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YouTuberって儲かるの? そこそこ稼ぐには? - MCN・ブレイカーのプロデューサーに聞いてみた

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YouTuberって儲かるの? そこそこ稼ぐには? - MCN・ブレイカーのプロデューサーに聞いてみた

●聞かれるのは"お金"のことばかり
動画共有サービス・YouTubeで、独自に作成した動画を投稿し続ける人の総称「YouTuber」。最近は「お金」や「炎上」の話題とセットで語られることが多く、あまり接する機会がない消極的視聴者はマイナスイメージを抱いている人が多いのではないか。

ただ、「YouTuber」を「クリエイター」として一人ひとり細かく見ていくと、人を惹きつける個性と才能に出会うこともでき、そのことに気づいている積極的視聴者も多いはず。編集部に読者から「YouTuberって儲かるの?」「YouTuberとしてそこそこ稼ぐにはどうしたら良いの?」という質問が届いた時、そんなことが頭に浮かんだ。

今回、この読者の疑問を解決すべく、マルチチャンネルネットワーク(MCN)としてYouTuberを抱える会社・ブレイカーに取材を申し込んだ。同社は、ドラマ制作や舞台公演なども行う劇団スカッシュ、難病と闘いながらメイク動画を投稿する詐欺メイクすうれろ、中国語圏に向けて日本のさまざまな情報を発信するRyuuu TV、ブラジル出身のインバウンドインフルエンサー・Aqui Pode、カナダから移住後の韓国でブレイクしたSimon&Martinaなど個性的で国際色豊かなクリエイターが名を連ねる。

○視聴者と向き合うことの大切さ

――本日はよろしくお願いします。まず、いきなり聞きますが、読者から「YouTuberって儲かるの?」「YouTuberとしてそこそこ稼ぐにはどうしたら良いの?」という質問が届いています。
これについては、どのようなお考えですか?

そこそこ稼ぐには……うーん……。いちばん大事なのは視聴者に向き合うことなんですよね。質問に対しての答えになっているか分からないんですが、きっと「そこそこ稼ぐにはどのようなコンテンツを取り上げればいいのか?」ということですよね。どちらかというと、「私はこういうものが好きだから世の中に発信したい」という気持ちの方が大切だと思います。

例えば、料理が好きで誰かに見てもらうためにYouTubeで料理の動画を上げたとします。すると、それに対していろいろな感想が寄せられるので、その一つひとつに対してどのように向き合うのかというのも重要です。動画越しではありますが、「目を見て話す」というか。例えばこうしてインタビューにお答えすると、電話越しではない互いの考えが直接伝わりますよね。
それは、動画においても同じで、僕が今まで見てきたYouTuberで成功してきた方々は、必ずと言っていいほど視聴者と同じ目線で話そうとする姿勢があります。そういう意味で、「視聴者と向き合う」というのは、質問にあった「そこそこ稼ぐ」にも繋がると思います。

――動画作りの理念をきちんと固めることが大事だと。企画面で何かポイントはありますか?

差別化は必要だと思っています。ただ、例えばメイク動画はそれぞれ投稿者の異なる「表情が持つ個性」がベースになっているので、ある意味でそれも差別化されたものであり、個性です。その個性を活かすようなトピックス作り、「強み」をどこに置くのかも大切なのではないでしょうか。

あとは更新頻度です。実はこれがいちばん難しいんですよ。
一定のクオリティを保ちつつ、更新ペースも安定させることは、すごく大変です。ニュースサイトで取り上げるトピックスの質と数が重要であることと同じ。ただ、ニュースサイトは集団での取り組みですが、多くのYouTuberは基本的に一人で動画を作って日々アップしています。投稿テーマを考える上では、それだけの頻度を保つことにも目を向けておかないとならないですね。

――更新がストップして登録者から心配の声が寄せられることも度々目にします。だからこそ、更新が途絶える理由をきちんと説明する方が多いんですね。

そうですね。やっぱり、「テーマを何にするのか」をじっくり考えておかないとうまくはいかないですね。
「面白くするためには」を常に考えてアンテナを張りつつ、自分の心に背くようなチャンネルになると続かない。それから、再生数が低くても「やり続ける」ハートの強さも必要だと思います。

○YouTuberは「世間的な人気」の指標が不明

――再生数はどのようなきっかけで爆発的に増えるんですか?

