2012年6月2日 08:03
鉄道トリビア (153) 半世紀近く列車が走っていないのに廃止されない路線がある
西武新宿線の終点、本川越駅のひとつ手前に南大塚駅がある。
ここから北西方向へ、入間川の河岸付近へ向かう線路が放置されている。
この線路は西武鉄道の「安比奈線」という貨物線だ。
廃線跡に見えるけれど、じつは休止扱いで、西武鉄道の会社要覧にも鉄道事業路線として掲載されている。
営業キロは3.2kmとのこと。
駅のきっぷ売り場に掲げられた路線図には表示されていない。
その理由は休止中だからというより、そもそも貨物線だからである。
安比奈線は1925(大正14)年、南大塚~安比奈間で開業している。
途中駅はなかった。
この路線の目的は入間川に堆積していた砂利の運搬だ。
関東大震災の2年後、首都東京は復興建設ブーム。
その建設資材として砂利を必要としていた。
1967(昭和42)年、入間川からの砂利の採取は禁止となり、安比奈線は役目を終えた。
しかし、安比奈線は廃止されなかった。
1967年は「いざなぎ景気」と呼ばれた高度経済成長期にあたる。
東京郊外の住宅開発が進み、「核家族」という言葉も生まれた時代だ。
西武鉄道としては、将来は通勤路線として活用しようと考えていたのかもしれない。