オードリーが語る“代表作”『オールナイトニッポン』への想い
●10年前と現在の違いとは
お笑いコンビ・オードリーの若林正恭と春日俊彰がパーソナリティを務めるニッポン放送『オードリーのオールナイトニッポン』(毎週土曜 25:00~)が、2018年10月で放送10年目に突入。
この連載では、番組に携わる構成作家のチェ・ひろし氏、奥田泰氏、藤井青銅氏、ディレクターの石井玄氏、そしてパーソナリティのオードリーにインタビューをする他、番組密着やイベントレポートも行う。第5回は、オードリーの若林正恭と春日俊彰にインタビューを実施した。
○■若林正恭「振り返れば10年という感じです」
――まず、「オールナイトニッポン」が決まったと聞いたときの感想をお聞かせください。
若林:「オールナイトニッポン」という看板の大きさはもちろん知っていました。2人とも演者が多い現場がそんなに得意じゃないので(笑)、ラジオで2人だけで話すというのに魅力を感じましたね。
――春日さんは学生時代、伊集院(光)さんやナインティナインさんなどのラジオを聴いていたそうですね。やはりラジオの仕事というのは目標だったんですか。
春日:目指していたというのは違うかもしれないですが、聴いてきたのでラジオの影響力のデカさは分かっていました。やりたい仕事ですけど、下手こけないというか、大変なことだなと。単純に面白い人、魅力がある人なのか、バレたりしますからね。自分も、ラジオで好きになった人とテレビだけで好きになった人では、好きの"濃さ"みたいなものが違いましたし。でも、やりたい、うれしいという気持ちの方が強かったです。
――番組がレギュラーとしてスタートしたのは2009年10月でしたね。初回放送で春日さんは「20年続けることが目標」と話されてましたが、ここまで続くと正直思っていましたか。
若林:思ってなかったかな。
毎週のトークでギリギリっていうか、トークのために「なんか起こんねえかな」というのを毎週続けてきましたので、あんまり先のことは考えられず、振り返れば10年という感じです。最初の放送でも、春日が「20年」って言ったときに俺、笑ってるんですよ。だから続くと思ってなかったでしょうね。振り返ってみると、「あれ? 去年くらいに言い始めたんだっけ」というのが、調べてみると6年前から言ってたりすることもあります(笑)。春日:残り10年もやらないといけないんだなとは思いますけどね。でも10年ってすごいですよね。我々もそうですし、聴いている方の環境が変わっているでしょうからね。学生が社会人になっていたりとか、結婚して子供が産まれたとか。
なかなか大したもんですよね、10年やってるというのは。
○■オープニングトークが長くなった理由は
――10年前にスタートした当初と現在で、変わったなと思うことはありますか。放送内容でいいますと、初期はリスナーと電話で会話することもありましたが、ここ近年はフリートークの時間が増えている印象です。
若林:だんだんオープニング(トーク)が長くなっていったんですよね。しゃべる時間がとにかく長いラジオなので、スタッフのイスに座る深さがかなり深くなりましたよね。音楽を流したりといった仕事があまりあるわけではないから。「長くしゃべるんだろうな」と深く座っているのを見ると、ちょっとぶっ叩きたくなりますけど(笑)。たまに、すぐオープニングを切り上げてやろうかなと思うときがありますね(笑)。
春日:(オープニングが長くなったのは)あまり考えてしゃべってないからでしょうね。なにかが起こるまで、ただ時間が伸びているだけなんじゃないですかね。テレビはそんなダラダラしゃべれないじゃないですか。それに比べると、最初の頃はテレビに近いような感覚があったんでしょうね。
――確かに以前インタビューした、番組の作家・藤井青銅さんは「若いときはいいところを見せようと無理するし、誰しも弱みは見せたくないものだが、どこかの時点で『ある程度、弱みを見せてもマイナスにはならない』『これぐらいまで心を許してもいいんだ』と気付いたのでは」と話されていました。
若林:そうですね。結果を出さないといけなかったときは、実際に起こったエピソードを話すじゃないですか。今は内容がないですからね(笑)。
ずっと「今年の目標は何?」って聞いてる10分間とか。なにも話してないのと一緒なので(笑)。でも逆に言えば、高校とか大学のときはそういったやり取りをしていただろうし、それに慣れてるというのもあるんですかね。
