紫吹淳、舞台に感じる魅力は? 先入観より"何をやるかわからない"女優に
●『バーン・ザ・フロア』の迫力は「喉が渇く」ほど
1999年の初演以来、世界トップレベルのダンサーたちによるパフォーマンスで、30カ国以上で上演されてきた『バーン・ザ・フロア』。競技ダンス界でトップクラスのダンサーを集めたダンスカンパニーによる公演は日本でも熱狂的に迎えられ、今回が10回目の節目となる。東京公演は東急シアターオーブにて5月17日〜21日、大阪公演はフェスティバルホールにて25日〜28日に行われる予定だ。
今回、この来日公演のスペシャルサポーターを務めるのが、女優の紫吹淳。自身も幼い頃からダンスに親しみ、宝塚のトップスター、女優として多くのステージで活躍してきた。今回はそんな紫吹の目からみた同舞台の魅力や、生の舞台に立つこと、作り上げることの面白さについて、話を聞いた。
○ついポージングに目が
――『バーン・ザ・フロア』の会見で実際のパフォーマンスを見られていましたが、感想はいかがでしたか?
圧巻、でした。口が開いちゃいましたし、喉も渇いて。
あんなに間近で見たのは初めてだったので迫力がものすごくて、大きな舞台ならもっとダイナミックになるんだろうなと思いました。最高峰のキャストが集まったからこそ、なせる技なのだと思います。
――紫吹さんもずっと、ダンスをされていると思うのですが、どんなところに魅力を感じてるのでしょうか?
幼い頃から生活の一部で、考えたことすらなかったけど、やはり踊る楽しさに魅了されたのだと思います。全神経にエネルギーがいく感覚や、みなさまから喝采をいただける感覚は代えがたいですね。
――ご自身もダンスをされているからこそ、観ていても「こういうところに注目しちゃう」というポイントはありますか?
ポージングに目が行くことが多いです。宝塚では特に、足を長く見せるために1歩前に出すんです。だからポージングが美しいと、つい見てしまいますね。今回は「あの動きからあの動きへ行った!? 身体能力がすごい!」という視点もありました。
会見でリフトもしていただきましたが、なんとも言えない安心感で。私も長いこと男役としてリフトをする側だったので、大変さがわかるのですが、”ひょい”という感じで抱き上げられて、男性の力ってすごいと思いました。
○男性にも女性にも違った見方ができる
――様々なステージに立たれている、紫吹さん自身のターニングポイントとなった舞台はありますか?
宝塚を辞めてから、初めて女優として出演したミュージカル『ボーイ・フロム・オズ』です。ライザ・ミネリ役として、ボブ・フォッシーの振付を行いました。それまでは”男”だったので、女優として生まれたてで、大変でしたけど、初めて細いヒールで踊るようになったので、感慨深いです。振付のジョーイ・マクニーリーに「あ、そうだあなたはmanだった」などといわれながら特訓されました(笑)。
――そうなると、男性を観た時に「もっとこういうポーズをとればいいのに」とか思うこともありそうです。
最初の頃は、つい男性を見て心の中でダメ出しをしてしまうこともありました(笑)。
今はなくなりましたけど、逆に、両方楽しめます。男性でも女性でも「こういう表現ができるんだ」と、違った見方ができるのかもしれません。
●バラエティ出演も場数を踏んで
○舞台は「エネルギー交換」
――最近はバラエティでも活躍されていて、ますます活動が広がっていますよね。
最初はバラエティも慣れなかったんですけど、場数を踏みました(笑)。
――バレエから宝塚、男役から女優、そしてバラエティと次々活動の場を広げていますがやっぱりいつも新しいことをしたいという思いは持たれているんですか?
そうですね。「紫吹淳って、こうだよね」というよりも、「何をやるかわからないよね」というスタンスでやっていきたいんです。
――じゃあ、『バーン・ザ・フロア』出演とかも。
10年若かったら、即答で「出たいです」と言うのですが(笑)。
やっぱり、良いものを見て、良い時間を過ごすって、美容にも健康にも良いんだと思います。特にライブの良さは、生で感じられること。お客様にとっても演者にとっても全く同じ公演とはなりません。生ならではの、ご褒美が付いて来ます。
私はよく舞台を”エネルギー交換”と言っていてこちらからお客様に与えて、お客様からもまたパワーもらえていると感じます。「人は人でしか、癒やせない」と聞いたことがあって、お医者様のファンの方にも「あなたたちは、私たちが治せないものも治せるのよ」と言われたことがあるんです。
○タカラジェンヌは強靭?
