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岳南鉄道「機関車・電車祭り」 - 機関車めぐりとミステリー列車を楽しむ

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岳南鉄道「機関車・電車祭り」 - 機関車めぐりとミステリー列車を楽しむ
岳南鉄道は10日、「2012春 機関車・電車祭り」を開催した。

比奈駅での機関車3台の撮影会や、ちょっと変わった経路を走るミステリートレインの運行などが行われた。

17日のダイヤ改正で貨物列車の運行が終わることもあり、機関車ファンたちが集まってにぎやかだった。

レトロな機関車たちと、気になるミステリー列車の経路をレポートする。

岳南鉄道は静岡県のローカル私鉄。

東海道本線の吉原駅に接続し、製紙工業地域をぐるりと巡って、岳南江尾駅まで9.2kmのミニ路線を運行している。

車窓から何度も富士山が見える電車として、あるいは新幹線の高架線の下を2回もくぐる電車として、そしてなによりも、ワム80000という古い貨車の運行で鉄道ファンによく知られている。

機関車が貨車を押し、途中で連結器を外して、添乗係員が手動ブレーキ操作をする「突放作業」は、全国でもここだけで見られる光景だった。


「2012春 機関車・電車祭り」は貨物列車の運行が終わる数日前に開催された。

もしかしたら、今後は機関車を見られなくなるかもしれない。

そんな思いで駆けつけたファンも多かっただろう。

岳南鉄道は機関車だけではなく、電車も名物だ。

元京王井の頭線3000系電車を改造しており、2両編成の8000形1本と、1両編成の7000形が3台ある。

井の頭線の3000系電車は昨年冬にすべて引退したこともあり、いまとなっては貴重な生き残りといえる。

イベントのメインは、比奈駅での機関車の展示。

その他、機関車の体験運転、機関車添乗体験と、まさに機関車尽くし。


貨物列車のルートを走る快速電車やミステリートレインも運行されていた。

まずは吉原駅から8000形に乗り、比奈駅へ。

比奈駅構内では3台の電気機関車が並んでいた。

ホームに近い側からED501、ED403、ED402。

岳南鉄道にはほかに休車扱いのED291があり、現在は岳南富士岡駅に留置されているとのこと。

凸型機関車のED501は1928(昭和3)年製。

上田温泉電軌で「デロ301」として37年にわたって活躍し、三河鉄道へ譲渡。

名古屋鉄道に合併されたときにED501となり、1970(昭和45)年に岳南鉄道へ。
御年84歳ながら現役で、おもに比奈駅で貨車の入れ替えを担当しているそうだ。

ED403とED402は松本電鉄からの移籍組。

ただし出自がちょっと違う。

ED403は1966年に日本車輌が製造した。

東京電力安雲ダムの建設資材輸送で活躍し、1972年に岳南鉄道に移籍。

牽引力が大きく扱いやすいため、工場の出庫、構内の入れ替え、本線上の貨物列車まで幅広く活躍しているという。

クリーム色の帯には主要顧客の「日本大昭和板紙吉永」のロゴが入っている。

ED402は東京電力梓川水系ダム工事用に活躍した機関車で、日本車輌が1965年に製造したとのこと。


松本電鉄から岳南鉄道への譲渡は1971年。

おもに本線で運行され、紙輸送の主力機に。

岳南富士岡駅に留置中のED291は1927(昭和2)年に日本車輌で製造された。

豊川鉄道のテキ52号として使われ、後に国鉄ED29形として飯田線で活躍。

1959年に岳南鉄道にやってきたそうだ。

今回のイベントでは、運転体験にED402、乗車体験走行にED501を使用。

比奈駅では鉄道部品などの販売会も行われ、貨物列車の行き先票、手すり、踏切警報器、キーホルダーなどが並んだ。

ミステリー列車といえば「行き先不明」のイベント列車を指す。


車内で行先を当てるクイズなどが行われ、乗客はどこへ連れて行かれるかわからない。

古くは国鉄が開催した「銀河鉄道999号」が有名で、この列車は上野発。

到着地は烏山線の烏山駅だった。

