岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (19) 日本破綻なら海外逃亡? - 『ミス・サイゴン』が教える”国を捨てる”事の意味
ここ2回堅い話題が続いたので、今回は少し柔らかいお話にいたしましょう。
1989年ロンドンのウェストエンドを皮切りに、1991年にはニューヨークのブロードウェイで上演されたミュージカル『ミス・サイゴン』。
日本には1992年になって東京の帝国劇場で上演されることになりましたが、今年からまた再演が始まっています。
今となっては20年も前の話になりますが、当時はバブルの名残もあって、広告料もまだまだたっぷり計上できたのでしょう。
誌面、電車の中、東京中のあちらこちらで上演を知らせるポスターを見かけたものです。
そうなると、俄然観たくなるというのが人間の心理。
そんな時に知り合いからチケットを譲り受けたのが最初の観劇でした。
時はベトナム戦争までさかのぼりますが、頬の肉がげっそりとこけ、疲労の色が隠せない一人のベトナム人女性。
顔をしわくちゃにして泣きながら自分の娘を父親(米軍兵)の待つ米国へと送り出す。
ベトナムのタン・ソン・ナット空軍基地での母と子の別れ際の様子が、一枚のモノクロの写真に残されています。
この写真に作詞家の一人が触発され、作られたのが「ミス・サイゴン」でした。