春日:「決めなきゃいけない」というのはテレビではありますけど、この番組ではなくなってきたかもしれないですね(笑)。「どうだ、いい返ししたでしょ」って見せたいスタッフも別にいないですしね(笑)。――ただ10年間も続けていると、かなり番組への思い入れも大きいと思います。昨年(2018年)に掲載されたポスターでは、若林さんは「オールナイトニッポンは、オードリーの代表作」と答えていました。
○■2人が語る『オールナイトニッポン』への想い
若林:ずいぶん真面目に考えてますね、それ(笑)。
ムキになったんでしょうけど。でも本当にそうですね、本心です。
――代表作だという想いに至ったきっかけをお聞かせください。
若林:やっぱりはっきりは震災(東日本大震災)のときかな。手紙をもらったりしたときにすごく思って。
――震災直後の放送では、被災者を勇気づけるために漫才を披露していましたね。
その後に5周年の国際フォーラムのイベントがあって、「こんなに聴いてる人がいるんだ」と思いました。そして、お笑い芸人になったからには、「テレビで代表作を」と思うじゃないですか。
でもいろんな番組が終わって、なかなか時代的にも実力的にも難しいのかなと俺なんかは思っちゃって。そんなときに「それはラジオなんだな」と思いましたかね。だからといって、すごくカロリーを増やしたわけではないんですけどね(笑)。
――春日さんは、ポスターで「オールナイトニッポンは、春日がキラー春日になる所」と答えています。
春日:秀逸ですね。
若林:本人、手ごたえがあるみたいですね。
春日:やはりその言葉に集約されていますね。テレビ、TVショーなんかはやっぱりベビーフェイス…
若林:「テレビ」でいいじゃねえか。
春日:"ショー"ですからね。やっぱりツラが出るわけですから、極端に言えばベビーフェイスでやってるわけです。この番組はキラー春日ですよね。
――普通の春日とキラー春日では、なにが違うんでしょうか。
春日:やっぱりワルですね(笑)。ワルというか、勝つためにはなんでもやるぞと。あの(アントニオ)猪木さんもキラー猪木状態のときは、反則したり手段を選ばないというところで、笑いのために手段を選ばないですね。
若林:でも、一緒に仕事をしている感じだとあまりそれを感じたことはないですね(笑)。俺が感じられてないだけで、彼が夜のお店に行ったり、熱海でコンパニオンを呼んだりするのがそうだと思うので、その辺に関しては反応しなきゃなと思います。
春日:ヤバいですからね、そんなことを言っちゃうヤツは。●2人が語る「リトルトゥース」の存在
○■印象深い相方のトークは
――10年続けてきた中で、特に面白かった、印象深いという相方さんのトークはありますか。
若林:3つありますね。まずは、春日のお母さんが犬の骨を小銭入れに入れて、沖縄まで行って話しかけたという。すごいお母さんですよね(笑)。口に直接つけて話しかけていたそうなんです。声を直接届かせたい、風船を膨らませる発想だと思うですよ。気持ちの風船というのかな、この場合(笑)。2つ目は、「むつみ荘」から春日が顔を出して寝てたという話。顔出しながら寝てるという情景がすごく頭に浮かぶというか(笑)。あとは、ゆで卵を作っている途中で寝たら、お湯が全部蒸発して「カンカン チンチン カンチンカンチンチン」っていう卵の音がした話(笑)。その3つですかね。
――春日さんはいかがですか。
春日:うーん、、、ありますけどね!(笑)。
若林:あるなら、なさそうな間で言うなよ(笑)。なさそうだけどな。
春日:1番を選ぶのは難しいですよね。毎回毎回、秀逸なトークですから。毎週毎週ね、最高記録を更新していくというね。
若林:恥ずかしいコンビだな、おい! 記事になるんだから、そういうこと言うの止めた方がいいぞ。「自分の話に集中していてないです」でいいんだよ、お前のキャラだったら(笑)。
春日:その中でも選べと言ったら、若林さんがホームパーティに呼ばれて、ロベキャン(ロバート・キャンベル)さんがいたやつですね。それ以来、ロベキャンさんのイメージが変わりました(笑)。
――放送では、ロバート・キャンベルさんが手土産にチョコレートケーキを持ってきたものの、あまり食べる人がいなかったと話されてましたよね(笑)。
