岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (5) 日銀は本当に”悪者”なのか? - 「何もしない日銀」というバッシングの虚構
2012年2月14日、日本銀行は予想外の追加緩和策を決定しました。
政策決定会合の直後に開かれた日銀総裁の会見で、白川総裁の口から「円高抑制」「円高阻止」という言葉が一度も発せられることがない、先にFRBの政策発表があったために日銀が後追いをしていると、半ば批判めいた論調が展開されました。
私は日銀の広報担当でも、白川総裁を個人的に存じ上げて擁護しているわけではありませんが、昨今の日銀や白川総裁を悪者にすることで満足するという風潮は、正直なところ行きすぎだと思っています。
特に2月6、7日の参議院予算委員会では白川総裁の答弁に対して、激しい非難や野次が飛ばされていました。
こうした政治的・感情的な日銀バッシングは意味がないのを通り越して不快にも感じます。
「円高・デフレで国民生活が困窮しているにもかかわらず日銀は何もしていない、責任をとって総裁を辞任せよ」とまで言いだす始末です。
ここには円高の原因が本当に日銀なのか、という本質に迫る論拠が欠落しています。
対話に長けたFRBのバーナンキ議長と、地味で対応の遅い白川総裁というイメージは政治家にとっても既存のメディアにとっても使い勝手がよいのでしょう。