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岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (7) 日本の”斜陽”は誇張されすぎ!? - 海外識者が語る”失われた20年”の真の姿は?

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岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (7) 日本の”斜陽”は誇張されすぎ!? - 海外識者が語る”失われた20年”の真の姿は?
もっと前にこのコラムで取り上げようと思っていたのですが、年明け早々いろいろとトピックがありすぎて、すっかり時間が経ってしまいました。

新鮮味が薄れてしまい、「もう知ってるよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは少し目つぶっていただいて…、年明けに海外で話題となっていた日本についてのお話です。

2008年のノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏ですが、現在はニューヨーク・タイムズ紙でコラムを担当しています。

1月9日付になりますが、登場したのが「Japan, Reconsidered(日本、再考)」です。

ここで指摘されているエーモン・フィングルトン氏の記事というのが「The Myth of Japan’s Failure(日本の失敗についての神話)」です。

失われた数十年と言われ続けてきた間も、日本経済は実は上手くやってきたのではないか。

少なくともサブプライム危機以降、中間層の没落が激しい今の米国よりはずっとマシだろう、という内容です。

東京の様子を日本の姿として語るのはいかがなものかと思いますので、各論は少々無理な点があるにしても、総論においては的を得た記事と言えます。


米国からしてみれば日本はGDPなどの経済的な数字で比較すると「敗者」と位置付けられますが、さぞかし疲弊しているのだろうと思ってやってきた渡航者が実際の東京の様子を見ると愕然とするわけです。

ミシュランで最高ランクを獲得した数で言えば日本が16店、本場であるフランスが10店と二番手に甘んじている状況をGDPではどうやって説明すればいいのか? そして医療制度の充実ぶりなども含め、どうしたら日本の状況を正確に伝えられるのだろう、と疑問を投げかけています。

日本経済が実は成功していたその背景の1つとして、いわゆる通常の製造業からは早々に脱却して、高品質な製品作りに資本や技術を注入したことが貿易収支の増加にもつながっていることをあげています。

日本が「敗者」であるというのは、よく言えば神話、悪く言えば作り話であり、むしろ日本経済を理想的なモデルとして見習うべきなのではないか、というのが結論です。

そして、なぜこれほどまでに日本は駄目だと言われ続けたのか、あるいはそういったイメージが定着してしまったのか。意図していたかどうかは別として、実は「負けたフリ」をして外圧をかわしてきたのではないだろうか、という憶測もあり興味深いところです。

さすがの米国も「落ちた巨人」を足蹴にするなどということはしない、それは米国高官としての誇りが許さない、のだそうです。

そういう意味では実は日本の外交も失われた20年間、ある意味では成功していたのかもしれません。


これに対して、クルーグマン氏の評価はというと「No」、つまりフィングルトン氏が指摘するほどよくはない、とのご意見です。

しかし、日本の斜陽は誇張されすぎ、という点については正しいと認めています。

ところで、日本の経常黒字と米国の経常赤字を取り上げた部分の反論としてクルーグマン氏は、「current account surpluses aren’t necessarily a sign of success.(経常黒字が必ずしも成功の印しではない。

)」と述べています。

最近は日本の経常収支の赤字転落への不安があるようですが、ノーベル経済学賞を取られた御仁の言葉を読んで少しは安心されるでしょうか。

黒字・赤字は単なるプラス・マイナスの符号です。

そういう意味では黒字がよくて、赤字が悪いという議論は成り立ちません。

問題は赤字にしても黒字にしてもその中身ですが、こと日本の経常収支に関しては赤字になることは考えにくく、中身も1つの懸念材料を除いては特に心配はありません。


経常収支についてはあらためて解説できればと思います。

日本の実体経済は力強いというのは以前から申し上げていることですが、ここに来て海外からの評価も格段に上がっている、というのが実情です。

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