チョコプラ、ブレイクも冷静「疑いながら」 芸人の浮き沈みを見て学習
●ものまねでのブレイクは予想外
2018年ブレイクを果たしたチョコレートプラネットが、3月15日の大阪・YES THEATERでの公演を皮切りに、全国ツアー「CHOCOLATE PLANET HOUSE vol.1 LIVE TOUR 2019」を開催する。昨年初めて全国ツアーを開催したが、今年は大阪、岡山、愛知、福岡、北海道、宮城、東京と全国7都市に笑いを届ける。昨年は、ものまねやYouTubeで注目を集めた2人だが、その基本には実力派コント師としての熱い思いがあり、そのすべてを全国ツアーに投入する。文字通り全国区のお笑い芸人として飛躍したチョコレートプラネットに今の心境を聞いた。
――いきなり余談ですが、ZOZOの前澤友作社長の“100人に100万円”をプレゼントするお年玉企画に乗っかった“100人に100円”お年玉は、当選者にどうやって送金するのでしょうか?
長田庄平:現金書留で全部送ろうと思っていて、向こう次第で書留か振り込みかになりますが、手数料入れたら3万円は超えそうです(笑)
――すぐネットニュースになっていましたが、そこも含めて、ブレイクの証ですよね。そこはどう受け止めていますか?
長田:うれしいのですが、戸惑いも半分くらいあります。ここまできているけれど、ここからどうしよう、その両方がありますね。
松尾駿:きっとこれはいつかなくなるというか、意外に冷静です。
そういう人たちをいっぱい見てきているんで。
長田:どこまで登れるのか、それともここから下がるのか、その辺の実感がまだないですね。
松尾:ずっと疑いながらやっています(笑)
長田:夢うつつですね。
松尾:それこそIKKOさんのものまねも、言い方悪いけれど、ここまでもつとは思っていなくて、ありがたいなと思いながらやっています。
――IKKOさんのものまねって、見つけた!って感じでしたか?
松尾:似てるなあと思ってはいましたが、ものまね番組に出させていただくにあたって、何かしなくちゃいけなかったんです。
――追い込まれて?
松尾:そうですね。何かありますか? で始まって、これでいけるとはまったく思っていなかった。とりあえずその時の番組がなんとかなればいいなあというくらいで、まさか、ここまでがっつりやるとは思っていなかったですね。
――昨年末の「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」では、石橋貴明さんがわかっているのに笑っちゃうと言われていましたよね。
松尾:そうなんですよね。ほぼ力技でというか、ご本人のパワーなんです。そもそもIKKOさんの時点で「どんだけー!」って言うとわかっていても、笑っちゃうじゃないですか。IKKOさんが面白いので、それが大前提だとは思いますね。
――その一方で長田さんは和泉元彌さんのものまねがあり、番組でご本人とも対面もされて、かなり似ていると評判でもあります。
長田:そうなんですよね。でも、自分でもものまねのクオリティーで勝負しようとかいうことではなく、単純に顔が似ているので始まった。
狂言はたまたま、昔ちょっとだけ習ったことがありましたが、基本的には流れで偶然的なもの。完全に予想外で、まさかここまで広がるとは思っていなかったですね。
――そのブームの中で、今回の単独ライブのツアーですね。松尾さんが自分たちはものまね芸人じゃないぞ! とコメントを出されていて、やはりコントを知ってほしいですよね。
長田:昔から僕たちのことを知ってくれている人は本来の僕たちの姿を知っているので、しっかりとしたコントもやっています。ものまねで入った人たちには、ネタもちゃんと面白いものをやっているところを見てほしいですね。
松尾:ちゃんとコントをずっとやってきたので、いまやっていることはおまけじゃないですが、楽しみながらやっている感じです。本業じゃないというか、ものまねをやっている自分たちを含めてコントをやっていると思っているので、これで頑張っていくぜ! じゃなくて、ものまねで人前に出て行くこと自体が、大きなコントだと。
長田:TT兄弟もそうで、全部コントのキャラクターを演じているだけなんですよね。
――TT兄弟は、いまや映画のイベントに呼ばれるまでになりました。
長田:まさかですよね、本当に(笑)。やってみるもんです、なんでも。『有吉の壁』で、ほんの10分くらいで考えたネタですが、それがたまたまバズって。
松尾:いままでって、すごく考えてやっていることが多かったけれど、でも結局、考えてやっていたことよりも、思ってもいないところでババって広まっていって、軽く考えたものがどんどん乗っかっていってくれる。いまはすごくありがたい状況ですね。何をやっても乗っていけるので。
長田:うまくハマッてくれることはありがたいのですが、逆に怖くもあるんですよ、わからないから。いまはいいですが、伝わらなくなってくるんだろうなとも思うので、次はそこをどうしようかなと思った時に、軸であるコントはしっかりやっていこうかと。いまは宝くじに当たったような感じでものまねやTT兄弟はやっているので。
松尾:ボーナスですね完全に。
――ツアーでは、どういうコントになりそうですか?
