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”資源と中国に依存”のイメージは本当? オーストラリア経済の意外な事実とは?

マイナビニュース
”資源と中国に依存”のイメージは本当? オーストラリア経済の意外な事実とは?
オーストラリアというと皆さんは何を思い浮かべるだろうか? コアラやカンガルーなどの「豊かな自然」や「広大な国土」などが一般的だろう。

では、「オーストラリア経済」ではどうだろうか? 鉄鉱石や石炭などの「鉱業が中心」や、そうした資源の輸出を通じた「中国経済への依存」などのイメージをお持ちの方も多いのではないだろうか? だが実は、オーストラリア経済は実に多様な側面を持ち、投資先としてオーストラリアを考えてみても、結構違う切り口があるようだ。

今回は在日オーストラリア大使館で行われた講演において示された、そうしたオーストラリア経済の”意外な事実”についてレポートしたい。

講演は、東京都港区のオーストラリア大使館で7月に金融機関向けに行われた、日興AMスペシャルアカデミー『オーストラリア投資の魅力、再発見』と題した一連のセミナーの中で行われたもの。

在日オーストラリア大使館公使(財務・経済担当)の、ヘギョン・ホールダウェイ氏が、さまざまな角度から、オーストラリア経済の”意外”で”知られていない”事実を紹介した。

まず驚いたのが、オーストラリア経済が、必ずしも、鉄鉱石や石炭、ウランなどの「鉱業」が中心ではないということだ。

ホールダウェイ公使の示した資料によれば、オーストラリアの産業構造において、鉱業は9.5%を占めているにすぎない。

つまり、1割未満ということだ。


オーストラリアの産業構造においては、金融・保険サービスが10.6%、卸・小売が9.0%、一般的な製造業が8.3%、建設業は7.7%と「非常に分散、多様化されている」(ホールダウェイ公使)のが特徴。

しかも、これらの産業以外の「その他」も47%を占め、まさに”多様”な産業構造になっている。

さらに驚いたのが、オーストラリア経済が、それほど中国に依存していないという点だ。

最近よく新聞などに出てくる「中国経済が減速している」というニュースから、「では中国に依存しているオーストラリアはまずいことになるのではないか」と思う人も少なからずいるだろう。

つまり、鉄鉱石などの輸出先の中国経済が減速すれば、オーストラリアも道連れになるのではないかというイメージだ。

だがホールダウェイ公使によれば、これは大変偏った見方だ。同公使によると、オーストラリアの輸出状況において、2000年-01年に中国への輸出は、オーストラリアの輸出全体の5.7%を占め、2010年-11年には26.4%と確かに高まっている。

だが、一般的なイメージからすれば、それほど高い数字ではないというのが筆者の印象だ。


一方、オーストラリアと伝統的に結びつきか強い日本への輸出の割合は、2000年-01年の19.7%から2010年-11年には19.1%となっており、中国より若干少ないものの、依然として存在感を示している。

さらに注目すべきは、韓国やインドへの輸出も着実に増えていることだ。

韓国は7.7%から9.2%に、インドは1.7%から6.4%に増加。

着実に、中国以外の経済が好調な国への輸出も増やしている。

そうした点からすると、ホールダウェイ公使が言うように、オーストラリアは、「全ての卵(=輸出)を一つのかご(=中国)に入れているわけではない」(同氏)のが現実で、中国への過度の依存はせず、産業構造と同様、輸出先も分散・多様化しているというのが実際の姿のようなのだ。

さらに意外なのは、一般的な日本人には知られていないと思われる、オーストラリア経済の好調さだ。

いわずと知れた2008年のリーマン・ショック。

これにより欧米をはじめとする先進国の経済は大打撃を受け、財政出動や金融緩和で応急処置を施したものの、その際の無理な財政出動などが影響し、現在は財政危機に見舞われるなど、好調とは程遠い状況だ。


だが、2008年の世界金融危機以降、オーストラリアは他の先進国をしのぐ経済成長を達成している。

2008年6月から2012年3月までのGDPの累積成長は、オーストラリアが9.0%であるのに対し、カナダは3.9%、米国は1.4%、日本はマイナス1.0%、ユーロ圏はマイナス1.8%、英国はマイナス3.2%であり、オーストラリアは、まさに”圧倒”している。

ホールダウェイ公使が講演で、「これだけ厳しい環境の中でも、いかにオーストラリア経済が堅調であったか分かると思います」と誇らしく話すのも納得だ。

では、他の先進国と比べて、「失業率」はどうか? 失業率というのは政治的にも怖い数字で、中東で起きた一連の民衆革命「アラブの春」は、若者の失業率の高さが、革命が起きた大きな要因だったといわれている。経済的にみても、失業していない人達は所得のある人、すなわち消費ができる人口であり、失業率はそれを測る重要な指標である。

2003年までさかのぼると、オーストラリアの失業率は、米国と同様の6%ぐらいだった。

だが、金融危機が増大するにつれ、米国の失業率はピーク時には10%にまで高まり、今も高止まりしている。

これに対しオーストラリアは現在の失業率は5%ぐらいになり、2003年に比べても低下しているのだ。


ホールダウェイ公使は、「我々としてはこれは自然の失業率でほとんど完全雇用に近い状態と思っている」との認識を示した。

つまり、雇用という側面からも、オーストラリア経済の順調さが分かる。

だが経済が好調と聞けば、「インフレ」「バブル」を心配する人も多いだろう。

では、オーストラリア経済は”過熱”してないのか、インフレ率はどうなっているのか、を見てみたい。

オーストラリアでインフレを注視・監督しているのは、オーストラリア準備銀行。

物価の安定のために、2~3%というインフレ率の幅を設けているという。

この幅は「ターゲットバンド」と呼ばれており、準備銀行はこれに照らして金利の調整を行っている。

問題はそれがうまくいっているかどうかだが、ホールダウェイ公使によれば、物価は見事にこの幅におさまっているという。


したがって、「オーストラリアにとっては、インフレは大きな問題となっていない」(同公使)。

また、世界的な金融危機の発端となった「住宅市場」についても、注目しないわけにはいかない。

住宅市場は多くの国でバブルの発端となり、その価格が急激に下落することによる経済への打撃は、日本も「バブル崩壊」とその後の20年にわたる経済の低迷によって、骨身に染みている現実だ。

では、オーストラリアの住宅価格はどうなっているのか?結論から話すと、オーストラリアの住宅価格は2010年をピークとして、急激にではなく徐々に下がってきている。

つまり、「ソフトランディングを果たした」(ホールダウェイ公使)のだ。

いかがだろうか? オーストラリアに詳しい人にとっては、それほど意外な事実ではなかったかもしれないが、少なくとも、「鉱業に依存」「中国に依存」という、オーストラリアに対するステレオタイプの見方をしていた筆者にとっては、意外な事実が多かった。「老後はオーストラリアに移住したい」さらに、「なんらかの形で投資してみたい」と思ったほどだ。

ホールダウェイ公使は、オーストラリア経済を総括して、「強く、そして安定的であるのが、投資家にとっては魅力」と述べていた。


豪ドルの高い金利にのみ注目するのではなく、もっとオーストラリアについて知ってみる価値はあるのかもしれない。

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