佐藤寛太、“座長”稲垣吾郎の姿勢に感銘「ついていきたい」 舞台『サンソン』の稽古秘話や役作り語る
●再びの白井晃演出に喜び「怒られながらやりたい」
劇団EXILEの佐藤寛太が、14日に開幕する稲垣吾郎主演の舞台『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』に出演する。白井晃氏の演出ということで出演を即決し、稽古が「すごく楽しい」と充実の日々を過ごしている佐藤に、本作での役作りや白井氏の演出、稲垣との共演などについて話を聞いた。
本作は、フランス革命期に実在した死刑執行人シャルル-アンリ・サンソンの物語。マリー・アントワネット、ルイ16世らの首を刎ねるという宿命に苦しみながらも人間の生死を真っ直ぐに見つめ続けた人物を、稲垣が全身全霊で演じる。
2021年4月に初演の幕を開けるも、新型コロナウィルスの感染拡大の影響によりわずか数公演で東京公演の中断、大阪公演の中止を余儀なくされた話題作が再始動。今回新たに加わった佐藤は、親殺しの罪で死刑を宣告されるも、友人たちによって救い出されるジャン・ルイを演じる。
――音楽劇『銀河鉄道の夜 2020』でご一緒された白井晃さんが演出を担当されるということで、演目を聞く前に「やりたいです!」と即決されたそうですね。
白井さんが呼んでくださるんだったら「ぜひ!」と。
うれしかったです。『銀河鉄道の夜』でご一緒したときに、演劇を何も知らない自分に一つ一つわかるまで丁寧に向き合ってくださる姿がすごくうれしかったので、今回も白井さんにガッツリ怒られながらやりたいなと思いました。
――『銀河鉄道の夜 2020』では、俳優としてどんな学びがありましたか?
舞台は映像と違ってカット割りがなく、役者たちが自分たちで動きながら演出をつけていく部分もあるので、感情で突っ走るというよりも、感情を腹の底、丹田のところに押し下げて、足から動くようにと、白井さんに教えていただきました。
――舞台のほうが感情を爆発させて演技されるのかなと思っていました。
僕もそう思っていたのですが、そうすると喉を潰してしまうんですよね。今回も感情を先に演じていたら喉の調子が悪くなってしまって。感情だけでやるとそうなってしまうので、気持ちと表現の境界線をより考えさせられるのが演劇なのかなと感じています。
――白井さんの演出について、『銀河鉄道の夜 2020』のときから変わったなと感じていることはありますか?
そんなに変わってない気がします。
そして今回も楽しいです。
――今回再び白井さんとご一緒され、舞台に限らず俳優として学びがありましたら教えてください。
年に1回舞台をやらせてもらっているのですが、自分の中でお芝居を頭で考える機会になっています。自分が思いつかなかったことを白井さんや先輩の役者さんたちに言っていただき、もっと広い視野が持てるようになっていると思うので、今回もお芝居をする上でまたひとつ感覚をつかんでいけたらいいなと。白井さんの演出やご一緒させていただく先輩たちの姿を見ながら演技に関して学びを見つけられたらと思っています。
○■フランス革命期に関する本を読んで役作りの参考に
――いつも稽古に入るまでにどんな準備をされていますか?
今回はフランス革命の時代の作品だったので、その時代に関する本を買って読みました。マリー・アントワネットとシャルル-アンリ・サンソンの本を読みましたが、舞台で起こっている事柄について詳しく知ることができました。そして、馬の蹄など蹄鉄を作るところの息子の役なので、衣装を着ていてもわかるくらい体に厚みがある、職人階級の若々しさやエネルギーを出せるように、舞台期間中も稽古期間中も体を鍛えようと思っています。
――本を読むのはもともとお好きですか?