長田:まだ内容は決まってないんです。いまからつめていく感じですが、ばかばかしい、僕ららしいくだらないコントを多めでやろうかなと思っていますね。もちろん、小道具もありますし。
松尾:もしかしたら、全編IKKOさんが出てくるコントもあるかもしれないですが(笑)
長田:それはないわ。
地獄でしょ(笑)
――小道具ももちろん、架空のシンガー、九城伸明が出てくる当て字カラオケのコントみたいなネタも楽しみですが、ネタはどう作っているのですか?
長田:ネタは僕が作っているのですが、あれはカラオケ行った時に思いついたネタですね。ベースのネタを組み合わせて、いろいろ決めて行く。
――ボケとツッコミが逆の場合もありますよね?
松尾:決めてないんですよ。
長田:ネタを見て、どっちがボケか決めるみたいな。
――そのキャラクター性もありますよね。マインドスキャナーみたいな人物は、長田さんが適任みたいな。
松尾:ああいう人、いるじゃないですか、なんでもそれっぽく言う人。そういう人を長田さんが演じると面白そうだなあって言って、後はお任せ。
台本を書くのは長田さんなので。
長田:うさんくさいキャラクターは、だいたい僕ですね(笑)。
松尾:だからネタ合わせもあんまりしない。
長田:枠だけ決める感じですね。
――ノリを重視していますか?
長田:もともと稽古が得意じゃないというか、面倒くさがりなのでノリでやることが多いですね。それがいいほうに転ぶこともあれば、悪いほうに転ぶこともあります。
松尾:飽きちゃうんですよね。
長田:ネタによっては、鮮度が大事なんですよね。あんまりやりすぎると面白くなくなるということもあるので、それで稽古はしたくないなと。
――単独ツアーの演目そのものは同じですか?
長田:同じですが、ちょっとずつ変わっていくこともある。僕らは飽きてくると、本当にネタが変わるので。
松尾:大阪で最初にやったネタが、最後に東京でまったく別なものになっていることもあり得ます。
●芸人たちから学んだ“成功のカギ”
――ところで、ブレイクして変わったことはありますか?
長田:テレビ局の人や会社の人が、すごく寄って来て話しかけてくるようになりましたね。大人たちが(笑)。
松尾:あれ? それほど話したことないのにタメ口だぞ、みたいなこととか(笑)。
長田:でも信用しすぎてはいないですね。これだけ芸歴を重ねてきているので、頭を冷静に判断しないと、経験上、わかるので。
――たしかに「キングオブコント」も、実は1回目から出ていますからね。
長田:そうなんですよ。ずっと中途半端なところにいて、それはある意味よかったのかもしれないですけれど。客観的に先輩も後輩も、浮き沈みを真横で見ている環境にいたので。
松尾:あの人はバッと行ったけれど、仕事がどんどん減っているのは、ああいうことかなあとか、そういうことを冷静に見ていました。だから、自分たちの状況をそこまで喜んでいないというか、いつか落ち着くことですし。みんなテレビにバーッて出た人たちは、六本木とかに飲みに行って遊んでいたなあ。だいたいそういう人たちは落ちて行ったなあと、そうはなるまいと。
長田:売れている時にあまり動いていない人は、落ちて行っている感じがしますね。逆に売れていた時にいろいろと動いた人は、残っているなあという感じがする。だから、ライブは絶対に必要だと思う。
松尾:あれは嫌だこれは嫌だとよく文句を言っている人を見ていて、なんでこの人、文句言っているのかなと思っていた人はいなくなっているので、だから僕らは求められたことは必ずやろうと。
長田:忙しくなると単独ライブをやらなくなる人も多いのですが、そこをおろそかにすると下がってきたときに本当に何もなくなっちゃう感じがするので。
松尾:下がってきた時に急にライブやりたいと言っても、それじゃもう遅いだろうという(笑)。
――たしかにバナナマンさんなど、毎年単独ライブやっていますよね。
長田:さまぁ~ずさん、バカリズムさん、千鳥さん、めちゃくちゃ忙しいと思いますが、やっています。いまも出続けている理由には、そういうこともあると思いますね。――先ほどの売れている時に動くという話で、単独ライブ以外に何か考えていますか?
