ガンダム? レイズナー? 大河原邦男デザインのアニメ風可変EV!「みらいプロジェクト」が東京モーターショーで公開 (1) ロボモードへ三段変形する超小型EVが誕生!?
メカニックデザイナーの大河原邦男氏がデザインした、ロボットに変形する超小型EV(電気自動車)を出展している、Hiriko.jpブースの新潟発「みらいプロジェクト」だ。
大河原氏といえば、『機動戦士ガンダム』のモビルスーツをはじめ、『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』などなど、数々のサンライズ作品でデザインを担当し、リアルロボットアニメのブームを巻き起こした立役者。一方で「タイムボカンシリーズ」や「勇者シリーズ」なども手がけ、コミカル系でもヒーロー系でも、メカならなんでもござれの巨匠だ。その大河原氏のデザインが、アニメやプラモの世界から、いよいよ現実の世界へ進出! という訳だ。
さらに、マレーシア人の両親を持つイギリス出身のクール・ジャパン発信者、カルチャー・ジャパン代表取締役のダニー・チュー氏もプロジェクトに参加。彼の生み出した美少女キャラ「末永みらい」のアニメに大河原氏デザインの可変EVを登場させ、新潟から世界へ売り込んでいくという。
そんなこんなで要注目のこのプロジェクト。ブースの展示紹介に、トークショーの様子やHiriko.jp提供の貴重な資料画像もまじえてレポートをお届けしたい。
○アニメチックに異彩を放つHiriko.jp「みらいプロジェクト」ブース
今回のモーターショーは東京ビッグサイトの東西全ホールを使って開催されているが、そのうち西4ホールは「SMART MOBILITY CITY 2013 ~KURUMA NETWORKING …くらしに、社会に、つながるクルマたち」というゾーンに設定。新世代の「超小型モビリティ」や「パーソナルモビリティ」の体験コーナーを中心に、大小さまざまなメーカーのEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)のブースが集まっている。
Hiriko.jpブースがあるのは、このゾーン内のブース番号"SMC09"の位置。ガンダムやボトムズなど大河原氏の代表作と末永みらいをフィーチャーした空間に、噂の大河原EVがででんと陣取り、小さなスペースながらも大いに来場者の注目を集めている。○スペインの「Hiriko」をベースに、ロボモードへ三段変形する超小型EVが誕生!?
そもそも「Hiriko」とは、米マサチューセッツ工科大学とスペイン・バスク自治州のHiriko Partners Consortiumが共同開発した、都市内移動用の2人乗り小型EVのこと。インホイールモーターの搭載により、その場で360°旋回が可能なばかりか、車体を折りたたむことで駐車時のさらなる省スペース化を実現したのが特徴だ。
「みらいプロジェクト」は、この元祖Hirikoのコンセプトをベースに、新潟県の支援を受け、独自の日本版EVを開発する計画。いわば "Hiriko 新潟モデル" の開発プロジェクトだ。その仕様は、軽自動車と原付自動車の間の新カテゴリとして今年から国土交通省が認定制度をスタートさせた「超小型モビリティ」のレギュレーションに合致させるという。
しかし、ただ走るだけでは面白くない。 "若者のクルマ離れ" が嘆かれる中、日本ならではのキャラクター性を持った、今までにないモビリティを誕生させようという野望(?)がそこにはあった!
実は新潟は、高橋留美子、しげの秀一、小畑健など、多数の有名マンガ家を輩出してきた土地柄。そんな背景もあって、アニメやマンガのコンテンツ、キャラクターをからめたメディアミックス展開を構想し、大河原氏やダニー氏にプロジェクトへの参加を要請したという。
かくして大河原氏が提案したのが、ロボットに変形する超小型EVのデザイン。ロボットといっても、ガンダムのような二足歩行のヒト型ではないが、『ヤッターマン』のヤッターワンのような車輪移動を基本とした、いわば "ロボ・ビークル" へのチェンジが想定されているのだ。
通常の走行モードから、車体中央を軸に四輪が脚のようになって車体を持ち上げ、左右両腕にあたるマニピュレーターも展開。それだけでも実現すれば画期的だが、このガウォーク的な形態からコックピットを前傾させることで、よりロボットらしいフォルムに。シンプルな機構ながらも、各モードでしっかり印象が変わる三段変形のデザインは、さすが巨匠の仕事だ。
●大河原氏とダニー氏出演のトークショーも開催! 未来はきっと"なんでもアリ"
○美少女キャラ「末永みらい」とのメディアミックス展開で、新潟から世界へ!
