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稲垣吾郎『半世界』で新境地「知らない世界が多すぎた」 再出発後の変化も

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稲垣吾郎『半世界』で新境地「知らない世界が多すぎた」 再出発後の変化も

●自分のいる世界は、特殊な“半世界”
俳優の稲垣吾郎(45)が、阪本順治監督の完全オリジナル脚本による映画『半世界』(2月15日公開)で、主人公の炭焼き職人を演じ、新境地を開拓した。稲垣、長谷川博己、渋川清彦が演じる人生の折り返し地点を迎えた39歳の男性3人が、家族や友人との絆を通じて大切なものに気づかされていく本作。これまでの俳優人生では特殊な役が多かったという稲垣は、一般的な庶民の役を演じたことで「知らない世界が多すぎた」と痛感したという。

2017年9月に草なぎ剛、香取慎吾とともに「新しい地図」を立ち上げた稲垣にとって、再スタート後初の単独主演映画となるが、「新しい一歩を踏み出す個人の仕事にふさわしい作品」と感じたとのこと。また、個人で活動するようになって「一枚剥がれて新しい自分」に出会えたそうで、その後の変化も改めて告白。激動の数年を乗り越え、「間違いなく生き生きしている自分がいる。今はすごくいい状況だと思います」と語る。

――稲垣さんが炭焼き職人の役を演じられている姿はとても新鮮に感じましたが、いかがでしたか?

僕自身もすごく驚きましたが、最初に監督とお話させていただいた時に、ほかの作品の候補もあったんですけど、お互いこれでいきたいという感じがありました。
監督は、僕がちゃんとハマるかその場で判断したのだと思います。それが2017年9月くらいで、ちょうど新しい地図を立ち上げた頃。俳優としては、演じたことのないような役や作品を常に追い求めているので、また自分を変えてくれる新しい作品になるという予感がしました。

――役の魅力はどう感じましたか?

僕はこれまで都会的なイメージの役や、超人的な特殊な役が多く、どこにでもいるような役はあまりやっていなかったので、今回の役は人間味あふれるキャラクターだなと思いました。不器用で自分の魅力に気づいていない役でもあって、自分に無関心な役はたぶん初めて。どちらかというとナルシスティックな役が多かったので(笑)、今回の役は新しいなと。新しい一歩を踏み出す個人の仕事としてはこの上ない、ふさわしい作品になる予感がしました。

――自分を変えてくれる作品になる予感がしたとのことですが、実際にこの作品を通してどのような変化がありましたか?
僕は知らない世界が多すぎた。
ファンタジーの世界にいすぎたのかなって(笑)。竜宮城というか、世間を知っているようで知らなかったと思いました。10代から仕事をやってきて、守ってくれる部分も多かったですし。これで成長できたかどうかわからないけど、この役を演じて、1カ月間ぐらい伊勢志摩に行ってその土地に生き続ける人と接して、こういう半世界もあるんだなと。そういう人たちの気持ちがわからないと表現する資格もないと思うし、それに気づくことができました。

SNSを通じて一人一人の声を聞くようになってよりわかってきたし、人に対して興味も持つように。僕は今まであまり人に興味がなかった気がしますが、この作品で一般的な庶民を演じて、その世界とのつながりを感じることができました。僕たちがいるところも特殊なある意味“半世界”で、どっちが“全世界”ではないので、いろいろ見られたのは大きいです。


――この作品は、39歳という人生の折り返し地点というのがポイントに描かれています。稲垣さん自身は現在45歳ですが、39歳という年齢はどう捉えましたか?

40歳を迎えることに対してそんなに心が動かされなかった。そこまで振り返る余裕もないくらい忙しかったっていうのもありますし、新しい年代に入るときは2、3年前から気分はもう40歳で準備をしているので。プロフィールで40という数字を文字で見るとそういう年になったのかと思ったとは思うんですけど、それに対して抵抗があるわけでもないですし、それは今も変わらないかな。僕はあまり年齢にはこだわっていないので。明日どうなるかわからないから分岐点という考え方はしない。ただ、45歳というタイミングでこの映画に出会えて本当によかったなと思います。

――阪本監督は、『座頭市 THE LAST』や『人類資金』で香取さんと組まれていましたが、香取さんから阪本監督について話は聞きましたか?

香取くんから阪本監督の話はよく聞いていて、彼もお仕事で出会った人とそこまで仲良くするようなタイプではないんですけど、そんな彼がすごく心許して2人でお酒を飲んだ話も聞いていたので、珍しいなと思って。
彼が心を開いて自分の私情を話して、それをまた受け止めてくれて、というすごくいい関係性。彼の父親みたいなイメージが僕の中ではありました。

――ご一緒されて阪本監督の人間力を感じましたか?
感じましたし、作品にもあふれていると思います。大きくパフォーマンスするわけでもなくて、日本人的男性の優しさの表現というか、古き良きというか。どんどん日本人の男性の優しさが欧米的になってきていて、僕もどっちかっていうとそっちかもしれないですけど、阪本監督は不器用なんだけどすごい優しい。だから同じ日本人として響きますね。

●グループから個への変化で“新しい自分”に

――新しい地図として活動を始めてから初の単独主演映画となった本作。演技に対して改めて感じることはありましたか?

演じるというのは、結局本人がにじみ出てしまう、隠せないものだと感じ、自分を磨いたり、いろんな経験をしたりすることが最大の役作りなのかなと思いました。
舞台『No.9 -不滅の旋律-』で3年ぶりにベートーヴェンを演じましたが、3年前に見た印象と今年見た印象は違ったと思います。キャストが変わったこともあると思いますが、自分自身の変化や体験によって深みが増して進化できたのかなとも思っています。やはり役者はその時のリアルな感じが出ますよね。すごくそう思うので、日々を大切にしたいですし、肝に銘じていきたいです。

――このタイミングだったからこそ感じたのでしょうか?

