会社員が「怒られたくないよー!」と保身に走ると、転落人生に
【書評】『転落の記私が起こした詐欺事件、その罪と罰』(本間龍・著/飛鳥新社)【評者】中川淳一郎(編集者)この本は、2000年代前半、東証一部上場を控えていた広告代理店・博報堂の未公開株購入をちらつかせた詐欺事件当事者によるざんげの書である。
「もうけに目がくらむとロクなことはない」という話と「簡単なもうけ話なんてもんは存在しない」、ということがよく分かるので、まじめに人生を送りつつも、「ラクに金もうけをできる方法がどこかにあるのでは……」と考えている方は読むと良い。
多分読み進めていくと、その考えが一気に吹っ飛び、やはりまともに働こうと考えなおすか、同じ一攫千金でも宝くじを買って夢をみる程度にとどめるかになるだろう。
ただ、この本を読んでもまだ「いや、ラクな話はあるはずだ……」と信じているようであれば、う~ん、なかなか重症かもしれません。
この本のストーリーである、詐欺事件のあらましを説明しておくと、博報堂の営業マンだった著者が、得意先から960万円を回収できなかったことから始まる。
得意先は「期をまたいだからもうダメ。
請求しないお前が悪い」と言ってくる。
本来博報堂の上司と得意先責任者とで話し合うべき状況にあったのだが、その時上り調子にいた著者は社内での立場が下がることを恐れ、自らのポケットマネーで960万円を支払うことを決意。