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ニッポン放送、保守派からの変化 - 他局関係者が続々出演する裏側

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ニッポン放送、保守派からの変化 - 他局関係者が続々出演する裏側

●弘中アナ&桝アナ出演の経緯は
テレビ朝日の弘中綾香アナウンサーが、31日(27:00~)に放送されるニッポン放送『弘中綾香のオールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティを務め、さらには日本テレビの桝太一アナウンサーが、30日と9月6日に放送されるニッポン放送『三代目 J SOUL BROTHERS 山下健二郎のZERO BASE』(毎週金曜 24:00~)にゲスト出演する。

つまり、フジサンケイグループであるラジオ局・ニッポン放送の番組に、他局系列のテレビ局のアナウンサーが出演するということだ。さらには現在、『ゴッドタン』などで知られるテレビ東京の佐久間宣行プロデューサーが、水曜日の『オールナイトニッポン0(ZERO)』レギュラーパーソナリティを務めている。

ニッポン放送において、媒体や系列の垣根を超えたキャスティングが次々実現している理由は何なのか。『オールナイトニッポン』プロデューサーの冨山雄一氏に話を聞いた。
○■「旬なアナを起用して話題をつくる」というよりは…

――弘中アナの『オールナイトニッポン0(ZERO)』が決定しましたが、4月には『オードリーのオールナイトニッポン』にゲスト出演しました。

元々、『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)で共演している若林(正恭)さんとの関係の中でゲスト出演という話になりました。
ただ、弘中さんはテレビ朝日のアナウンサーで、ニッポン放送はフジサンケイグループですし、『オールナイトニッポン』は全国の36の放送局で流れています。その36局の中には、TBS系列や日本テレビ系列のラジオとテレビの兼営局もあります。

普通に考えると、「あまりに複雑なのでやめておいた方がいいんじゃないか」となってしまうのですが、いろいろと交渉して、各局の皆さんにもご理解いただき、ゲスト出演いただきました。

――ゲスト出演の反響はいかがでしたか。

本当に面白かったですよね。春日さんのプロポーズ成功直後ということもあり、前半1時間はオードリーの2人がプロポーズの裏話をして、満を持して弘中さんが出てきたら「結婚ってそんなに偉いことなんですか」みたいなカウンターパンチを浴びせていて、すごいなと思いました。言葉のチョイスがラジオパーソナリティ的に面白いし、「革命を起こしたい」とも話していたのも印象に残りました。――革命家発言は話題になりましたね。


その後に、テレビ東京の佐久間さんが水曜日の『オールナイトニッポン0(ZERO)』で、「食事をしていた所に弘中さんが来て、『どうやったらラジオ番組を持てるんですか』と相談された」と話していたのを聴いて、いつかできれば良いなと思っていたのですが、本格的にオファーをさせていただきました。

――そうなんですね。弘中さんにオファーした理由はなんですか。

僕が『オールナイトニッポン』のオファーをする時は「ラジオリスナーが面白がってくれるかどうか」が根本にあります。世の中のラジオを聴いていない人は「弘中さんはすごく人気のアナウンサーだし、ラジオやるんだ」という反応ですが、本当にラジオの文脈を分かっているリスナーの人たちって「船長危うし」みたいな反応をしてくれるじゃないですか(笑)。

――そうですね(笑)。リスナーは佐久間さんのことを「船長」と呼んでいます。そして佐久間さんは、以前から弘中アナを「最強のライバル」と警戒していました。


やっぱりラジオリスナーだけが分かる共通言語といいますか、リスナーだけが分かる世界観が僕はラジオの醍醐味だと思っています。なので、旬なアナウンサーを起用して話題をつくるというよりは、オードリーや佐久間さんの番組を普段から聴いているような、ラジオ好きな人たちに喜んでもらいたいという意図ですね。