やはり定番はクリエイター同士のコラボレーションですね。ただ、それはYouTuber同士の人間関係で実現するものですね。

――御社が抱えているYouTuberでも、人気の方とのコラボを結構されていますよね。あれは、会社が繋いでいたりするものなんですか?

すべてYouTuber個人のネットワークですね。お互いの人間関係で成立しています。

――MCNに所属してれば、そういうメリットもあるのでしょうか?

それについては全く関係ないですね。
先ほど「視聴者の目線」と言いましたが、横のつながりでも「目線を合わせる」ということは重要だと思います。

――「稼ぐために」を追求していると、そういう繋がりも生まれないわけですね。「YouTuberは儲かる?」という質問はよく聞かれますか?

というか、それ以外がほとんどないですね(笑)。個人が気軽に始められるものですから、そういう疑問が出てくるのもしょうがないのかなとも思います。

テレビは決まった時間に番組が放送されて、そこでたくさん見掛けると「有名人」となります。YouTubeは自分で選択して、いつでも観られるものなので「世間的な人気」としての指標が明確ではないんですよね。なのでどうしても、質問がお金に向かってしまうのかなと思います。

――確かに。
分かりやすいのは再生数ですか?

そうとも言い切れないですね。YouTuberは、ある種「自称」のようなもので、誰でも動画さえ上げれば、その日からYouTuberになることができます。例えば多くのメディアは、扱うネタや情報を吟味されてますよね? これまではそこに出られると、世間から求められているということになります。しかしYouTuberにはそれが浸透してないから、みなさんどうやって話題に挙げればいいのか分からないってなってしまうのかな?と思ってます。

――最近では、ヒカキンさんをテレビ番組やCMで見掛けるようになりましたが、そういう人が増えていくということが世間的な認知度や人気度に。

そうですね。個人的にはYouTuberは「芸能の新しい概念」だと思っています。これまでの芸能は、まず事務所がスターの原石を発掘して、有名になるためのプランを事務所の方が考えて、育成していく。
ある意味、人の目に映る場所に出て行く人材を育てる場所が芸能事務所だったと思います。YouTuberではそれが全くなく、面白いと思ったものを上げ続けていたら、自然と有名になった人が多いです。これまでの露出手段以外で人気者になることができる手法が出来てしまったんです。最近では、YouTubeを活用する芸能の方々も増えてきましたよね。将来的に両者は1つになっていくと考えています。
●YouTuberの未来を楽観視できないワケ
――今年4月、ソニー生命の発表によると男子中学生の「将来なりたい職業」アンケートの3位にYouTuberが入りしました。この世間の流れは、どのように受けとめていらっしゃいますか?

今の子どもたちが置かれている環境では自然な流れだと思っていて、先ほどの「テレビで多く見掛ける人が有名人」と同じで、それがYouTubeに置き換わっただけだと思います。僕ら30代の幼いころはテレビが主体で世の中が動いていたので、その中の人気者である俳優やアイドル、歌手に憧れて育ちました。今の子どもたちは動画と接触する比率が高くなっているので、そういう結果になったんだと思います。

――憧れの職業に就くためには、オーディションを受けたり、資格を取得したり、大学や専門学校に通ったりなど、途中のステップがある程度決まっています。YouTuberを「職業」と考えると、まず何をやるべきか。そこがまだ不明瞭ですよね。たとえば、「顔出し」のリスクなどもきちんと理解して始めるべきなのではないかと。

それについては、さまざまな考えがあると思いますが、親も今の状況を理解しておくべきだとは思います。この前、街中でお母さんから「YouTubeは2時間までって言ったでしょ!」と怒られている子どもを見かけて驚きました。僕らの時代で、それはゲームでしたから(笑)。僕らの親の世代からすると、「ゲーム」という未知のものにわが子がハマっていたわけですから、それと同じですよね。

○YouTuberがMCNに入るメリットは?

