マネーのトリビア (20) 企業が”破たん”したら、その会社の「株」はどうなるの?
とはいえ、ひとくちに“破たん”といっても大きく2パターンあり、また、株の価値も突然ゼロになるわけではありません。
今回は企業の破たんと株について見てみましょう。
企業の破たんには、事業の継続をやめてしまうケースと、事業を継続するケースがあります。
事業の継続をやめる場合は、破たんによって会社そのものがなくなります。
借金が増えすぎて返せなくなり、裁判所に破産の申し立てをするといったパターンがこれに当たります。
上場会社(証券取引所に登録している会社)の場合、破産の申し立てをすると、証券取引所はその会社の株を「整理銘柄」に指定して投資家に注意を促します。
指定から1カ月たつと、証券取引所での株の取引はできなくなります。
これを「上場廃止」といいます。
上場廃止になるまでのあいだ、その株の売買はできますが、会社がなくなると決まっているわけですから、株価は暴落するのがふつうです。
そして、上場廃止になれば、株の価値はゼロ、いわゆる”紙くず”になるわけです(実際には、上場会社の株はペーパーレス化されていますが)。
数は少ないのですが、資金にまだ余裕があるうちに事業の継続をあきらめて会社を解散するというケースもあります。
その場合も「上場廃止」となりますが、借金や従業員の給与などを支払ったあと会社に財産が残ったら、それは株主に分配されます。
経営が行き詰まり、裁判所に会社更生法や民事再生法の適用を申し立てるのも”破たん”ですが、事業は継続して経営の再建を目指します。
規模の大きな会社の場合はこちらが多いといえます。
最近ではエルピーダメモリが、2月27日に東京地方裁判所に会社更生法適用を申請して破たんしました。
このような場合、会社そのものはなくなりませんが、株は整理銘柄に指定されて、1カ月後に上場廃止となります。
また、ほとんどの場合、「100%減資」というのが行われて株主の持分はゼロになります。
例えば、日本航空(JAL)は、2010年1月に会社更生法の適用申請をして、2月に上場廃止となりました。
今年、再上場を目指していますが、以前のJALの株は上場廃止で無効になっているため、再上場しても株の価値や株主の権利は復活しません。破たんではないけれど、証券取引所の上場基準を満たせなくなって上場廃止になることもあります。
例えば、有価証券報告書にウソの記載をしていたりした場合です。
このような理由で上場廃止のおそれがあると判断された会社については、証券取引所が審査を行います。
審査中、その株は「監理銘柄」に指定されますが、売買は行えます。
審査の結果、上場廃止に至らなければ「監理銘柄」から外れて元に戻されます。
例えばオリンパスは、巨額の損失を隠していたことが発覚して、2011年11月に監理銘柄に指定されましたが、2012年1月に指定が解除されています。
審査の結果、上場廃止が決まったら、その株は整理銘柄に指定されて上場廃止となりますが、会社が存続していれば株の価値や株主の権利は失われません。
再上場する可能性もないとはいえませんが、そのようなケースはこれまでのところないようです。
ただし、上場廃止になると、その株は取引所を通した売買ができなくなるので、株を売りたい場合は買ってくれる相手を自分で探さなければなりません。
また、保管振替は使えず、配当や売買益に対する税金の優遇は受けられなくなり、株主優待も廃止されることがほとんどなので、株を保有し続けるメリットよりデメリットのほうが大きくなくなってしまいます。
株式投資をするとき、誰しも破たんしそうな会社の株を買ったりはしないはずですが、経済環境が変われば企業の経営状況も変わります。
もし、経営不振が続いたり破たんの兆しなどがあったりしたら、早めに売るのが賢明。
また、どんな企業にも破たんのリスクはあるので、株を買うときは1つの銘柄に資金を集中させないことが基本中の基本です。
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