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これが日本のものづくり力 - 品質にこだわり続けるサイレックスの挑戦 (1) "切れない"無線LAN技術を実現するためのこだわりの空間

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これが日本のものづくり力 - 品質にこだわり続けるサイレックスの挑戦 (1) "切れない"無線LAN技術を実現するためのこだわりの空間
○徹底した品質へのこだわりを集約したサイレックスの本社・工場

日本の製造業と言われると読者の方々はどのようなものを思い浮かべるだろうか。誰にも真似できない独自技術を持つ町工場、精密な機械や部品を組み合わせた大企業の製造装置や自動車などなど、さまざまなイメージがあるだろう。その中の1つに高品質、というものを思い浮かべる人もいると思う。しかし、近年、機器の不具合を要因として企業イメージを損なうメーカーも少なくない。そんな中、設計から製造、そして製品の品質の検査まで一貫して国内で実施することにこだわり、徹底的に高い品質を顧客に提供することを目指している中堅企業がいる。その企業こそがサイレックス・テクノロジーだ。

カタカナの企業名から、外資系というイメージを持たれることもあるが、れっきとした東大阪発の日本企業であり(設立当初の社名は"タスサービス")、現在の主力事業に発展したコンピュータ開発事業は1977年から連綿と行ってきた。そのコンピュータ開発事業から発展し、主力として同社を牽引してきたのがプリンタメーカー向けプリントサーバ事業。
そして2014年の現在、同社の次の中核として成長しているのが無線LAN関連製品だ。同社の無線LAN製品の特長は「切れない」ということ。ご家庭で無線LANルータを使っている人や、スマートフォン/タブレットなどでキャリアなどが提供するWi-Fiスポットサービスなどを使っている人などは経験があると思うが、とかく無線LANというもの、ある日突然、接続が遮断されたり、アンテナは見えていても接続が確立されないといったことも多い。しかし、それでは許されない場面もある。例えば、工場内で24時間365日稼働する産業機器や患者のバイタルデータなどを管理している医療機器などだ。同社の無線LAN機器はそういったところでも"切れない"で安心して使えることにこだわって開発されている。特に同社は2011年に村田機械による公開買い付けにより100%子会社となっており、村田機械が製造する産業機器と無線LANの組み合わせといった案件も増加しているという。

そんな同社の製品は企画・設計から生産、品質検証まですべて一貫して京都、大阪、奈良の三府県にまたがる"けいはんな学研都市"にある本社・工場にて行われている。
そんな同社のこだわりの秘密を実際に本社・工場にお邪魔して探ってみた。

2008年1月に本格稼働を開始した同社の本社・工場は、地上3階建て。敷地面積は3387坪で、建物の広さは782坪、延べ床面積は1922坪だ。その外観は6年前から稼働しているとは思えないほどきれいだ。また、3階まで吹き抜けのエントランスも白を基調として、明るさと清潔さを感じることができる作りとなっている。

ざっくりと各階の構成を説明すると、1階が工場の生産ライン、2階が開発・設計チーム、そして3階が営業や生産管理などの部門に分かれている。また3階は顧客などと打ち合わせをするオープンスペースも設置されており、そこに一枚のプレートが飾られている。「TEAM Silex technology」と記載されたこのプレート、設計・開発、生産、品質、国内、国外、すべてが1つのチームとしてつながらないと求められる"切れない"という品質はクリアできない、ということを意識させるためのものだという。


また、そこから2階の一角を見下ろすこともできる。2階の一角はエントランス同様、吹き抜け構造になっている。そこは会議室とは別に、アイデアなどを社員同士で出し合ったりするクリエイティブスペースとして活用されている場所で、開放感のある空間で、自由闊達にアイデアを出し合って、製品開発に結び付けている。

●空間そのものを品質へのこだわりの場としている2階 - 開発チームフロア
○清潔感あふれる1つのフロアにすべてのエンジニアを集約

この製品開発の現場における品質に対しても同社は並々ならぬこだわりを見せる。同社の社員数は国内だけで188名。その内100名近くがこの2階に居る。1つのフロアにソフトウェアエンジニアが約60名、ハードウェアエンジニアが約20名、そのほかに開発管理を担当するスタッフなど、すべての開発に携わる人員が集約されているのだ。また、開発したソフトウェアは開発担当エンジニアごとにデバッグを行うほか、ソフトウェアの品質試験を専門に担当するスタッフが10名おり、そうしたテスト検証チームが常にソフトのチェックを行い、試験レポートを作成、1つでも不良・不具合と判断されれば、手戻りとなり続ける。


そのため、エンジニア1人ひとりについても、プログラムのソースコードに対するレビューなどを仲間同士で行い、他人が見てもわかりやすいコードの記述方法などを教えあったりと、不具合の元になるスパゲッティコードのような自分勝手な記述を排し、出荷前にバグを潰すということを徹底している。こうした人に紐づく品質へのこだわりのほか、フロアそのものにもこだわりが施されている。天井には電灯だけで、空調設備などは側壁か床下に配置されているほか、柱も太すぎない直径18cmの白塗りの円柱を採用。デスクも移転前から使用しているものを除いてはオリジナルのものを採用し、パーティションも1m程度の高さに抑えている。この結果、どういったことがこのフロアで起こっているかというと、なんと約60mの奥行きを持つ開発フロアの端から端まで見渡せるのだ。