そうですね。この2、3年で、僕らを応援してくださった方もスタッフも、いろんなことを感じたと思いますし、僕らも一人一人いろいろ感じるものがあった忘れられない数年だったと思う。それによってまた深みを増して、俳優として成長できていればいいなと。なるべくそこは前向きに捉えようと思います。


――再スタート後初の単独主演映画となった本作では、折り返し地点の不安や葛藤、そして希望が描かれていますが、ご自身の立場と共鳴する点はありましたか?

それはありますね。見る人もそういう目で見てもらえるんじゃないかと思います。役を見ているとしても、僕本人も透けて見えてくるものなので。ただ、大きな環境の変化があるのは、特別ではないと思っています。社会的な影響は大きいと思うけど、皆さんもそうやってステージは変わっていくものだと思うし、転職される方なんてもっと大変だと思う。僕は会社が変わっても職業は変わってないですから。どん底に落ちたっていうイメージはないです。激動の2、3年でしたけど。


――そこまで不安を抱えることはなかったのでしょうか。なくはないです。ゼロからのスタートでしたし、今の状況は想像もできていないことだったので。でも、なるようになるかなって。自分の中では守らなきゃいけないものがあるわけでもないし、新しいことができるも思ったし。今まではグループに対してどう貢献していくかということを一番に考えてやってきましたが、新しい環境によって何か一枚剥がれて新しい自分を表現することができるというのは、俳優としていいことかなと思いました。

――“1枚剥がれた新しい自分”というのは、客観的に見てどのように変化したと思いますか?

以前はグループに対して尽くすことを一番に考えていたので、今は自分のことをもう少し考えてもいいのかなって思える時間になった。そういうことによって剥がれたというのもあるかもしれないですし、あとはいろんな経験の積み重ねで変わっていっていると思います。でも間違いなくすごく生き生きしている自分がいるのは自分でも認めますし、今はすごくいい状況だと思います。

――AbemaTVの『7.2 新しい別の窓』でも、いろいろな新しい一面を見せられているように感じます。

今まで隠してきたつもりもないんですけど、メンバーの立ち位置や、バランスでどう攻めていくかということを考えてしまうので。今も3人でやっているときはそうですけど、言いたいときに自由に発言しているかもしれないですね。

●仕事の幸福感に勝るものはない

――新たなスタートを切って1年以上経ちますが、ここまで振り返っていかがですか?

ありがたいことに恵まれた環境で、2018年は公開を控えているものを含めて映画を3本撮影し、舞台は2本。こんなに役者として豊かな1年間を送れるとは思ってなかったです。絆というか、通じ合っているもの同士が手を取り合っていればなんとかいけるかなっていう感じからのスタートだったので、最初に新しい地図の新聞広告が出た時もすごく反響があったり、SNSもそうですけど、ファンの方の声に励まされてやってきて1年経ったという感じですね。

――2019年はどのように過ごしていきたいですか?

仕事をいっぱいしていたいです。もちろんプライベートでやりたいこともいっぱいあるし、趣味も多いから遊びたいし、プライベートでの人との付き合いも充実させたいけど、仕事で充実感を得て楽しんでる時の幸福感に勝るものはないので。それがない時に埋め合わせるためにプライベートがあるのかなと思ったりもします。このペースで仕事を続けていけていることができたらいいなと切に願っています。

――『半世界』は、職業についても考えさせられる作品だと思いますが、稲垣さんは14歳の頃から芸能界で活動されてきて、迷ったり辞めたいと思ったことはありますか?

辞めてもほかにすることがないので、ある意味での開き直りというか。自分にすごく自信があったり、いろんな才能があったら辞めていたかもしれないけど、それしか知らないから。先ほど“ファンタジー”と言いましたが、その世界しか知らないでやってきたので、辞めたいとか考えたことがないです。

――「仕事を楽しんでる時の幸福感に勝るものはない」という言葉からも、きっと天職なんだなと。

思い込んでいるというのもあると思いますけどね。本当の天職は神様にしかわからないですから(笑)

――2017年に大きな転機があって改めて芸能界でのお仕事について考えられたのでは?

そうですね。ただ、この世界への考え方は会社が変わったから変わるっていうことはなく、変わらずこれからもやっていきたいと思っています。でも、応援してくれている方がいて成り立っている仕事なんだなということはさらに痛感したというか、それを感じて考えさせられた年ではあります。

――ファンの方たちの応援はSNSを通じて感じるというのが大きそうですね。

SNSも大きいですし、映画が公開されたときに当初の目標よりもお客さんが入ってくれたり、パラスポーツ応援チャリティーソングの寄付金でも本当に多くの方に協力してもらったり、よりダイレクトにファンの方の大きさを感じられた1年でした。

■プロフィール
稲垣吾郎
1973年12月8日生まれ、東京都出身。1991年にCDデビューして以来、数々の名曲を世に送り出し、『NHK紅白歌合戦』に23回出場。俳優としては1989年にNHK連続テレビ小説『青春家族』でドラマデビュー、 1990年に『さらば愛しのやくざ』で映画デビューを果たし、ドラマや映画、舞台で活躍。2017年9月に、草なぎ剛、香取慎吾とともに「新しい地図」を立ち上げた。現在は、TBS『ゴロウ・デラックス』やAbemaTV『7.2 新しい別の窓』などに出演。映画は『クソ野郎と美しき世界』(2018年)、『半世界』(2019年2月15日公開)のほか、『ばるぼら』も2019年公開予定。舞台やドラマにも出演し、草なぎと香取とともに楽曲も配信リリース。約14年ぶりとなるソロシングル曲「SUZUNARI」もリリースした。

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