――これまでに、そのエネルギーを強く感じた経験はありますか?
『宝塚 雪・月・花/サンライズ・タカラヅカ』でベルリン公演を行った時は、エネルギーがすごかったです。海外選抜隊のてっぺんでステージをやり遂げることができて、達成感がありました。
海外のお客様はやはり、イエス・ノーがはっきりしています。面白くなかったら「Boo」と言いますし、面白かったら「ブラボー」と言う。日本ではあまり味わえない空気でした。
日本には「舞台は静かに観るべき」という風習があると思うのですが、最近はだいぶアクティブになってきたのかな。演者も観客の空気に引っ張られるところがありますし、昔よりも舞台に接する機会があって、若い方にも広がっているのは素敵なことだと思います。
――紫吹さんは、ジャニーズの方の出ている舞台にも多く出演されていますし、色々な機会を感じられていそうですね。
もう、母親役をたくさんやっていて、エアーで子供を5人くらい産んでいます(笑)。最初は「ジャニーズも宝塚っぽいのかな?」と思っていたけど、とんでもない。
「あなたたちどうなってるの!?」というくらい、ゼンマイ仕掛け人形みたいに動く(笑)。覚えるのもすごく速いですし、上の子たちが下の子たちの面倒を見ている姿にも感動しました。舞台では中山優馬くん、テレビでは真田佑馬くんのお母さん役をやったりしましたが、髙橋海人くんは2回母親役をやっているので、少し贔屓しています(笑)。
――本当に、活動の幅が広いですね。
ジャンル問わずですね(笑)。先日はふぉ~ゆ~の皆さんと舞台もやって、『SHOCK』も観させていただいたんですけど、もう「すごいな。これだけ続いている舞台は、さすがだな」と思いました。今回の『バーン・ザ・フロア』でも、「体力勝負だな」と思います。
私も年齢の割に元気なのは、青春という時代を宝塚で鍛えられたから。
『DREAM BOYS』でご一緒した鳳蘭さんも、上級生なんですけど、お若い! 鳳さんは、自分よりもずいぶん若い方から「どんなケアをしているんですか?」と真剣に聞かれたそうなんですけど、「何もしてないわね」と言っていました。やっぱり、タカラジェンヌって強靭なのかもしれません。同期の子達も、ずっと元気です。
――同期の方とは、やはりずっとつながっているものですか?
結婚して出産して、離婚した人もいるけど、一番の青春時代を一緒に過ごしてきた、同じ釜の飯を食べた仲間です。学校の2年間でできた団結力がありますね。私は15歳で一番年下だったので、マネージャーの”ばあや”に出会う前に、同期に甘やかされていました(笑)。
――同期でもみなさん年齢が違うんですね。
そうなんです。先ほど話に出た海人くんとは、彼が15歳の時に出会ったんですけど、彼の姿を見ながら「私もこうだったんだろうな」と思いました(笑)。でも私が感心したのは、海人くんが「演技について何もわからないから、教えてください」と言ってきたこと。 私は15歳の時にそんなことを考えたこともなかったので、その貪欲な気持ちがすごいなと思いました。今はもうすごく立派になっていて、男の子って本当に成長が早いですね。
――そうやって、様々な関わりの中で舞台を作り上げる楽しさを、たくさん経験されているんですね。
世の中に全くないものをイチから作る難しさや、世に出たときの達成感、終わるときの切なさを繰り返してきました。だから、今回サポーターとして応援している『バーン・ザ・フロア』のダンサーの人たちも、もう、身内のような気分です。リフトもしていただきましたし(笑)。
――改めて、『バーン・ザ・フロア』おすすめポイントをおしえて下さい。
パッションがすごいんです。男女とか関係なく魂がぶつかり合って、すごいエネルギーを貰って受け取れる側にいるって最高なことだと思います。ぜひ見て笑顔になって、心踊りながら劇場から帰っていただけると思います。
■紫吹淳宝塚歌劇団出身。初舞台当初から抜群のスタイルとダンステクニックで注目を集め、2000年のドイツ・ベルリン公演では異例の2番手で主演を務める。2001年、月組トップに就任。2004年『薔薇の封印』を最後に退団。退団後は女優宣言会見を行い、女優デビュー。舞台を中心にテレビドラマ、CM、最近はバラエティ番組でも活躍。主な出演舞台は、『王様と私』『タイタニック』『風と共に去りぬ』『グッバイ・ガール』『ドリーム・ボーイ』など。昨年は谷崎潤一郎の『細雪』で、三女・雪子役を演じた。