――そして日本テレビの桝アナも、『三代目 J SOUL BROTHERS 山下健二郎のZERO BASE』にゲスト出演します。

去年の4月から山下さんが『ZIP!』(日本テレビ系)に出演されていて、山下さんの『オールナイトニッポン』(2015年4月~2019年3月)時代から「いつか桝アナを呼びたいね」とは話していました。そうした流れの中で今回、番組にゲスト出演していただくことになりました。1年以上『ZIP!』で共演していることもあってか、収録ではすごくフランクにしゃべっていただきました。テレビとは違った枡さんの素顔が随所に出ていると思います。
○■TBSラジオ色の強い宇多丸&宇垣アナの起用

――今年6月には、TBSを退社したばかりの宇垣美里さんが『オールナイトニッポン』を担当しました。


TBSラジオの『アフター6ジャンクション』を聴かせていただいていて、やっぱり面白い方だなと思ってオファーさせていただきました。『オールナイトニッポン』を放送した前後の『アフター6ジャンクション』では、宇多丸さんがイジってくれていましたね。

――そんな宇多丸さんも、6月の『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)』にゲスト出演していました。

Creepy Nutsとの深い関係があっての出演ですが、スペシャルウィークに他局の月曜~金曜の帯番組のパーソナリティが出るというのは、今までなかったんじゃないですかね。今までだったらレーティング週に他局に出るということは、業界的にやめておこうかというのがありました。そうした中で、TBSラジオがスペシャルウィーク廃止を打ち出したり、ラジオ業界の環境が劇的に変わっていることも、実現した理由の1つだと思います。
○■伊集院光、『オールナイトニッポン』に“帰還”

――そして6月には、伊集院光さんが『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』に出演しました。かつて伊集院さんは『オールナイトニッポン』パーソナリティを務めていたこともあり、大きな話題となりましたね。


まさに“王の帰還”ですよね。初回放送で、佐久間さんが伊集院さんへの思いを話していたのを、後から伊集院さんの耳に入ったそうです。そして佐久間さんに『伊集院光とらじおと』(TBSラジオ)からオファーが来ました。その『らじおと』で、伊集院さんが「ゲストに出るよ」と言ってくださったことで出演いただきました。

そう考えると、ラジオ界で好き勝手にやる流れができているのは、水曜日の『オールナイトニッポン0(ZERO)』に佐久間さんを起用したことが大きいと思っています。

●反響が大きい佐久間宣行の『ANN0』

――そうなんですね。そもそもの話になりますが、佐久間さんを起用した理由はなんだったのですか。

『オールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティを起用するにあたっては、過去1年の特番の反響やリスナーの声などを反映しています。
昨年、佐久間さんが『AKB48のオールナイトニッポン』に何度か乱入し、そのときの放送が面白いなと思っていました。AKB48関連で秋元康さんとも打合せをする中で「佐久間でラジオやったら面白いんじゃない」という後押しもありました。

フジサンケイグループの放送局で他局のテレビプロデューサーがレギュラーとしてしゃべるというのは、正直ハードルは高かったんですけど、そこもラジオ業界が過渡期ということもあって、実現しました。『オールナイトニッポン』は自由なことができるという原点に立ち返った結果だと思っています。

――ここまでの佐久間さんの『オールナイトニッポン0(ZERO)』の反響はいかがですか。

radikoの生放送やタイムフリーの数字もかなり良いですし、テレビ朝日の加地(倫三)さんが来た回などは特にハッシュタグが盛り上がったり、radikoでも1週間ギリギリまで再生されたりします。反響が大きくなっている要因は、佐久間さんのラジオに対する“熱”がラジオを聴く人に届いているからだと思います。10月には本多劇場で番組イベントをやりますが、尋常じゃない数の応募が来ました。
刺さる人にはやっぱり届くんだなと思いましたし、すごくラジオっぽいですよね。

――確かに佐久間さんの番組にも、他局系列の加地プロデューサーや、『バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ)のイメージが強い放送作家・オークラさんが来ましたね。

佐久間さんの番組が1つの流れをつくっている感じはします。佐久間さんの『オールナイトニッポン0』はこの上半期で一番のエポックメイキングじゃないですかね。それとニッポン放送自体も、開局以来あった制作部が廃部になったり、編成部もなくなりました。さらにはフリーアドレスになって、僕の固定席もなくなって(笑)。