最近では、千葉県のいすみ鉄道がホタル観賞用の行先不明列車を運行していた。

これはクイズというより、「ホタル生息地の保護のため内緒にしてほしい」という趣旨だった。

さて、岳南鉄道が運行するミステリートレインはどうだろう。

行先不明といっても、吉原駅から終点の岳南江尾駅まで、たった9.2km。

支線はなく、単純に往復するだけのように思える。


この日のイベントでは、11時33分発のA列車と、13時41分発のB列車が用意されていた。

筆者は機関車を展示中の比奈駅から戻り、B列車に乗ってみた。

案内人は吉原駅勤務の本多氏。

同社のイベント列車の案内人として、鉄道ファンに親しまれている人物だ。「ミステリーといっても(岳南)江尾まで行って戻ってくるだけですが、途中で何かが起きます」と、本多氏のいきなりネタバレ発言があり(笑)、乗客全員の「出発進行!」のかけ声で吉原駅を出発した。

本多氏の流暢な沿線ガイドを聞きながら、7000形7002号は走り出した。

ちなみにこの電車、モーター付きの中間車の両側に運転台をくっ付けたそうだ。

電車は比奈駅を過ぎ、撮影会参加者に見送られて次の岳南富士岡駅にも停車。


ところが、この駅を出てすぐの踏切上で停車して、運転士が後部運転台へ移動。

折り返して再び岳南富士岡駅へ。

下り電車の到着を待って、そのまま比奈駅へ戻ってしまった。

さらに比奈駅を出た先でまた折り返し、比奈駅へ戻って……、となにやら怪しい動き。

この次がミステリーポイント。

なんと比奈~岳南富士岡間のヤード1番線、つまり、本来は貨物列車しか走らないルートを通ったのだ。

このヤードは5番線まであり、ワム80000を最大80両も収容できるという。

電車が一時停止した後、参加者たちは間近に見えるヤード3番線の貨車を撮影していた。

このまま電車は岳南江尾駅へ。

その途中でも本多氏の車窓解説は続く。

古墳の話、富士山ビュースポット、第2東名高速の橋などの見どころのほか、新幹線が見える難読駅・須津(すど)の駅名標の話、いまや貴重な電鐘式踏切警報器と電鈴式踏切警報器の聞き比べなど盛りだくさん。

岳南江尾駅では10分間の折り返し休憩があった。

この駅では、毛並みの良い黒猫が改札口で待っていた。

「名前はアイちゃんだったかな……」と本多氏。

すごい。

何でも知っている。

このまま吉原駅へ戻るかと思ったら、帰路もミステリールートがあった。

ひとつは岳南富士岡駅の車両工場突入体験。

電車に乗ったまま工場見学。

クレーン装置やピットなどの説明を聞く。

車庫の影に隠れて、後から来た上り電車を眺めた後、今度こそ吉原駅へ……、と思ったら、吉原駅の直前でまたまた貨物用ルートに入った。

ここは岳南鉄道とJR貨物が貨物列車を引き継ぐ線路だ。

最も北側が旅客列車の使う本線で、その隣の「貨物3番線」は機関車の付け替え用の線路。

ミステリー列車が進入した線路はさらに隣の「貨物2番線」で、比奈から来た貨物をJRに引き渡す線路とのこと。隣の「貨物1番」は、JR貨物から戻ってきた貨車を受け取る線路だという。

筆者が乗ってきたミステリー列車は、普段貨物列車が運行するダイヤだったというわけだ。

ちょっとだけ貨物列車を体験した参加者たちは、JRの線路に待機している貨物列車を撮影。

岳南鉄道の下り列車の8000形を見送り、吉原駅に戻った。

往復約1時間半。

たった9.2kmだけど、まさにミステリーなルートを走る列車だった。

岳南鉄道は貨物列車の運行終了で経営が厳しくなるものの、沿線自治体の支援で今後も旅客列車の運行は継続できる見込み。

鉄道ファンの楽しみはちょっぴり減ってしまうけれど、元京王電鉄3000系の改造車はユニークで、製紙工場や富士山を背景に写真を撮るファンも多いという。

また、吉原本町は旧東海道の宿場町として歴史があり、本吉原はB級グルメ「つけナポリタン」で売り出し中。

イベント当日は雨天で見られなかったが、車窓の富士山はすばらしく、工場の夜景もおすすめとのこと。

次回は岳南鉄道とその沿線をゆっくり旅してみたい。

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