今回の出展は大河原氏のデザインを1/1サイズで再現したモックアップのみで、実際に走行や変形はできない。実は正式名称もまだ未定、という状態ではあるが、ブース内で上映されているプロモーション・ビデオの中では、この"大河原版Hiriko"のCGによる走行イメージや変形シーケンスが登場し、否が応でも期待が高まる。
また、このビデオの中で、ダニー・チュー氏がプロデュースする「末永みらい」のアニメ『ミライミレニアム』とのコラボ第一弾が実現。キャラクターにからめてさまざまなカラーリングの大河原Hirikoが登場し、こちらもイメージをふくらませてくれる。今後、本格的なストーリー作品化も予定されており、大河原Hirikoは二次元のアニメ世界と三次元の現実世界をコネクトする存在になっていくようだ。
プロジェクトの次の段階として、来年には走行可能な試作車を完成させる予定。走行モード以外でも、低速であれば変形したまま移動可能とするそうだ。
量産が実現した場合、まずは都市部でのカーシェアリング用途を中心に考えているそうだが、いずれは個人ユーザーへの販売も想定。年間1000台の生産を目標とし、価格も軽自動車程度に抑えたいという。
今回のデザインがどこまで実車に反映されるかは、技術的な検証も必要なため未定ということだが、ロボットへの変形やマニピュレータ搭載といった大河原氏のデザインのコアな要素は、ぜひともオミットすることなく実現して欲しいところだ。
○大河原氏とダニー氏出演のトークショーも開催! 未来はきっと"なんでもアリ" !?
去る11月24日には、大河原氏とダニー・チュー氏が実際にブースを訪れ、トークショーも開催。「みらいプロジェクト」の成り立ちや今後の展望などが語られ、質疑応答の時間には、熱心なファンからさまざまな質問があった。
「今回の可変EVの先に、ガンダムのような二足歩行ロボットへの変形や合体などもイメージされていますか?」という質問に対し、大河原氏は「私は、わざわざ歩かなくてもいいんじゃないかと思っています。
二足歩行が必要なら技術的にはもう可能でしょうが、大手のメーカーがどこも作らないのは需要がないということなので」と冷静なお答え。
だが、続けて「ガンダムファンも40を過ぎて、いろんな企業で発案権を持ってきている。今でもビックリするようなコラボの話はいっぱいきてるんですが、問題はその上の決済する人たちの頭が硬いこと。彼らが定年退職して、決済する側もガンダム世代になれば、なんでもありで日本も面白くなると思う。それが見られるよう、私もなるべく健康に気をつけて長生きするつもりです(笑)」と、大河原チルドレンへの期待も語ってくれた。
また、みらいプロジェクトに関しては「私は40年間、だいたい玩具やプラモのデザインを手がけてきましたが、実際のプロダクトは、一部の小物を除いてなかなか実現に結び付かなかった。このHirikoが走り回ったら、私の最初の1/1サイズのデザインということになるので、感慨深いですね」というコメントも。
一方、ダニー氏も、ブースで上映中のプロモーション・アニメの今後について質問を受け、「もともと『ミライミレニアム』という未来ちゃんのオリジナル・ストーリーの企画なんですが、シナリオを『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』や『カウボーイビバップ』等の佐藤大さんにお願いして、もうできあがっています。
先月、KADOKAWAの井上社長とお会いして "ウチでやりましょう" というお話もいただいたので、KADOKAWAで何か作品が生まれるかも知れません。その中でHirikoを走らせられればと思っています」と回答。「海外の人たちにもたくさん知ってもらって、大河原先生のデザインが世界中で走れるようにがんばりたい」と、国内のみならず世界展開への意気込みを語った。
最後に、総括を求められた大河原氏は「これ(Hiriko)が現実になるということに、とてもワクワクしている。今後の発展に関しては全て私に任せてくれ、というぐらい、いろいろとアイディアを持っているので、プロジェクトの将来を楽しみにしていただけたらうれしいです」とコメント。 "乞うご期待!" ということでトークショーは終了した。
ロボットアニメ好きにとって「変形」は見果てぬロマン。だが、「みらいプロジェクト」によって、そう遠くないうちに個人でリアル可変ロボを所有できる日もやってくるかも? 大河原氏の熱い言葉を信じて、プロジェクトの今後の展開を見守っていきたい。
さて、東京モーターショーの会期もいよいよ今週末12月1日まで。これから行くという人も、しまった見逃してた! という人も、Hiriko.jpのブースへGOだ!!