そうですね。自分が興味を持って見たいと思った本や映画は、そのときに必要なものだと思って読んだり見るようにしています。今回の舞台では、死刑を宣告されて受け入れる役を演じますが、どうして死を前にして人間の尊厳や気高さを優先できるのかわからなかったので、本を読んでその当時の人たちの気持ちを知りたいと思いました。
――演じるジャン・ルイについて、台本を読んで感じていた印象から、稽古が始まってから変化はありましたか?
みんなで作り上げ、動きをやっていく中で、自分が想像していたものとは全然変わっていますが、最初に自分が持っていた印象に近しいところもあるので、役の解釈の振れ幅が大きくなっている気がします。ジャンとして舞台の上に立ち、誰かと相対しているときはすごく楽しくて、今日も稽古に行きたいなって、毎日稽古が楽しみです。
――役とご自身の共通点はありますか?
時代も背景も違うので自分と対比させることは難しいですが、若い勢いで何かを変えたいという思いは、例えば映画やドラマや演劇とかに関して、もっと「面白い」「生活の糧になる」と思ってもらいたいという思いはあります。とはいえ、フランス革命の若者たちみたいに、となると難しい気もします。でも、自分がこの状況にいたらどうなるんだろうなとは考えていきたいです。
別の自分になりきるという感覚でお芝居することはあまりないので、自分の中から出していきたいと思っています。
●稲垣吾郎のカメラを見て「話しかけちゃいました(笑)」
――稲垣さんとの初共演はいかがですか?
ずっとテレビで拝見していた方とご一緒できるという高揚感があります。すごく物腰が柔らかい方で、自分が抱いていた画面の向こうの吾郎さんのイメージよりも人柄が穏やかというか、分け隔てなく接してくださるから話しやすくて、すごく居心地のいい空間になっていると思います。
――俳優の先輩として稲垣さんから刺激を受けたり、すごいなと感じたことがありましたら教えてください。
初日に、本読みのあとに立ち稽古をしたのですが、吾郎さんが長セリフのシーンを台本を持たずにやられたんです。僕たちにプレッシャーを与えようとしたのではなく、座長という責任を持った上で初日にそうされたんだろうなと感じたので、すごくかっこよかったですし、ついていきたいと思いました。
――現場ではどんな会話を?
稲垣さんがカメラを現場に持ってこられていて、ちょうど僕が気になっている機種だったので、話しかけちゃいました(笑)。どういう写真を撮られているのかなというのも気になって。
稽古場の風景も撮ってくださるなら、ピースしたいと思います!
――俳優として活動を開始してから約8年。さまざまなドラマや映画などに出演し、経験を重ねられていますが、今の俳優業への思いをお聞かせください。
今は目の前の作品に一生懸命なのが楽しいです。今年に入ってから1本1本に向き合う姿勢を変えようと思うようになり、自分のマインドをもっと作品にしっかり向けようとすごく意識しています。
――何かきっかけがあったのでしょうか?
何か一つというわけではなく、いろんな人との出会いだと思います。いろんな人と出会って、いろんなことを話していく中で、自分は真摯に向き合っていたつもりだったけど、自分が気持ちよくなっていただけなのではないかなと振り返ったり。小さい出来事が積み重なって変わっていったのだと思います。今はとにかく、作品に一筋になることが大事だと思っていて、仕事が楽しいし落ち着いているなと思います。
■佐藤寛太(さとう・かんた)
1996年6月16日生まれ、福岡県出身。劇団EXILEのメンバーとして、2015年より映像・舞台に多数出演。近年の主な出演作に舞台『怖い絵』(22)、映画『Blind Mind』(23)、ドラマ『結婚するって、本当ですか』(22/Amazon Prime Video)、『テッパチ!』(22/フジテレビ)、『あせとせっけん』(22/MBS)など。
■舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』
東京公演:4月14日~4月30日 東京建物Brilia HALL、大阪公演:5月12日~5月14日 オリックス劇場、松本公演:5月20日~5月21日 まつもと市民芸術館 主ホール
ヘアメイク:Emiyスタイリスト:平松正啓