――分かりやすいですね(笑)。そもそも、MCNというのはYouTuberに対してどのような役割を担っているのでしょうか。芸能事務所のようにマネージメントをやっているわけではないんですよね?

そもそもYouTuberは自分たちで動画の内容を考えて、撮影をして、編集してアップするところまでやっています。だから短絡的に「MCNに入りたい」という動機だけだと、なぜYouTubeとYouTuberの間に会社が入っている必要性が見えないので遺恨になってしまうのではないかと思います。これからのMCNの流れとしては「芸能事務所」の感覚が強くなると思います。人を集められるYouTuberは動画以外でもできることが広がりますよね? イベントや舞台、グッズを企画したり。「動画以外の世界を提供する」役割だと考えています。

――なるほど。そうすると、所属するメリットがありますね。

当社は「YouTuberであれば誰でもいい」という考えはなくて、「コンテンツを作れる人」を基準にできればと思っています。

――ということはスカウトに近いんですか? 広く募っているわけではないと。

そうですね。たくさんYouTuberを抱えれば会社としては良いと思うんですけど、あまりにたくさんの方を抱えてしまうと、動画の中身や動画以外の展開までは、なかなか個々細かく考えてあげることができません。そうすると、MCNとしての機能が破綻します。「何ができるのか」を明確にしてあげないと、MCNにいる意味はなくなってしまいます。われわれのネットワークに「入れる」のではなく、どちらかというと「入っていただく」イメージです。

――具体的にブレイカーとして加入を望むYouTuberはどのような人ですか?

個人的にはYouTuber以外の肩書を持てることが重要なんじゃないかと思っていて、たとえば、海外のYouTuberで日本をテーマにしていたら「ジャパンナビゲーター」と名乗ることもできる。その肩書を堂々と名乗れるようにしてあげるのが、われわれの仕事だと思うんです。

最近は動画の中で企業コラボがたくさん行われていると思うんですけど、そのクライアントとYouTuberを繋げる役割がMCNの最も知られている業務です。ただ、それだけだとお金のみのお付き合いになってしまう。僕はそういうのは好きではないですし、きちんと人と向き合っている人たちに対してお金だけでしか縛れないのであれば、それはどこかで歪んでしまうのではと思います。だからこそ、ブレイカーはYouTuber以外の肩書のためのお手伝いをさせていただきたいです。

○「好きなことで、生きていく」の本質

――御社のHPには、パブロ・ピカソの言葉「いかなる創造活動も、はじめは破壊活動だ」と書かれていました。つまりは、そういう業界の多少歪んだ構造も”破壊”していきたいと。

そうかもしれないですね。こうして取材を受けているのも、ある種で”破壊活動”なのかもしれません(笑)。「YouTuber=お金」としてしか見られていない状況は、なんとかしたいと思っています。視聴者に何かを残せていないと、結局この先、YouTuberは成り立たなくなるんじゃないかなと。YouTubeの枠組みから出ていくための努力というか、そういうテーマで動いている方とお仕事させてもらえたらうれしいです。

――YouTubeのキャンペーンで「好きなことで、生きていく」というキャッチコピーがありましたが、「好き放題やって儲ける」ではなく、好きなことを突き詰めていき、その先に何を見据えるのかというのが御社のお考えでしょうか。

そうですね。ただ、そこを目指せる状況が今の日本ではまだ整っていません。YouTuberという枠組みとしてでしか伝わっていないというか。だから、われわれおじさん世代が少しでも理解をして(笑)、「YouTuberはお金を儲けるためにやることではない」というのを伝えたい。実際に稼げているかといわれると、そうでもないと思いますよ。

――「YouTuberって儲かるの?」に対する答えにもなりますね。

あくまでもYouTubeはやりたいことを広げるきっかけなので、「お金儲けの手段」として始めると絶対にうまくいかない。

僕は好きなゲームがあって、3カ月に1回ぐらいのペースでそのゲームの動画を上げている方を観ているんですが、その方なんかは完全に趣味でやっていて、その内容に対して多くの支持を集めています。YouTubeをマネタイズの対象としてなんか考えていないはずです。

こういった理解が拡がってYouTuberの地位が向上していったら嬉しいですね。

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