中村アン、パブリックイメージにもがいた日々「いま35歳でようやく『お芝居が好き』と言える」
●主演舞台『笑ってもいい家』で舞台作品に初挑戦
7月1日から東京・六本木俳優座劇場で上演される舞台『笑ってもいい家』で、舞台初挑戦にして主演を務める中村アン。ある出来事をきっかけに仕事を辞め、都会から離れた場所で、同年代の若者とともに共同生活をする元カメラマン・吉澤朱音を演じる。
「初めてのことに挑戦するのに時間がかかる」と胸の内を明かす中村。にもかかわらず、なぜこのタイミングで舞台に挑む決心をしたのか。そして、35歳で「胸を張って“お芝居が好き”と言えるようになった」という自身の変化とは。
○■気持ちが固まるまで「じっくり考えて決断」
――今作で初めて舞台に挑戦されます。
以前から舞台に興味はありました。今年に入ってお声がけいただいて、実は悩んだんです。
意外かもしれませんが、初めてのことに挑戦するのに時間がかかるタイプで。決めたら飛び込めるんですが、その気持ちが固まるまで、じっくり考えて決断しました。今回の舞台への初挑戦は、芸能界に入ったときに、覚悟をもって“テレビに出る! 未知の世界に行く!”と心に決めたときと同じくらいの感覚。誰がプッシュしても自分の気持ちが追い付かないとダメだと思ったので、考える時間をいただきました。
――中村さんはこれまでも女優として活躍されてきましたが、舞台に挑戦するにあたって、準備していることはありますか?
一番は気持ち。見たことのない景色に向かうときは平常心を保ちながら、覚悟をもって臨むことですね。演出の粟島(瑞丸)さんをはじめ、共演させていただくキャスト・スタッフの皆さんと一緒に全力で最後までしっかりとがんばりたいなと思います。
――初めての舞台作品でいきなりの初主演ですが、プレッシャーは感じますか?
稽古が始まる前までは、すごく不安だったんですが、キャスト・スタッフの皆さんにお会いしてからは、向かう先が見えてきたので前向きにがんばるのみ! という気持ちになっています。
プレッシャーは意外と感じていなくて、とにかく来ていただけるお客さんに楽しんでもらうという気持ちを大切にがんばっています。
――舞台作品だと、映像とは違った技術も必要になってくると思います。
遠くに投げかけるのは大変ですね。でも、声を出すことによって、だんだん恥ずかしいとか怖いという気持ちが無くなってきていて。これは私が超えたい壁でもあったので、勉強になりました。今までドラマ作品とかだと、自宅で動きながらセリフを覚えたりしていましたが、稽古はみんなで体を使いながら覚えていくので、すごく新鮮でした。
――稽古場の雰囲気はいかがですか?
皆さんの舞台にかける思いが、同じ方向を向いているようにすごく感じていて。それがとても心地よい空間ですし、その雰囲気に助けられています。
――今回演じた吉澤朱音はカメラマンという設定ですが、役作りはどのようにされていますか?
職業はカメラマンなんですが、どういうカメラマンだったかというのは、実はあまり物語には関係ないんです。今作は朱音たちの共同生活を、客席の皆さんがこっそりのぞいているようなリアリティがあるストーリーなので、やっていきながらつかんでいけたらいいなと思っています。ただ、朱音が抱えている問題に真摯に向き合っていく姿がいちばん大事なポイントなのかなとも感じています。
ポスタービジュアルだと暗いお話と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、朱音はいつもの私より元気です(笑)。きょうの衣装も黒ですが、作品は全然違う雰囲気なので、いい意味で裏切れたら……と思います。
●モデルから女優へパブリックイメージにもがいた日々
○■共同生活は「難しい」「一人になりたいと思うタイプ」
――もし、中村さんが共同生活をするとして、「~をしてもいい」というルールを作るとしたら?
共同生活って、家族でもいい大人になると難しくなると思うんですよね。実家とかに帰っても少し経つと“一人になりたい”と思うタイプ(笑)。一人暮らしが長いと、やっぱり水回りとかは気になっちゃうので、いまの私には共同生活は難しいですね。
以前出演したTBSドラマ『着飾る恋には理由があって』(21)という作品でも、共同生活をしている役を演じたんですが、そこは水回りとかも気にならないくらいの広さの家だったんです。なので、そのくらいの豪邸ならできるかもしれません。
――先ほど、「初めてのことに挑戦するのに時間がかかる」とおっしゃっていましたが、今なにか始めようとしていることはありますか?
去年は着物の着付けを習ったり、乗馬をしたりしていたんですけど、具体的な予定がないと続かなくて……(笑)。仕事で必要になると続くんですけどね。映画『マスカレード・ナイト』(21)で披露したタンゴも2カ月間習ったんですが、撮影があるということと、お相手がいるということが大きかったです。○■髪をばっさり切って訪れた転機「タイミングを待つことが大事」
――たしかにプライベートで続けるものを探すのは大変ですよね。また、今回の舞台挑戦も大きな転機になったとのことでしたが、中村さんというと、ショートカットにされたタイミングも転機だったかと思います。ご自身ではどのように感じられていますか?
まさにそうですね。
髪も切りたくて、ずっとタイミングを待っていたんです。ちょっとせっかちな部分があるので、すぐ変化を求めてしまうんですけど、タイミングを待つということが大事だなと、この10年で学びました。
25歳でバラエティに飛び込んで、そこからお芝居をする機会をいただいたんですが、「本当に私は演技をしたいのか?」という気持ちもあったんです。ただ、いろんな方に出会って、刺激をもらったなかで、ちょうど髪を切る少し前に出演した『名も無き世界のエンドロール』(21)という作品で、感情を出すお芝居をさせてもらって、演技の楽しさに気がつけた。“違う人になる”ということの意味が少しだけ分かった気がして。
そこからさらに、“中村アンというパブリックイメージ”を取っ払いたくなって、芝居に対しても欲が出てきました。この時期は、周囲から「すごい(いろんな作品に)出ているね」と言っていただいていたのですが、自分の中ではもがいていたとき。いま35歳でようやく胸を張って、「お芝居が好き」「もっとがんばりたい」と言えるようになってきて、こういう風に思えるまでにすごく時間がかかったなと思います。
――なるほど。「お芝居が好き」と言えるようになった今、これからの展望は女優としてさらに活躍していきたいということになるんでしょうか?
そうですね。モデル業をやめたのも、いつも細くいなきゃ、鍛えていなきゃということが付きまとってくるから。今までは“中村アン”をキープするために、私自身も必死だったし、どこかお芝居に本腰が入っていなかったように感じます。最近、お芝居のときは、少し太っていたりとか、痩せていたりとかも人間っぽくていいなと思うようになっています。お酒も飲みますし、食べるときは食べます! 今は無理に体を作るというよりは、自分と向き合う時間がより増えた気がしています。
■中村アン
1987年9月17日生まれ。東京都出身。
TBSドラマ『グランメゾン東京』(19)、TBSドラマ『DCU~手錠を持ったダイバー~』(22)、映画『名も無き世界のエンドロール』(21)など多くの話題作に出演し、2022年の『DCU~手錠を持ったダイバー~』では第4回アジアコンテンツアワードの助演女優賞にノミネートされるなど、その演技力が日本国外からも評価されている。7月1日からは、東京・六本木俳優座劇場で上演される『笑ってもいい家』で舞台に初挑戦し、主演を務める。
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