ゼロから『猟師』になりたい…その”方法”とかかる”費用”は!?
単行本になるやアッと言う間に5刷まで達した人気漫画です。
この漫画の作者、岡本健太郎氏は、ふるさとの岡山県に戻ってゼロから始めた猟師生活をエッセイ漫画にまとめています。
この漫画を読むと「やってみたいなあ」などと思うこと請け合いですが、さて、ゼロから始めると猟師になるにはいくらかかるのでしょうか? オシャレな若者の街、渋谷にある『渋谷銃砲火薬店』の佐藤三弘さんにお話を伺いました。
――『山賊ダイアリー』という漫画が売れてるんですけど……。
知ってますよ(笑)。
作者は岡山在住なんですってね。
――この作者みたいに、素人が鉄砲を持って猟師を始めたいとすると、どうすればいいんでしょうか。
まずね、鉄砲を持つための「所持許可証」というのが必要です。
これは警察で交付してもらいます。
その上で、猟をするためには「狩猟免許」と「狩猟者登録証」いうものが必要ですね。
これは各都道府県で交付されます。
――所持許可証を取るのは面倒くさいですか?そんなことないです。
まず初心者講習会に行って講習と筆記試験を受けます。
空気銃の場合はこれに合格したら、申請書を出して、許可が下りたら「空気銃所持許可証」がすぐ交付されます。
――えっ。
それで終わりですか。
空気銃の場合はね。
猟をやるには空気銃と散弾銃があるんですけど、空気銃の場合は講習1日受けるだけです。
――散弾銃を使いたい時は、その後どうすればいいですか?散弾銃の場合には、講習を受けたら「教習射撃資格認定申請」というのをするんですが、この申請をして、教習資格認定書(あるいは技能検定通知書)をもらわないといけません。
落ちる人はここで大体落ちちゃう(笑)。
逆に言うとこの申請を受け付けてもらえたら、銃を持てると思っていいんじゃないでしょうか。
――というのは?申請を出す時に、申請書の他に、同居親族書、欠格用件誓約書、非破産者証明書、医師の診断書、戸籍抄本、住民票の写し、経歴書を出さなくちゃいけないんですよ。
ぶっちゃけて言うと、おかしな人に銃を持たせないってことです。
――でOKだったら教習が受けられるんですね?そういうことです。
で射撃教習をやって合格したら教習修了証明書(技能検定合格証明書)がもらえます。
これがもらえたら晴れて銃を購入できます。
――射撃教習までいって落ちる場合はありますか?そんな人は聞いたことないよ(笑)。
そんなに難しくない射撃だから落ちる人はいないと思うなあ。
ここまでの「銃を持つためのコスト」は約6万円初心者講習会 : 6,800円
教習射撃資格認定 : 8,300円
射撃教習費 : 約30,000円
所持許可、認可証の交付・最初の1丁 : 10,500円(複数同時に持つ場合、1丁につき6,700円)
合計 : 59,600円
――「狩猟免許」はどうでしょうか。
第一種銃猟免許と第二種銃猟免許があります。
第二種は空気銃を使う猟限定、第一種は散弾銃と空気銃、両方使う猟。
だから銃を使いたい人は普通は第一種を取ります。
あとワナ猟師の場合は、「わな猟免許」、網で魚を獲りたい場合には「網猟免許」を取らないといけません。
――それは試験を受けるんですよね。
そうそう。
知識試験、適正試験、技能試験の3つをやります。
時期は、大体9月ぐらいです。
東京の場合は、環境局 自然環境部計画課 鳥獣保護管理担当というのが窓口で、猟友会や銃砲店でも申し込むことができます。
また、試験日の前週くらいに猟友会主催の講習会が開かれるので、それも受けておくといいでしょう。
――東京都の窓口に電話をかけて聞いたんですが、「まったく知らない人が受けてもたぶん受からないので、猟友会の講習会に出た方がいい」と言われました。
そうでしょうね(笑)。
――試験を受けたらすぐ合否がわかるんでしょうか。
東京の場合は2週間後ぐらいに合否がわかります。
はがきを託しておくと郵送で合否判定を送ってくれます。
狩猟免許を取得するためのコスト猟友会の講習会費 : 10,000円
狩猟免許の試験の手数料 : 5,200円
