くらし情報『奥様はコマガール (59) 嫁という表現に見る男女間の認識の違い』

奥様はコマガール (59) 嫁という表現に見る男女間の認識の違い

奥様はコマガール (59) 嫁という表現に見る男女間の認識の違い
チーと結婚して2回目の盆が過ぎたわけだが、僕はいまだにチーのことを人前で称するとき、「妻」という言葉を口にできないでいる。

この「妻」という表現は連載第25回目でも書いたように、本来自分が理想としていたはずの呼称である。

それにもかかわらず、実際に口にすると、無性に恥ずかしくなってしまう。

文章だと平気で書けるのにね。

僕なりに自己分析してみたところ、この恥ずかしさの正体はいわゆるナルシシズムに対する抵抗感だと思う。

つまり、男性が自分の配偶者を人前で呼ぶときは、昨今巷で流行している「嫁」という表現より、「妻」という表現のほうが適切かつスマートで、どことなく品もあると僕自身が強く自覚しているからこそ、そういう独りよがりの強い自覚を人前で晒そうとする行為が、ある種の自己陶酔の顕示に思えてしまうということだ。

例えるなら中学生ぐらいの頃、初めて髪形をセットして登校したときに感じた気恥ずかしさに似ている。

山田の奴、かっこつけやがって――。


あの頃は友達にそんな風に思われないかと妙にドキドキしたものだが、「妻」という言葉にもあれと似たような感覚がある。

今風の言葉を使うと、いわゆるドヤ顔をしながら「僕の妻が~」

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