これが何を意味するかというと、どこに誰が居るのかが即座に把握できる。つまり、ソフトエンジニアの元にハードエンジニアがすぐに行って、そこですぐに問題を相談し、解決に向けた取り組みをスムーズに進めることが可能になるというメリットを生み出している。

このほか、壁には「良いチームになるための10カ条」、「マネージャーへの20カ条」、そして同社の現在のコアコンピタンスである「品質方針」が掲げられている。
現在、3カ条が記載されているこの品質方針について同社の社員は暗記するまで叩き込まれるとのことで、エンジニアには品質こそが自社の命であることを意識づけさせる役割を担うものとなっている。

こうした品質へのこだわりは各エンジニアのデスク周りにも表れている。ドキュメント類が無造作に散らばっていたり、エンジニアの趣味のグッズなどが置かれていたりということがないのだ。なにもそこまで、という気がしないではないが、あのドキュメントはどこに置いたっけ?、などという気持ちのゆるみがバグを生み出し、それが品質の低下を招く、という徹底した意識付けが生きている。これは、各エンジニアのデスク周りだけでなく、建物そのものにも生きている。建物の外観がきれいだと先述したが、内部も汚れがパッと見て存在しないのだ。建物外周部の草刈りも毎月一回、社員たちが自らの手で実施しており、清潔感を出しており、いつどのような来客があっても、魅せる空間、としての存在感を維持している。

●検査、検査、検査の生産工程に徹底した品質へのこだわりを見る
○徹底的な検査により高い品質を提供する生産工程

生産ラインは2階、3階とは区分けされて存在している。
「PDA(Production Depertment Area)」と呼ばれる同社の生産現場は、2014年1月に導入した0402対応の最新式の実装ラインと、0603まで対応している既存の実装ラインの2ラインを中心に構築されている。しかし注目すべきは実装のラインではなく、その後の各種検査工程だ。まずは外観検査。検査装置を経たチップなどが実装された基板は人間の目による目視の検査が実施され、人間の手によるカッティング、そして場合によってはX線検査も人の手により実施される。目視で検査はよくある話なので分かる範囲だが、カッティングについては、「機械でやると振動などで基板に傷がつく場合があり、それを避けるには人の手が一番」(同社担当者)とのことで、最終的に人手による作業にたどり着いたという。

この後も検査が続く。1モジュールごとに実施される無線モジュールの動作検査は、パラメータだけでなくアナログフロントエンドなどの基準も厳格に設定しており、規定の出力に到達していなければ不良という判定を行うために、ものによっては1モジュールに10分をかける場合もあるという。そのため、キャリブレーションの実施も同時に行うことで作業時間の短縮と検査の付加価値化が図られている。


無線モジュールの動作検査を経た後は、セル生産方式による最終製品の組み立て工程で、その後、再び最終製品の検査が実施される。こちらも単に検査を行うだけでなく、ファームの書き込みを同時に行うことで付加価値化が図られている。そしてその後、出荷前の最終検査がランダムの抜き取り調査が行われ、顧客へと出荷されることとなる。

とここまでは出荷に向けた流れだが、品質へのこだわりは多数の検査工程だけにとどまらない。部材の受け入れ工程にもそのこだわりを見ることができる。例えば部材の入出庫の倉庫も、整然と荷物が区分けして置かれて、どこに何があるかが判別できるようになっているほか、ICといった半導体デバイスなどについては温湿度がコントロールされた別区画にて、各デバイスともにアルミの真空パックで保管され、生産工程に周り端数が生じた場合でも、ドライパックに収めて保管して、次回の使用に向けて待機するという徹底した管理ぶりである。

とにかくオフィスにあっても、工場にあっても、品質をいかに向上させるか、という点へのこだわりを徹底している様子を感じることができるのが同社の本社・工場である。こうした取り組みについて、同社は「顧客とともに成長してきた」(同)と表現する。これは、「顧客が本社・工場を訪れて、何か改善するべき点を指摘してくれることで、特にハード面での品質向上が進んできた」(同)ということで、無線モジュールのファームウェアなどの開発も同社が担当するため、客先の最終製品の開発開始とともに同社の開発もスタートすることもあるが、そこまでやっておきながら、最終的に同社の担当部分の不具合で発売延期、というわけにはいかない、といった背景を受けたものだ。しかし、顧客ごとに必要とされるノウハウは異なるため、常にそれぞれの顧客に満足の行く品質を提供することはそう簡単にはいかない。それでも「100点満点はないが、常に顧客の要件にマッチできるものを実現していくことが使命」と同社は語る。機器の高機能化や高性能化により、ソフトウェアの役割は増すばかりだ。また、IoTやM2M、クラウド、といった言葉が取りざたされるようになり、あらゆるものがネットワークに接続される時代が目前に迫っていることも事実だ。そうした時代、"切れない"という無線LANの存在感はますます増していくことになるだろう。その時、今以上に同社の品質へのこだわりが注目を集めることになるはずだと感じられる今回の訪問であった。

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