長田:YouTubeチャンネルを持っていて、テレビやライブではできないようなことをそこで魅せられているので、僕は全部つながればいいなあと思っていて、テレビやライブ、ネット、SNS、お客さんはバラバラですけれど、そこを統一して、どこでもお客さんを集められるようにしたいですね。テレビを観ていたお客さんがライブに来てくれるためには、YouTubeのネタを見て面白いと思って、劇場に来てくれるような、そういうシステムを作れればいいなと。
――お二人はネットとの親和性が高い上に、使い方が上手ですよね。「U.S.A.」の替え歌も流行りました。
長田:ノリですけどね。自分たちでコント職人だって、実はあんまり思っていなくて、いろいろできたらいいなあと思っているだけなんです。何に特化したらいいというわけではない。やれることは全部やる感じです。
――素人目線では「キングオブコント」準優勝の一方で、ものまねで大人気みたいになって悔しい、みたいな構図を思い描いていましたが、ぜんぜん違いましたね。
松尾:そこまで、です(笑)。さっきも言いましたが、練習とかするほうでもないんで。ただ、面白いと思っているからやっている。僕らが一番面白いと思うものが単独ライブだと思っているので、ものまねなどは、いろいろなものにあわせてノリでやっているものですけど、ライブは楽しい。
長田:テレビが作り出すイメージというものが、みなさんのなかにいろいろとあると思うので、そこをどういろいろなところに変換していけるかということが1個の課題ですね。たとえばものまねで大食いしている姿を見ていて僕らの単独ライブを観に行こうという人は少ないと思うんですよ。でも、それで気になって僕らのことを調べ、YouTubeチャンネルのネタを観て、ネタも面白いと思って来てもらう、そういうシステムですね。
――戦略的ですが、自然に回しているところも人気の秘密かもしれないですね。
長田:もうけっこうSNSで連動感出している奴はいて、時代を見て行かないとお笑いも厳しいなとは思いますね、いまは。だから、アンテナは常に張っています。
●今後の野望は!? 長田は本気で月を狙う
――次のステージは?
松尾:僕は『くいしん坊!万才』をコンビでやりたい。あれ最高じゃないですか。絶対、食材送ってもらえるし、食うに困らない。お父さんおいしいですねって言うと、毎年ブリとか送ってくれるに決まっている(笑)。キッコーマンなのでお醤油にも困らないと思うので、だから、IKKOさんとかばかばかしいことをしながらも、王道のタレントさんがやっていることを一発やってみたいなと思っています。冠番組を持つのもそうですけど、芸人ではなく、芸能人がやるようなことをやってみたいですね。最終形で。
長田:夢はテレビでユニットコントの番組ができたらいいね、とは話しています。シソンヌとユニットコントのライブもやっていますが、いまはコント番組が本当にできないので、一個夢としてどっかできたらなと。NetflixやAmazonもあるので、いろいろチャレンジしたいです。
――お笑い以外ではいかがですか?
長田:僕は月に行きたいですね。前澤さんと。
松尾:それを僕は剛力さんと下で見ていたいですね。
長田:本当に昔から宇宙に行きたかったんですよ。宇宙に行きたくて、この世界に入ったのは本当で。
松尾:チョコレートプラネットの、プラネットなんです。
――そうでしたか! チョコレートはどこから?
長田:そこは関係ないです。松尾が考えたので。
松尾:何か単語がいるだろうくらいの感じですね。
長田:一番の可能性として、月に行ける一番の職業は、芸人かなと思ったんですね。行くための。ひょっとしして続けていたら、宇宙が身近になった時にロケなどの企画で行けるのでは? というのと、金銭面でも自分のスキルで稼げるって芸人かなと思ったので。
松尾:僕は飛行機も怖いので、宇宙とか絶対ダメですね。怖くて。剛力さんと下から見ています。
――そのためにも単独ライブが大成功を収めないといけないですね!
長田:そうですね。僕らのことを初めて見る人もすごく楽しめる、そういうネタを考えていきたいですし、いろいろとごちゃまぜにしたいので、見に来てほしいと思います。
松尾:何本かの中で、お気に入りのネタが1本はあると思うんです。ぜひ見に来てほしいですね。
■プロフィール
チョコレートプラネット
長田庄平(おさだ しょうへい)と松尾駿(まつお しゅん)によるお笑いコンビ。長田は1980年1月28日生まれ、京都府出身。松尾は1982年8月18日生まれ、神奈川県出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。長田が製作するオリジナルの小道具や衣装を使った演劇的なコントを得意とし、「キングオブコント2014」で準優勝、また、漫才でも「M-1グランプリ2018」で準々決勝に進出した実力派。2018年は松尾がIKKO、長田が和泉元彌のものまねをテレビ番組でたびたび披露する機会があり、一躍ブレイク芸人の仲間入りを果たす。松尾の結婚披露宴で長田が号泣するなどコンビ仲がいいことも知られている。
■著者プロフィール
鴇田崇
映画&ディズニー・パークスを追うフリーライター。年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートをひたすら取材しまくる。ジョン・ラセター、アラン・メンケン、キャスリーン・ケネディ、バイロン・ハワード、ティム・バートンなど、ディズニー映画関連人物のインタビュー経験も豊富。世界のディズニー・パークスでは東京だけでなく、アナハイムも偏愛している。instagram→@takashi.tokita_tokyo