鉄道トリビア (159) 電気で走る電車、プラスとマイナスはどこにある?
たいていの電車は架線から電気を取り込んでモーターを回す。
地下鉄など一部路線や新交通システムは、線路の端に電気を流すためのレール(サードレール)があって、そこから電気を取り込んでモーターを回している。
ところで、小学校の理科の実験を思い出すと、電流は回路を作らないと流れない。
乾電池のプラス側からモーターに線をつなぎ、モーターからもうひとつ線を出して、電池のマイナス側につなぐ。
こうして、プラス側からマイナス側に電流が流れていく。
電化された鉄道路線を電流の回路と考えた場合、電車はモーターを乗せた大きな箱だ。
電池にあたる変電所から届いた電流は、架線に送られる。
だから架線がプラス側だろうとは想像できる。
では、もう一方のマイナス側はどこにあるのだろう?プラスがあればマイナスがある。
それが電気の基本だ。
じつは、電車のマイナス側はレールである。
電車は架線から電気を取り込んで、モーターを回したり、明かりをつけたり、クーラーを入れたりして、その後は車輪を伝わってレールに流れ、変電所に戻る。
これで回路の完成だ。
そう、レールにも電流が流れているというわけだ。
ちょっと待て。
それなら、「踏切でうっかりレールに触ったり、雨でレールが浸水したりしたら感電するのでは?」なんて思うかもしれない。
しかし、それはおもに3つの理由で心配はいらないようだ。
理由の1つ目は、電極の片側だけ触れたとしても電流は流れないからだ。
電線に鳥が停まっても感電しない。
それと同じで、電極の片側だけ触ったとしても体に電流は流れない。
ただし人間の場合、プラスである架線のほうは危険だ。
鳥は空中にいるけれど、人は架線の他にどこかが体に触れている。
そこがアースになって電流が伝わってしまう。
架線は高電圧だから、触らなくても、近づいただけで放電を受けるかもしれない。
しかし、レールはマイナス側だし電圧も低いから大丈夫。
理由の2つ目は、レールに伝わった電流は「吸い上げ線」という電線を使って空中の「き電線」に送られるから。
「き電線」は架線のそばに張られたもうひとつの電線だ。電流の帰り道は「き電線」で、これが変電所へつながっている。
レールを電流が流れる部分は、車輪と最寄りの吸い上げ線の間になる。
理由の3つ目は、レールを流れる電流はわずかだからだ。
架線から流れてきた電流は、電車内で消費されてしまい、残った電流だけ流される。
電流量が少なく、電圧も低いから危険度は低いというわけだ。
ここまでは直流電化区間の話だ。
直流ではプラスとマイナスの電極が固定されている。
しかし交流電化の場合、一定の周期でプラスとマイナスが入れ替わる。
これによって、家庭の電化製品もプラグとコンセントの向きを気にしないで使える。
でもプラスとマイナスが入れ替わるなら、レールにも高圧電流が流れるはず……、と思うけれど、実際は車両に搭載された変圧器などを使い、レール側の電圧を低くしている。
電車を動かす大電流はつねに、架線からレールへ、という向きで流れているのだ。
では、鉄のレールを持たない新交通システムはどうだろうか? コンクリートの路盤に電流は流れない。
そこで新交通システムの場合は、サードレール側に複数の電極が設置されている。
直流ならプラスとマイナスの2本、交流(三相交流式)なら3本の線があって、それぞれが電車から伸ばした接点に対応している。
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