池田エライザ、初の母親役で感じた“母性”と“不思議な感覚”「役がじわじわと体に染みていく」
●映画『おまえの罪を自白しろ』で母親役に挑戦
真保裕一氏による小説を実写化し、20日に劇場公開を迎えた映画『おまえの罪を自白しろ』。政治家一族の宇田清治郎(堤真一)の孫娘が誘拐されてしまい、犯人からの「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という要求に、清治郎の息子で議員秘書の晄司(中島健人)が家族の命を救うために挑んでいく。
今作で、誘拐された柚葉(佐藤恋和)の母で宇田家の長女・麻由美を演じた池田エライザ。女優のほかにもアーティスト、監督としても幅広く活躍する池田が、本作で女優としての新たな一面を見せている。インタビューでは、「じわじわと体に染みていくような感覚」だったという自身初の母親役についてのほか、今年からついてしまった“ある癖”を語ってくれた。
○■初めて脚本を読んだ瞬間から喪失感
――今回演じられたのは、誘拐された柚葉(佐藤恋和)の母・麻由美。母親役は初めてだったそうですね。
もっと“母親とは”という壁にぶち当たるかなと思っていたんですが、宇田家のお屋敷でみんなとおしゃべりして、柚葉と遊んでいるうちに宇田家になっていったという感覚の方が強かったです。
もちろん、産んだことがある人が持つ宇宙があるのかもしれないけれども、母性という感覚は性別問わずあると思うほど柚葉が愛おしかったし、初めて脚本を読んだ瞬間から、柚葉がいなくなった喪失感でつらかった。役がじわじわと体に染みていくような不思議な感覚でした。
――自転車に乗っているときに突き飛ばされるシーンの撮影では、カメラが回っていないときもずっと座り込んで役に入り込んでいたそうですね。
あのときは悲しくてしょうがなかった……次の日が早いとかだったら泣き止むんですけど、もう少し浸ってもいいのかなと。色んな虫に刺されながら、「それでももう立てない。立ちたくない。無理。もう本当に無理」という気持ちであの場所にいました。
それも水田伸生監督がそういう風に現場を作ってくださっていたんです。好きなだけ集中していいので、泣いているシーンはずっと泣いていました。山崎育三郎さんを驚かせてしまったし、中島健人くんは私が泣いてるシーンでは話しかけずにそっとしておいてくれて、とても気を使ってくれて。私は器用じゃないので、ご迷惑をおかけしてしまいました……。○■娘・柚葉を演じた佐藤恋和にメロメロ「衝撃的なかわいさで…」
――大物議員の娘を演じるにあたって、意識した部分はありますか?
人のことを許すことはできても、完全に忘れることは難しい。だから、麻由美が抱えてる幼少期からのブレない起爆点というか、麻由美が許せたけど忘れられなかったことってなんだろうというのは、たくさん考えました。
池田エライザとしての私はおしゃれ好きだし、それをお仕事にもできているし、個人を尊重してもらいやすい仕事ですけど、麻由美はいろんなことを諦めざるを得なかった。威張ってるようにご近所から思われてはいけない、そして、お父さんの顔を立てなきゃいけない、旦那の顔を立てなきゃいけない……そこには諦めがたくさんあったと思います。
そういう事実をリストアップして、どんどん堤さんを嫌いになってしまうようなことをいっぱい考えていました(笑)。
――現場でも堤さんとは、あえて距離を取ったりしていたんですか?
全然! ずっとみんなで喋ってました! めっちゃ仲良いです(笑)。みんな柚葉をかわいがってくれるから、私も一緒に遊んだり。とにかく柚葉が本当にかわいいんですよ~。自転車で一緒に歌うシーンでも、「お母さんお歌上手!」とか言ってくれて……。後ろから刺されたみたいな衝撃的なかわいさで、役のキャラクターが変わっちゃうくらい幸せでした
――柚葉のそういう言葉から自然と母性をくすぐられて役に入ることもできたんですね
本当のお母様に対してはおこがましいような気持ちもありながら、この子の未来を守らなきゃいけないなと思ったからこそ、理不尽にも耐えられたんだと思います。
麻由美は、逃げ出して自分の境遇を捨てて独り立ちしてもよかったのかもしれないけど、この子を守るためにも、この家族にすがっていたい気持ちはあったなと考えたり……。それぐらい麻由美にとって柚葉は尊くて小さくて無垢。
とても影響を受けていました。
――柚葉が麻由美の存在理由の大きな1つになっていたと。そんな柚葉を中心に現場では和気あいあいとされていたそうですね。
中島健人くんが柚葉を姫、プリンセスと呼んでいて、テレビのままでした(笑)。長男の中島歩さんは本当に長男っぽくて、寡黙だけど話すと付き合ってくれる。基本、私と中島くんがずっと喋っていて、そこに堤さんが入ってきてくれて歩さんが全体を聞いている。バランスがよくて、普通の家族みたいでした。
●今年からついてしまった“癖”を告白
○■俳優と芝居を優先する現場作りに感銘