そう考えると、ラジオ業界としてもニッポン放送としても、自由にやれる空気感があります。「パーソナリティは他のラジオ局には原則出ない」といった既存の考え方を突破できるチャンスなのかなと思います。

○■Creepy Nuts・DJ松永はTBSラジオでもレギュラー出演中

――他のラジオ局に比べても、特にニッポン放送はそうした意識が強いんでしょうか。

ニッポン放送は今までどちらかというとかなり保守派だったんですが、今はすごく改革派・推進派になっていますね。例えばですが、Creepy NutsのDJ松永さんがこの4月からTBSラジオの夕方の『ACTION』に出演していますが、今までだったら『オールナイトニッポン0(ZERO)』もやっていますし、なかなか実現しにくかったと思います。でも「DJ松永さんのラジオトークをもっと多くの人に聴いてほしい!」という気持ちで実現したというのがあります(笑)。

――そういった意識になったきっかけはあるんですか。
ずっとラジオの現場にいましたが2016年7月に異動し、約2年ほどイベントの部署にいました。ラジオ制作の現場から離れてみると、思った以上に世の中の人はラジオを気にしていないし、聴いていないなと客観的に思ったんです。そして2018年4月、イベントの部署から『オールナイトニッポン』のプロデューサーに戻った後は、ラジオ業界の状況はすごく過渡期で、状況が変わっていました。

そうした中で「ラジオは他局と積極的に交流したり、話題発信しないと他のメディアやネットに埋もれちゃうな」と思うようになりました。それですぐにやったのが、『岡村隆史のオールナイトニッポン』とNHK総合テレビの『シブヤノオト』とのコラボです。
○■NHK番組と『オールナイトニッポン』のコラボ

――2018年5月にやったものですね。ラジオとテレビ番組のコラボということもあり、話題になりました。

NHKのテレビ番組とニッポン放送の『オールナイトニッポン』を同時放送しました。「CMどうするの?」とか「同じ放送が流れているのってどうなの?」とかいろんなことがありましたが、やってみたら意外とすんなりできましたね。これがきっかけとなり、ダメと決めつける前にとりあえず無理そうでもやってみるというマインドになった気がします。

――『岡村隆史のオールナイトニッポン』と『シブヤノオト』とのコラボが1つのきっかけだったんですね。

今年の2月からは、在京6局(NHK・TBSラジオ・文化放送・ニッポン放送・TOKYO FM・J-WAVE)のプロデューサーたちと、『#このラジオがヤバい』というNHKと民放ラジオ101局の共同ラジオキャンペーンをやってきました。そこで各局のプロデューサーとも話をしましたが、今後は「自分の局だけでいい、自分の番組だけでいい」という考えじゃなくて、ラジオ業界全体でまだラジオを聴いたことのない人へのきっかけを作ったり、ラジオが注目されるようなムーブメントやバズをつくっていく必要があるなと改めて思っています。

最近では特番『かが屋のオールナイトニッポン0(ZERO)』を放送したんですが、これは広島のRCCラジオ『かが屋の鶴の間』の番組ディレクターから『オールナイトニッポン0(ZERO)』をやりたいとオファーをいただいて実現しました。当日は『かが屋の鶴の間』の番組チームが『オールナイトニッポン』に乗り込んでくるという形で番組をやったのですが、こうやって違うエリアのラジオ局とコラボする方法もあるんだと感じました。■冨山雄一(とみやま・ゆういち)1982年生まれ。NHKに新卒入社後、2007年にニッポン放送に中途入社。その後、『ポルノグラフィティ岡野昭仁のオールナイトニッポン』『小栗旬のオールナイトニッポン』『星野源のオールナイトニッポン』など数多くの番組を担当。2016年7月にエンターテインメント開発部に異動し、「岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭」などに携わった後、2018年4月より『オールナイトニッポン』プロデューサーに就任し、現在はコンテンツプロデュースルーム所属。

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