサーという仕事について「しゃべる仕事だと思われがちですが、圧倒的に聞く仕事です」と断言。この春からMCを務める『ミュージックフェア』で、ゲストのナオト・インティライミから「いい雰囲気を作ってくれて、気持ちよくしゃべれました」と言われたことがすごくうれしかったといい、最近ではそうした空気を作り出すことを、特に心がけているという。
○視聴者が成熟する中でのバラエティPの目線
明松氏は、入社以来バラエティ制作一筋で、チーフプロデューサーを務めていた『めちゃイケ』では、大食いキャラクター「ガリタさん」の愛称で人気を博していたが、今年夏の人事で営業局に異動。「慣れない仕事が多くて、3カ月半で5kg体重が減りました。体調的にはすごぶる好調です」と言うが、軽部アナから「5kg減って今は何kgなんですか?」と聞かれて「118kgですね」と答え、まずはツカミの笑いを取った。
この日はスーツで現れ、軽部アナと藤野氏は「新鮮過ぎる!」と、まだその姿に慣れていない様子。そんな中、テレビ局の営業の仕事について「番組を商品として売ってお金を持ってきて、バラエティ、ドラマ、スポーツ、報道、情報などのセクションがそのお金で番組を作るんです」と説明し、「異動して分かったんですけど、営業の人は、俺たちが金を稼いでいるというプライドを全員持ってるんです。
ちょっとカッコいいなと思いました」と、新天地の印象を語った。
一方で、長年携わってきたバラエティ制作の考え方についても言及。最近の番組で「本当はドッキリを仕掛けられているのを分かっている芸人がどう振る舞うのかを見るという、裏の裏をかく企画もやるようになった」と、受け手側がある意味で成熟してきた中で、「単純なドッキリをする際に、プロデューサーとしては、1回純粋な気持ちで編集して作ってから、そうしたうがった見方をされる視聴者は、どう見るんだろう?という目線でチェックしていましたね」と、注意を払っていたことを話した。
また、テレビ業界志望の女子学生から、女性の働きぶりについて質問が飛ぶと、「女性プロデューサーは多くいますが、お笑い寄りのゴリゴリの女性ディレクターは、あんまり僕の周りにはいなかったです」と現状を紹介。それでも、「逆に、いないからこそ空席なんだなという思いはずっとある。女性の方がゴリゴリのお笑いを撮ったらどうなるんだろうなというのは、個人的にすごく興味があります」と歓迎した。
この話題について、軽部アナは「女性は確実に増えているので、もうテレビ局は男性社会じゃないですよね」と補足。『めざましテレビ』では、「今日はレディースデーだね」と言い合うほど、スタッフのほとんどが女性の日もあるそうだ。
●恋仲・スキコト超える話題作へ準備中
○『恋仲』に他局の制作者からエール
昨年は『恋仲』、今年は『好きな人がいること』(スキコト)と、夏の月9を手がけてきた藤野氏は、映画館で女子中高生が恋愛モノに熱狂する姿を見たことをきっかけに、ラブストーリーをプロデュースしたと説明。『恋仲』は、初回視聴率が9.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)と1桁だったが、10代の比率が高く、回を追うごとに同層の数字がどんどん上昇していったという。こうした若い世代をターゲットにした作品を月9でチャレンジすることに対し、初回の9.8%という数字が出た後、NHK・民放を問わず、他局の制作者から多くのエールが送られてきたといい、「それはすごくうれしかったです」と励みになったそうだ。
『恋仲』『スキコト』は、SNS上で大きな盛り上がりを見せ、制作サイドとしても積極的に活用。視聴者とダイレクトにコミュニケーションできるツールで、率直な感想を聞くことができるため、『スキコト』は、Twitter・Instagram・LINEの合計フォロワー数が最終回前で約170万に達していたが、「皆さんの感想は全部読んでました」と明かした。
また、『スキコト』は、藤野氏の大学の同級生の子供(6歳)が、夏向(山崎賢人)にハマっていたという。その子は、連続ドラマを見るのが初体験だったそうで、CMに入るとテレビ画面をiPadだと思ってスライドさせる動作をしていたといい、「10年後には、彼らが僕らのお客さんになってくる」と、次世代に向けたドラマ作りを考えさせられたようだ。
藤野氏は現在、次の作品の準備に入っているといい、「『恋仲』や『好きな人がいること』を超えるくらい話題になるような自信作です。
絶対面白いです!」と力を込めた。
○テレビ業界志望の学生にメッセージ
フジテレビと武蔵野大学は、ともに東京臨海副都心まちづくり協議会のメンバーとして、湾岸エリア地域の盛り上げという目的も踏まえ、この産学連携ゼミを展開。マスコミ志望の学生が多く聴講する中で、軽部アナは「人間臭い現場なので、明るい、気持ちのいい人材を採りたいというのは普遍のテーマ。ぜひ自分磨きをしてください」とエールを送った。
明松氏は、自身が就職活動をしていた当時、「会社と僕のお見合いみたいなものだと思ってました」と述懐。内定をもらえなくても「別に人格を否定されたわけじゃなくて、面接官の人との相性が悪かっただけなんだなと、自分を納得させながら就活をしていました」と言い、「その会社に入りたいがためにウソをついたりする必要はないと思います。自分の価値をちゃんと理解した上で、こびないでやった方が、先々の人生にはいいと思います」とアドバイスした。
そして藤野氏は、熱烈なドラマ志望で入社したものの、最初に配属されたのがイベントなどを手がける事業部で、最初は落ち込んでいたことを告白。
しかし、仕事で立ち会った嵐のコンサートを見て、「同年代ですごい!」と感動して大ファンになり、その後もアジアツアーなどに携わった縁から、入社2年目で相葉雅紀の舞台をプロデュースしたそうだ。藤野氏は「自分の意志とは違うことがあっても、その場で頑張っていけば、いずれ自分のやりたいこともやれるようになります」と、教訓を伝えていた。