南沢奈央が語るネットとの向き合い方「言葉はちゃんと選ぶように」
●7月から舞台に出演する南沢奈央
今年7月に東京、8月に大阪で上演される舞台『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~』。この舞台に出演する女優・南沢奈央に同舞台のことはもちろん、ネットとの向き合い方やおすすめの1冊などを聞いた。
○「今作はシリアスでヘビーな内容」
――南沢さんは舞台『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~』に出演されますが、まずオファーを受けたときの感想をお聞かせください。
演出家のG2さんとまたご一緒できることがうれしかったです。11年に『8人の女たち』でご一緒して、G2さんの世界観が好きになったんです。今作はシリアスでヘビーな内容ですが、それをどうやって見せてくんだろうと今から楽しみですね。
――『8人の女たち』でG2さんの演出を受けた中で、印象的だったことはありますか?
「こういう感情で」と言われるのではなく、「針を刺すような感じで」とか「壁を押すような感じで言って」という表現をされていましたね。ドラマや映画といった映像の世界では絶対されないんですよ。
「舞台は1番に声、2に立ち姿、3に表情」と言われてたのも印象的です。声のトーンだけでなく、出し方や圧、どこに狙っていくかまでこだわるのが、舞台なんだなと教えていただきました。
――南沢さんは近年、舞台に毎年出演されています。映像作品と比べ、舞台ならではの面白さはどこにあると思いますか?
やっぱりお客さんのリアクションがあることですね。見てくれる人が目の前にいて、笑い声だったり泣いたりとか、リアクションが温度で伝わるので、それが面白い部分でもあるし、緊張しますよね。
○離婚調停中の役を演じる
ヤズミンを演じる南沢奈央
――今作で南沢さんが演じるヤズミンは、主人公エリオットの従兄弟で彼の良き理解者であり、離婚調停中という大学非常勤講師。ヤズミンに対する印象をお聞かせください。
コカイン中毒に悩まされてる人物が多い設定の中、唯一中毒者ではない、ジャンキーではないという役です。
だから、感覚的にはお客さんに一番近い精神状態ではあると思いつつ、彼女なりの人生の悩みで精神的に乱れることもあるだろうから、そこをちゃんと説得力もって演じられたらいいなと思います。離婚調停中という役ですけど、まだ経験したことがないことなので、想像だけでは補えないので、色々勉強しないといけないなと。
『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~』2008年にトニー賞4部門を受賞したブロードウェイミュージカル「イン・ザ・ハイツ」で脚本を担当したキアラ・アレグリア・ヒュディスの作で、2012年のピューリッツァー賞戯曲部門賞を受賞。 本作は、なぜ人は薬物に救いを求めてしまったのか、彼らが求めていたものが本当は何なのか、そこから立ち直った後、人々がどうやって生きていくのか迷い悩む姿を描く。コカインとインターネットという二つの媒介を通し、対比させることによって、人と人とが直に触れあう関係や結ばれた絆が、いかに人生にとって大切なものかをくっきりと浮かび上がらせる。 翻訳・演出を手がけるのは、G2。出演には、自身初となる翻訳現代劇の舞台に挑戦する尾上右近。南沢奈央は主人公エリオットの従兄弟で彼の良き理解者であり、離婚調停中という大学非常勤講師・ヤズミンを演じる。
公演日程:7月6日~7月22日 東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA、8月4日大阪・サンケイホールブリーゼ
●読書家・南沢奈央のおすすめの1冊は
○ネットには「若干依存している方なのかな」
――この作品はネットでの人間関係やネット社会が1つのテーマとなっています。南沢さんのネットとの向き合い方についてもお教えください。
本読むのも好きなんですが、調べ物はかなりネットになりましたね。今回のテーマにもなってますが、若干依存している方なのかなと。やっぱり電車に乗っていても、今までは本を読んでいたのが、ついネットニュース見たりとか。スマホなしで生活するのが考えられないくらいに、いつの間にかなっていました。怖いですけど便利ですからね(笑)。ただ、その情報の中でも正しい、正しくないはあるので、ちゃんと見極めることが必要だと思います。
――インスタグラムもやられてますが、ネット上で発信するうえで意識してることはありますか?
ネットは一回発信してしまうと、すごいスピードで広がっていくので、言葉はちゃんと選ぶように、あまりササっとは載せないように意識してます。すごい考えて考えて、インスタにアップするのに1日かかったりとかもありますね(笑)。――本の情報サイトで『南沢奈央の読書日記』も連載されてますよね。
そうですね。『読書日記』もネットがなければできなかったお仕事です。今まで私に興味のなかった方にふと見ていただいて、ファンになってくださったりもあるので、世界が広がったなと思います。テレビでは出せてない部分を発信して知ってもらえたらなと。『読書日記』はネットが進む一方で、活字離れも進むのは寂しいなという思いがあるので、今後も伝えていきたいです。
――最近読まれた中で、おすすめの作品はありますか?
西加奈子さんの『おまじない』という短編集がめちゃくちゃ良かったですね。西さんはもともと好きなんですけど、長編を多く書かれていて、久しぶりの短編集なんです。西さんは短編が苦手らしいのですが、あえて短編に挑戦したとおっしゃっていて、その心意気もすごく良いなと。内容も短編なんですが、テーマも統一されていて、主人公の女性におじさんが魔法の言葉をあげるというストーリーなんです。本当に西さんが書かれる言葉が素敵で、私もおじさんの言葉に励まされました(笑)。
○プロレスとお芝居の共演点
――「西さんの心意気も良いな」と感じたとのことですが、そういった作品だけではない、裏のストーリーも楽しむというのは、南沢さんがプロレス好きであることと関係してるんですかね。
確かにプロレスなんて特にそうですよね。目の前で見れるのは戦いのみだけど、その裏にはドラマがあって、それを知るとより面白くなるという。
お芝居を作っていく中でも、台本に書かれていない裏の部分をどれだけ作り手がしっかり考えて決めていけるかが重要だと思っています。そういった意味では、小説やプロレスは自分の仕事とリンクする点が多いと思いますね。
――最後に出演される舞台『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』を通じて、どういったことを伝えたいかお聞かせください。
設定的には理解しにくい部分もありますが、人生でなにかに悩むとか、依存してしまうことは誰しもあると思います。なので、共感してもらえるところはあると思うし、人は人生に何を求めていくのか、私は人間同士の絆が一番大事かなと思うので、そのあたりの人間ドラマが伝わればいいなと思っています。
南沢奈央1990年6月15日生まれ。埼玉県出身。身長164センチ。
O型。『赤い糸』(08年・フジテレビ系)、『高校入試』(12年・フジテレビ系)など多数の作品に出演。また、J-WAVE『TOPPAN FUTURISM』(毎週日曜 21:00~)のナビゲーターなどを務める他、WEBにて『南沢奈央の読書日記』が連載中。