(免許の交付代金は不要)――鉄砲はどのくらいで買えるんでしょうか?普通の散弾銃だったら新品で20万円ぐらいから。
中古でその半額ぐらい。
空気銃だったら10万円ぐらいからです。
中古だとやっぱり半額ぐらい。――弾はいくらぐらいするんでしょうか?散弾銃の弾、狩猟用のは、小さな粒(散弾)がたくさん入ったシェルですけど、これ1発で100~300円ぐらい。
クレー射撃用は40円ぐらいです。
空気銃の弾は、小さなダルマみたいな形をしたもので200発で1,500円前後ですね。
もちろん、もっとイイ弾の場合は値段は上がります。
――弾はそんなに高くないんですね。
そうですね。
趣味としてもそんなに高価なものじゃないですよ。
クレー射撃だと、射撃場に行って、4ラウンドやって(弾代を含めて)1万円でお釣りがくるぐらいの趣味です。
お皿が25枚飛んできて、それを1ラウンドって言うんですが。
この金額には、射撃場に支払う、産業廃棄物処理代とか保険代とか全部入ってこれぐらいの金額です。
――他に何か必要なものはありますか?銃と弾を保管しておくスチール製のロッカーが要りますね。
――それは法律で決まってるんですか?そうです。
鍵のかかる金庫みたいな所に保管しなくちゃいけないんです。
でも普通の家に金庫なんかないでしょうからね。
――そのロッカーはいくらぐらいなんでしょうか。
銃用と弾用の2台で4万円ぐらいですね。
――持ち運び用に銃のケースも要るのでは?それはまあ10,000円もあれば買えるでしょう。
――他に「あるといい」という物は?空気銃の場合は、スコープがあった方がいいですね。
止まっている獲物を狙うものなので。
スコープは大体2~3万円ぐらい。
あとは……犬かなあ(笑)。
――犬は必要でしょうか?獲物を見つけたり、追い詰めたり、取ってきたりするのに、犬がいると便利ですよ(笑)。
猟によっては人より犬の方が多かったりしてね。
先日、宮崎の方でやってた猟なんか、犬が十数匹で人が2、3人とか(笑)。
――全部そろったら猟師デビューですね(笑)。
あと税金払うのを忘れちゃいけません(笑)。
各都道府県に狩猟税というのがあって、たとえば埼玉県に猟に行くんだったら埼玉県に「狩猟税」を支払わないといけません。
狩猟税を支払って初めて「狩猟者」として登録されます。
――税金があるんですね(笑)。
あと保険ね。
昔はハンター保険というのが生保会社にあったんだけど、今は個人加入できないんです。なので猟友会に入会してそこの共済でそれに替えています。
(※東京都猟友会ではオプションでハンター保険(団体)にも加入できます)――それはいくらなんでしょうか?東京都猟友会の会費総額は12,000円ですね。
狩猟者としての登録コスト狩猟税(網猟免許、 わな猟免許、 第一種銃猟免許) : 16,500円
狩猟税(第二種銃猟免許) : 5,500円
交付手数料 : 1,800円
猟友会の登録費 : 12,000円
(道府県民税の所得割の納付を要する者の場合です)というわけで、散弾銃と空気銃、両方使える第一種銃猟免許で猟師デビューの場合のコスト合計です(あくまで試験に一発でうかったらですが)。
犬の代金は入っていません(笑)。
初心者講習会 : 6,800円
教習射撃資格認定 : 8,300円
射撃教習費 : 約30,000円(※)
所持許可、認可証の交付・最初の1丁 : 10,500円
猟友会の講習会費 : 10,000円
狩猟免許の試験の手数料 : 5,200円
新品散弾銃 : 200,000円(※)
銃の持ち運び用のケース : 10,000円(※)
弾50発 : 5,000円(※)
保管用ロッカー : 40,000円(※)
狩猟税(第一種銃猟免許) : 16,500円
交付手数料 : 1,800円
猟友会の登録費 : 12,000円
合計 : 356,100円
(※印はあくまでも参考例です)ゼロから猟師デビューするのにかかるコストは約36万円です。
さあこのコスト高いでしょうか?(高橋モータース@dcp)【拡大画像を含む完全版はこちら】