若林:生放送の後にメールが来たんだから(笑)。「隅に置けない人」って。インテリジェンスが漂っていたよ。
○■必ず小声で言われる「リトルトゥースなんです」
――ところで、街中で「ラジオを聴いてます」「リトルトゥース(リスナーの呼称)です」と言われる機会もあるかと思います。お2人にとって、リトルトゥースはどのような存在ですか。
若林:「あ、リトルトゥースなんです」って、みんな必ず小声なんですよ。「俺もフリーメイソンなんですよ」みたいな、怪しい匂いも若干する、ゾクゾク感がありますね(笑)。春日:やはりテレビ、『ヒルナンデス』『スクール革命』を見てますとか。そして『ソレダメ!』とか…
若林:「いるか!」とは言えないけどね。
春日:『ひらがな推し』見てますとか。
若林:それはいるよ、最近。
春日:それらよりも「サンキューな!」って肩を組みたい感じはありますよね。「『ポケんち』(『ポケモンの家あつまる?』)見てます」って言われても、「ウーッス」って(笑)。
若林:やめた方がいいぞ、お前! ただでさえ、お前のレギュラーは首の皮一枚なんだから。「見てます」って言われたら、どの番組でも肩を組みたいですけどね。
春日:TVショーもうれしくないわけではもちろんないですよ。ただ、ラジオは「小学校同じなんですよ」って言ってくる野郎と似たような親近感というか。ありがたいという気持ちもあるし、「聴くんじゃねーよ」っていうこっぱずかしさもあるし、ちょっと複雑ですよね。ベストは「ラジオを聴いてます」と小声で言ってくる野郎がかわいいなと思いますけどね。「リトルトゥースです!」って大声で言ってくる野郎は「ウーッス」って(笑)。
若林:感じ悪りいな。
春日:ラジオはちょっとそうじゃないんですよ。聴いている方もこそっと「すみません、聴いてて」って言う感じが欲しいんですよね(笑)。「リトルトゥース」と言うのも恥ずかしいみたいな。テレビのスタッフさんでも、聴いてる人は可愛がりたくなりますよね。
――それこそ『ひらがな推し』にはリトルトゥースの方がいらっしゃいますよね(笑)。かなり本編でも、リトルトゥースが喜ぶネタが登場します。
若林:そういえばそうなんですけど、「聴いてます」という話はしてこないですね。でもそう考えると、スタッフさんの中にも聴いてる方がいるのはすごいことですよね。
○■『オードリーのオールナイトニッポン』の今後
――それでは最後に、番組が今後さらに続くにあたって「こうなっていたい」というイメージはございますか。
若林:まあ、どっちかが結婚しないとね。話題も「何年同じ話してるんだ」っていうことがどんどん多くなって。おじさんだから(笑)。どっちかが結婚すれば、新鮮味は出ますけど、こればっかりは分からないので。後は、俺が言うのもなんですけど、身内に死人が出たりすると、話すことも変わってきますね。
――放送では、若林さんのお父様が"お隠れになった"話をよくされてますよね(笑)。春日さんは、今後「こうなっていたい」というイメージはございますか。
春日:変えていきたいというよりも、変わっていくでしょうしね。変わっていくことをお伝えしたいですよね。
――確かにこれまでの放送でも、部族ロケやフィンスイミング、ボディビルなど、様々なお仕事について話されてきましたね。
春日:そういうのをレディオで話せるというのがありがたいですよね。レイディオで話すということがメインなんじゃないかと思う仕事が入ってきたりしますからね。
若林:「ラジオ」ね。
春日:そういうのを1個ずつ報告していきたいですよね。後から振り返ったら「このタイミングで海外ロケ始まったんだな」とか、この番組は「歴史書」みたいなものです。これからも積み重ねていくだけですよね。
■オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー in 日本武道館 ライブ・ビューイング 2019年3月2日(土)16:30開演会場:全国各地の映画館(※開場時間は映画館によって異なる)料金:3,000円(全席指定/税込)チケットぴあでプレリザーブ(抽選)受付中!
■オードリーツッコミ・若林正恭、ボケ・春日俊彰によるコンビ。2000年にナイスミドルを結成し、後にオードリーに改名。2008年「M-1グランプリ」2位。コンビとして『スクール革命!』(日本テレビ系)、『ひらがな推し』『超かわいい映像連発!どうぶつピース!!』(テレビ東京)などに出演中。