奥様はコマガール (52) 妻の言い訳に興味が湧いた夜
今から約7年前、2005年7月27日の朝日新聞に某所で起きたコンビニ強盗事件の記事が載った。
記事によると、ある日の深夜のコンビニで不審な男がレジにいる店員に包丁を突きつけ、現金を奪おうとしたという。
しかし、店員が首尾よく防犯ブザーを鳴らしたところ、男は缶ビールを1本奪っただけで逃走し、その後あえなく御用となった。
と、ここまではありがちな三面記事なのだが、この事件は後日談のほうが興味深い。
犯人は警察の取り調べに対して、いけしゃあしゃあとこんな言い訳をしたというのだ。
「レジで千円札と包丁を間違えて出したら、ブザーを鳴らされたんです」。
嘘をつけ。
いくらなんでも言い訳が苦しすぎるだろう。
このように人間が窮地に追い込まれたときに放つ言い訳とは、実に喜劇的でおもしろいものである。
裁判傍聴の醍醐味も、被告人の陳述(言い訳)にあるはずだ。
かくいう僕は、幼いころから父に「言い訳をするな」と叩き込まれてきた。
30代半ばになって、いまだに父に怒られたり説教されたりすることが多い僕だが、その最中の僕は頭の中にどんなに正当な抗弁が浮かんでも、絶対にそれを口にしないようにしている。