「お金」に興味を持つという事 - セゾン投信・中野社長の半生記 (9) 澤上氏との出会いで闇の中に光! - 「直販投信会社をセゾングループで作れ」
確かに現在でも公募投資信託約4千本のほとんどすべてが証券・銀行あるいは郵便局のいずれかを通じて販売されています。
現実に鑑みれば、投資信託を組成したなら必ず販売会社に卸して売ってもらうことは当然の常識だ、と考えることは決して間違いとは言えないでしょう。
なので、業界の常識やしきたりの範疇でビジネスモデルをとらえることも、極めてノーマルな発想です。
そして多くの場合、その中に問題意識が生じて阻害要因を特定できたとしても、それが常識の壁にぶち当たると途端に思考停止となり、妥協の産物に甘んじるかあきらめてしまうものです。
まさに澤上さんに会うまでの私がそうでした。
日本の投資信託業界に長期投資が根付かない理由。
それは証券・銀行という販売会社主導で、販売することのみが目的化して、販売側が売り易い商品を指向し、新しいファンドを次々と売り出し乗換え営業によって手数料稼ぎに血道を上げるから、と阻害要因は明白です。
それならボトルネックの根本である販売会社経由というフローをビジネスモデルから除去してしまおう! それが直接販売、つまり直販モデルです。
そしてさわかみ投信は業界の常識と慣習を打ち破って、確かに直販モデルで長期投資に真っ向挑戦していたのです。
澤上さんとの出会いは、私に絶大なる衝撃を与えました。
確かに長期投資を実現可能とする方法がある、純粋な驚きであり、闇の中に光を見たような発見でした。
私はそれから幾度も澤上さんのもとを訪ねました。
澤上さんが考え決断し、実行しているさわかみ投信のモデルを、そして澤上さんが目指す長期投資の理念についても、猛烈に知りたくなったからです。
澤上さんも忙しいなか、有り難くも時間を割いてくださいました。
後から聞いた話ですが、当時澤上さんのところには同業者や大手の金融関係者など、たくさん訪ねて来ていたそうです。
私もそのうちのひとりだったわけですが、みんな澤上さんが誠実に対応すると「良いことを聞いた、素晴らしい!」と言って帰って行くのですが、それっきりだったようで、「中野は何度も話を聞きに来た。だから信用した。
」と仰っていました。
やがて当時のさわかみ投信の幹部の方々とも交わるようになり、みんなとビールを飲みながら話を聞かせてもらえるようになりました。
その時のひとりが、現ユニオン投信社長の田子慶紀さん。
当時さわかみ投信のバックオフィスを一手に引き受けていました。
もうひとりは、現ありがとう投信社長の岡大さん。
さわかみファンドのファンドマネージャーだったのです。
澤上さんも、私の長期投資への思いの本気度をちゃんと受け止めて下さって、やがて「中野、お前もさわかみ投信のような直販投信会社をセゾングループで作れ」と言い出しました。
そしてもう一言、「お前が本気で取り組むなら俺は何でも協力してやるよ!」この言葉に私は目覚めました。
そして澤上さんの大きな人間性にも惚れました。
よし! もう一度チャレンジしてみよう! 改めて長期投資への挑戦へと心が定まりました。
従前は、投資信託会社のライセンスを既存金融機関以外の資本で得ることには門戸が閉ざされていました。
しかしそれから投信免許は認可制に変わり、さわかみ投信が確かに投資信託委託業の認可を受けたのです。
今度はセゾン資本で投資信託会社としての認可を得よう、と事業モデルをいちから構築し直しです。
当時投資信託委託業の認可を得るには、最低純資産1億円の縛りがありました。
これはあくまでミニマムの純資本であって、これを1円でも不足させた段階で営業停止になるため、事実上数億円以上の資本を必要とする、かなりお金がかかる事業でした。
私がいた投資顧問会社を投資信託会社に衣替えするプランを描きましたが、まとまった資本を得るには親会社であるクレディセゾンの出資が必須です。
クレディセゾンの林野宏社長とはその頃ほとんど面識がなく、それも当然で私は小さな子会社の一社員でしたから、それならと社長宛に手紙を書きました。
日本に根付いていない長期投資が、既存金融業界には決してできない新たな価値の提供となること、そのためには直販でダイレクトに顧客と結び付いて同じ価値観のお金を集める必要があること、そして澤上さんという人が既に行動を始めていることまで、とつとつとしたためてこっそり秘書さんに渡しました。
数日後、林野社長から私宛に電話がかかってきました。「中野君か、手紙読んだよ。
おもしろいじゃないか。
やろうよ!」。
よく知らない一社員の手紙をちゃんと読んでくださり、直接電話で伝えてくださる。
それだけでも感動でした。
これで長期投資を実現するための投信会社設立プランがスタートしたのです。
暗黒のトンネルから一気に抜け出た気分でした。
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