銀シャリ悲願のV『M-1グランプリ2016』を生観戦 - オンエアにのらなかったスタジオの緊張感と審査員の苦悶
●松本人志「ちょっと重いな…」
4日にABC・テレビ朝日系で生放送された漫才頂上決戦『M-1グランプリ2016』。銀シャリが3度目の決勝で悲願の優勝を果たした同大会だったが、最終決戦は、レジェンドの審査員たちが頭を抱えてしまうという、これまでに見たことのなかった光景が繰り広げられる接戦となった。この熱戦の模様を、オンエアにはのらなかった会場の模様もまじえて振り返る。
3503組がエントリーした今年の『M-1』。決勝には、アキナ、カミナリ、相席スタート、銀シャリ、スリムクラブ、ハライチ、スーパーマラドーナ、さらば青春の光(以上、ネタ披露順)の8組が駒を進め、その半数が初のファイナリストという展開の予想できない戦いに。また、2001年の大会初回から9回にわたって審査員を務め、そのジャッジが常にお笑いファンの注目を浴びてきた、ダウンタウンの松本人志が審査員に復活。芸歴26年の博多大吉が審査員席に座ることも話題を呼んだ。
そんな松本と大吉、漫才界のレジェンド・上沼恵美子、重鎮のオール巨人、『M-1』初代王者の中川家・礼二の5人の審査員たちが登場するや、客席にはただならぬ緊張感が。
CM中、会場のモニターでは予選のダイジェスト映像が流れ、個性豊かなアマチュア漫才師たちの熱演が笑いを誘うのだが、観客の反応はだんだんと薄くなり、心配した松本が「ちょっと重いな…」と思わずもらす一幕もあった。
ピリピリとした雰囲気の中で幕を開けたファーストラウンド。だが、一番手のアキナは「トップバッターとは思えない」も上沼もうなる落ち着いたネタ運びで500満点中"446点"と高得点をマーク。続く今大会きってのダークホース・カミナリが、ゆったりとしたテンポの茨城弁漫才で会場のムードをほぐし、"441点"を叩き出せば、男女コンビの相席スタートも"436点"と初出場組が健闘を見せた。
そして、4組目にいよいよ銀シャリがステージへ。昨年の大会では王者・トレンディエンジェルにあと一歩及ばず、準優勝に終わった彼ら。しかし、リベンジにかける気負いは微塵も感じさせず、むしろのびのびと漫才を楽しんでいる様子がありありと伝わってくる。鰻和弘の愛嬌たっぷりのボケに、橋本直がひねりを利かせたツッコミを重ねていく銀シャリの王道スタイルで爆笑をかっさらった後、MCの今田耕司にインタビューを受ける2人の晴れやかな笑顔には、確かな"手応え"がのぞいていた。
大吉を「こんなにおもしろくて、しっかりした構成の漫才を見せられたら…」とうならせ、松本も「腹立つわ~、おもろい!」と賛辞を送った銀シャリの得点は、この日の最高"470点"。この時点で1位が銀シャリ、2位がアキナ、3位がカミナリとなったが、ここからファーストバトルに波乱が起こり始めた。
●天を仰ぎ、両手で顔を覆う審査員たち
5番目に登場したスリムクラブが"441点"でカミナリと同点3位、ハライチも"446点"で2位のアキナに並ぶ混戦状態に。その直後、スーパーマラドーナが草食系脱力キャラ・田中のボケを生かしたネタで"459点"を獲得して2位に、コント師として評価の高いさらば青春の光が"448点"で3位に躍り出る。
トップの銀シャリを除く上位組が目まぐるしく入れ替わる中、敗者復活戦を制した9組目のファイナリスト・和牛が"469点"とスーパーマラドーナを抜いて2位に。こうして、激しいデッドヒートの末、銀シャリ、和牛、スーパーマラドーナの上位3組が最終決戦進出を決めた。
最終決戦のネタ順はスーパーマラドーナ、和牛、銀シャリ。スーパーマラドーナは時代劇をテーマにしたテンポのいいパワー漫才を見せ、和牛はファーストラウンドで披露したカップルのデートネタをさらに進化させた熱演で勝負。
持てる力を存分に見せつけた。
2組がネタを終えたCM中、松本は自らに喝を入れるように頬を叩きながら天を仰ぎ、「この後、銀シャリも来るんやろ…」とポツリ。礼二も両手ですっぽりと顔を覆って考え込むなど、難しいジャッジに悩む審査員たちの表情が印象的だった。
そして、ラストを飾った銀シャリは、おかしな"うんちく"で2人が競い合うしゃべくり漫才を披露。大会後の会見で橋本が語ったところによれば、「『僕たちはしゃべくりで行くぞ』という決意表明」だったという。
その意気込み溢れた漫才は、審査員5人の投票で3票を獲得し、銀シャリは見事『M-1』12代目チャンピオンに。同会見で「漫才は永遠にやっていく」(橋本)、「漫才がめちゃめちゃ好きなんです」(鰻)と、漫才愛をほとばしらせた若き本格派の今後に期待したい。
○『M-1グランプリ2016』決勝戦・結果
●ファーストラウンド
アキナ:オール巨人92点+中川家・礼二89点+博多大吉89点+松本人志87点+上沼恵美子89点=計446点
カミナリ:オール巨人91点+中川家・礼二90点+博多大吉90点+松本人志89点+上沼恵美子81点=計441点
相席スタート:オール巨人87点+中川家・礼二88点+博多大吉87点+松本人志84点+上沼恵美子90点=計436点
銀シャリ:オール巨人96点+中川家・礼二91点+博多大吉93点+松本人志95点+上沼恵美子95点=計470点…◎
スリムクラブ:オール巨人85点+中川家・礼二89点+博多大吉88点+松本人志90点+上沼恵美子89点=計441点
ハライチ:オール巨人91点+中川家・礼二88点+博多大吉89点+松本人志85点+上沼恵美子93点=計446点
スーパーマラドーナ:オール巨人90点+中川家・礼二95点+博多大吉92点+松本人志89点+上沼恵美子93点=計459点…◎
さらば青春の光:オール巨人87点+中川家・礼二90点+博多大吉90点+松本人志90点+上沼恵美子91点=計448点
和牛(敗者復活):オール巨人95点+中川家・礼二95点+博多大吉91点+松本人志93点+上沼恵美子95点=計469点…◎
◎…最終決戦進出者
●最終決戦
スーパーマラドーナ:1票(中川家・礼二)
和牛:1票(松本人志)
銀シャリ:3票(オール巨人、博多大吉、上沼恵美子)