――水田監督の現場作りにも感銘を受けたそうですね。
水田監督のお人柄の素晴らしさには、人として影響を受けました。俳優と芝居を優先して現場を作ってくれるし、本当にたくさん配慮してくださっているんです。監督という立場で全カット・全シーンに携わってるのに、1人の俳優にも配慮してくださる懐や思慮深さという部分にハッとさせられました。それは1人の役者としてもそうですし、社会人としても見習いたいなと。最近どこかハラスメントとか、そういう負の部分に意識や目が行きがちだけど、こうやってたくさん愛情の粒を人に配ることができる人もいて。そういう人のことを尊敬して成長していけたらいいなと思います。
――池田さんも映画監督をされるなど、作り手の一面もあります。
池田組も水田監督の現場に近い感じです。
俳優が芝居に集中しやすい環境を作るっていうのが、そもそも俳優が監督やる上での利点だと思うので、池田組もキャストは涼しい部屋で、団らんさせてもらって、制作サイドは早急に割りを作って気持ちが途切れないように、俳優ファーストで現場を動かしていくっていうのは、ものすごく凝っていた部分でした。
○■監督としても学びのあった現場「私も真似しようと」
――演者としての経験が“俳優ファースト”に大きく影響していたと。
監督としても、制作の都合とかを知られずにより集中した芝居が観てみたい、気持ちよく芝居がしてほしいなっていう思いがあります。だからこそ、それをさせてくれた水田監督に本当に頭が上がらないというか……。技術部はすごい大変だったと思うし、俳優ファーストに見せてくれていただけで、本当に各所に気を使ってくれていたと思います。でも本当にやりやすかったので、私も真似しようと思いました(笑)。
――監督としても勉強になった現場だったんですね。ほかに水田監督のやり方で取り入れたいと思った部分はありますか?
演出をしていただく中で、気付いたのは「こうしなさい!」という演出はないんですが、意図だけ確認されるときがあったんです。
「これってどういうつもりで言ってる?」と聞かれて、「自分の中ではこういうつもりで~」と話すと、「オッケー! わかった」とそれを汲んで撮影してくれる。演じる側も、なんでこの顔になったのかという意図を自分で言いながらまとめることができるし、この聞き方はすごくかっこいいなと思いました。
人間って2つの感情が混ざってる時があると思いますが、水田さんはそれも許してくれる。映画として分かりやすくするなら、麻由美はきっとここでホッとした顔をするのかなと思うけど、でも麻由美を演じている私からすると、「それは変でしょ」「人間はそんな簡単じゃないよ」と思うこともあって。それを認めて、おもしろがってくれるのが水田監督のすごいところだなと。いち俳優として以上に、麻由美を1人の母親として尊重してくれているような、そんな感覚になりました。
○■ネットでたくさん買ってしまう“ストック癖”を告白
――では最後に今作のタイトルにちなんで、今年の出来事で“自白”したいことはありますか?
もちろん環境に配慮したい、サステナブルでいたいと思うのに、今年はストック癖がすごくて……物をいっぱい買っちゃうんです(笑)。柔軟剤を3つまとめて買ったり、先日も充電器を5個も買ってしまって。自分でもなんで? と思うんですけど、多分外に出るのが面倒くさくなっているんですよ。良くない癖がついてしまったので反省しています……。
――かわいらしいエピソードをありがとうございます。ストック癖は以前からではなく、今年からなんですね。
そうなんです。もともとは節約好きなので、あるものを使い終わってから買うタイプ。なんならシャンプーに水入れちゃうよ~? みたいな人だったのに、なぜか置いときたくなっちゃって(笑)。もしかしたら、ストック癖というよりオンラインショッピング癖かも。
――なんでもネットで簡単に注文できてしまいますもんね!
そうなんです。生活用品から雑貨や猫の皿とかも! ネットの方がかわいいものがあったりするから、あれも買ってこれも買ってと(笑)。それなのにクーポンを使ったりして、ちょっとケチるんですよ! 「なんなんだよ! ケチんなよ!」と思いながら、最近は自分自身にちょっと戸惑ってます。
■池田エライザ
1996年4月16日生まれ。福岡県出身。ドラマ『ルームロンダリング』(MBS)や『DORONJO / ドロンジョ』(WOWOW)、映画『一礼して、キス』(17)、『真夜中乙女戦争』(22)、『ハウ』(22)などに出演し、女優として活躍。2020年には『夏、至るころ』で映画監督デビューを果たし、2021年からはELAIZAとして音楽活動をスタートするなど、活動の幅を広げている。スタイリスト: Shohei Kashima(W) ヘアメイク: 豊田健治 (ワンピース¥23,100 JOSE△MOON ピアス¥15,400 ripsalis その他スタイリスト私物)