英語上達のコツは、最初の一歩を踏み出す勇気 - アルティメット日本代表・森友紀さん
日本は世界トップクラスの実力をもち、今年7月に行われた世界選手権では、ウィメン部門日本代表がアメリカを下して、20年ぶり2度目の世界一に輝きました。
アルティメットは審判をおかないスポーツであり、試合中に行うジャッジについては選手同士が英語で行うという規則があります。
今回は、そのアルティメットウィメン部門日本代表監督兼選手の森友紀選手に英語の学習方法について話を伺いました。
――競技をする上で、英語はどんな役割を果たしますか?アルティメットの選手にとって、英語は必須です。
アルティメットは審判を置かず、どちらがラインを越えたか、ファウルをしたかなど、選手同士がセルフジャッジを行うというルールを採用していて、公用語として英語が使われます。
でも、残念なことに、アルティメット競技において、一番英語が話せないのが日本人かもしれません。
英語力がないと、相手の言っていることが理解できませんし、自分も言いたいことも伝えられません。
英語が話せないと戦術的不利になるだけでなく、フラストレーションもたまるんですよね。
じゅあ、英語を正式に学べば……という話なのですが、アルティメットはまだまだマイナーな競技であり、選手は決して恵まれた環境で競技をしているわけではなく、そこまで手が回らないというのが現状です。
世界大会に行くのも大部分が自費なので、遠征費を稼ぐために仕事をしながら競技生活をしている選手ばかり。
そんな私たちにとって、時間とお金をかけて英語を学ぶのは高い壁です。
もちろん、英語力の必要性は痛いほどよくわかっているんですけどね。
私自身も、なかなかその一歩が踏み出せないという状態が続いていたんです。
でも、昨年の11月ごろから、「Global Athlete Project(C)(グローバル・アスリート・プロジェクト)」との出会いをきっかけに、やっと英語の勉強を本格的に始められました。
これは、世界に挑戦するアスリートを語学面でサポートするプロジェクトで、実用外国語トレーニングソフト「Rosetta Stone(ロゼッタストーン)」を無償提供してくれるというものです。
現在、アルティメットの日本代表5名がプロジェクトのサポートを受けています。
――ロゼッタストーンを使って、どのように学習していますか。
私はいつもiPadを持ち歩いていて、移動中の電車の中とか、家事の合間とか、時間を見つけてやっています。
気軽にできるのがロゼッタストーンのいいところです。
あと、質問がクイズ形式のようになっているので、ゲーム感覚でできるのが私にはピッタリです。
「英語を勉強しよう」と構えず、「ロゼッタストーンをやろう」と楽しんでやっています。
多い時で週4回くらい、オンラインで会話ができるスタジオを50分、一人で学習するトレーニングを30~40分というスケジュールでやっています。
中でも、スタジオが楽しくてハマっていますね。
スタジオというのは、ネイティブスピーカーの講師と世界各国にいるほかの生徒とオンラインで会話しながら、トレーニングの成果を実際に試せるグループレッスンのことです。
私の大のお気に入りです。
例えば、ある日の参加者にメキシコ人がいたのですが、日本が夜でもメキシコでは朝らしく、鶏が大きな声で鳴いているときもありました(笑)。
講師と話すのはドキドキなのですが、世界がつながっているようでワクワクしますよ。
われわれの場合、試合で年に2~3回しか海外に行かないので、自宅にいながら海外にいる方と話せる機会ができるのは大きいですね。
実際に会話をすることで、学んだことが身についているか実感でき、自分のレベルも把握できたのが良かったです。
――ロゼッタストーンで英語を学んで良かったことは?一番大きいのは、会話の最初の一歩がスムーズに踏み出せるようになったということかな。
私は、英語でコミュニケーションをとる上で、この“最初の一歩”がとても大事だと思っています。
自分から積極的に話せば、相手はこちらの英会話能力を察してくれて、それに合わせたレベルで話そうとしてくれます。
“最初の一歩”にためらいがなくなったのは、英会話能力に自信がついたのはもちろん、スタジオでのレッスンを通して、教科書通りの発音ではなく、ネイティブやいろんな国の人が話す英語を耳にしているというのも大きかったのではないかと思います。
少しでも自分の英語に自信がもてるようになったことで、海外の選手と積極的にコミュニケーションをとれるようになりました。世界中のアルティメッターと友達になれることが何よりうれしいですね。
――最後に、今後の目標を教えてください。
日本代表は今回の世界選手権で引退して、今後は、日本代表の強化に携わっていくつもりです。
まずは、競技の認知度を上げて、若い選手の環境を変えていけたらなと思うんです。
そうすれば、選手は競技に集中できますし、英語学習にも時間とお金をかけられるようになりますよね。
それから、相手をリスペクトするという、アルティメットの文化をほかのスポーツにも広げていきたいという思いもあります。
アルティメットでは、試合が終わったら敵と味方で交互に並んで円陣を組み、お互いのプレーを褒め合うという慣習があるんですよ。
セルフジャッジもそうですが、このように、試合中に選手同士が深いコミュニケーションをとるスポーツはほかにはありません。
そこが大変でもあるのですが、魅力でもあります。
私自身、アルティメットを通していろんな国の人たちとつながることができましたし、それによって世界観も広がりました。
ぜひ、みなさんにもアルティメットの魅力を知っていただけたらと思います。
まずは、私たちのプレーを見に来てください。
きっと、楽しんでいただけるはずです。
英語ができるとよりおもしろく観戦できると思いますよ!■お話しを伺った方森友紀(もりゆき)さん 大学時代にアルティメットに出会い、技術の取得のため本場・カナダへ留学。
2008年の世界選手権では女子部門の日本代表キャプテンとして銀メダル、2012年の世界選手権では監督兼選手として、20年ぶり2度目の金メダルを獲得した。
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