オリジナル映画の担い手たち 第2回 綾瀬はるかに見惚れて10年…映画プロデューサーの執念と奇跡
漫画や小説をもとに実写化される「原作モノ」が増える中、独自に生み出す世界観で「絶対に観客の心をつかむ」という揺るぎのない気概をもって、映画制作に挑む人々を取材する連載「オリジナルの担い手たち」。第2回は、綾瀬はるかと坂口健太郎初共演の映画『今夜、ロマンス劇場で』(公開中)の稲葉直人プロデューサーのあふれ出る映画愛に触れる。
本作は、誰からも忘れ去られたモノクロ映画の中から現実世界に飛び出した美雪(綾瀬はるか)と、映画監督を夢見ながらスクリーンの中の美雪に恋をしていた健司(坂口健太郎)の切ない恋物語を描く。この作品の萌芽はまさに映画的で、今から10年前まで遡る。アシスタントプロデューサー時代の稲葉氏は綾瀬と出会ったことで、「もっと映画館でしか楽しむことのできないオリジナルの物語があってもよいのではないか」という大いなる野望を抱いた。
『のだめカンタービレ』『テルマエ・ロマエ』シリーズの武内英樹監督、『信長協奏曲』の脚本家・宇山佳佑氏。稲葉氏と共に原作モノを手掛けた同志たちが再集結し、完全オリジナル脚本による映画が完成した。そこには情熱のみならず、原作含めた映画作りの経験、名作への尊敬の念と豊富な知識が惜しみなく注がれていた。