「耳読書」を始めて1年。TOEICリスニングパートで満点に!その秘密は?
「RとLの区別がつくようになったのは、20代半ばを過ぎてから」という金井さんにTOEIC対策法について、また、金井さんが英語力を飛躍的に伸ばすきっかけとなった「耳読書」について、お話を伺いました。
──TOEIC学習のモチベーションを保つためにはどうすればいいでしょうか。
モチベーションは潮の満ち引きのように変化するもの。
波があるのは当然です。
それを知るだけでも少し気持ちが楽になりませんか?いつも最高の状態をキープするのは不可能で、モチベーションは落ちることがあって当たり前です。
モチベーションを上げる方法はいくつかあります。
まずは必要性を高めること。
お尻に火がつけばやるしかありません。
私のTOEIC初受験の時がまさにそうでした(笑)。
また、やるべきことが絞れて、何をやらなくてもいいかがはっきりした時にもモチベーションが上がります。
例えば、TOEIC受験を2カ月後に控えている人が、字幕を見ずに映画を見られるようにトレーニングする必要はありません。
タスクを細分化させ、やるべきことが見えてくる──「これは必要だけど、これはやらなくていい」ということがわかってくると、自然とモチベーションが高まります。
あとは、英語を自分の楽しみとリンクさせることです。
「楽しむ」ことは、英語に限ったことではなく、とても本質的なこと。
好きなサッカーの試合なら、時差を気にせずリアルタイムで見たいなど、好きなことや自分の興味のあることなら、眠くても、疲れていてもやめられないことってありますよね。
それを英語に絡めるんです。
好きなことは習慣化しやすく、苦労なく続けられるものです。
──TOEIC受験のための準備期間はどのくらい必要でしょうか。
「準備はずっと、対策は直前」と、私は分けて考えています。
英語の勉強は一生もの。
英語のプロの方であればあるほど、自分の足りないところがわかるので、英語との付き合いをやめません。毎日、英語に触れることが大切です。
インターネットが発達した現在は、一昔前よりも英語の世界に触れることが習慣化しやすくなりました。
ネット上には一生かかっても読み切れないほどの英語の記事が毎日、更新されていますから、興味をひかれる記事も見つかるはずです。
まずは、自分の生活サイクルの中に、英語に触れることができる時間を確保するようにしましょう。
新しい時間を作るというよりはスキマ時間に入れていくのがいいと思います。
通勤中に、2分間、時間が空いたら、スマートフォンに同期させておいた番組をチェックしたり、15分あったらオーディオブックを聞いたりするなど、わずかな時間でもできることはたくさんあります。
時間が空いたら何をやるか、あらかじめ準備しておくことも大切です。
時間ができてから何をやるか考えても、考えているうちに時間は過ぎてしまいます。
2分だったらこれ、15分だったらこれと、やることを決めておきましょう。
私の場合、15分空いたら海外ドラマを見ます。
15分で全編を見るのは不可能ですが、15分のスキマ時間が4回あれば、それで1時間になります。
──具体的に、TOEIC受験の直前対策としてはどのようなことが有効でしょうか。
試験直前に勉強して効果があるのは単語。
リスニングと例文とともに覚えると、英語力は格段にアップします。
また、基本的なことですが、自分のレベルと取りたいスコアを確認しTOEICの問題形式に目を向けること。
TOEICの問題には傾向があるので、問題集などで傾向をつかみましょう。
例えば、TOEICに、「専制君主」という単語はまず出てきません。
問題集選びは自分のレベルに合ったものを選び、ほかの人の評価に振り回されないことを心がけてください。
もし失敗しても、問題集は1冊1,500~2,000円程度。
1冊くらい失敗したからといって、それで人生終わりではありません。
1冊の中に、ひとつでも役に立つことが書かれていたらもうけものだと思っていいくらいの気持ちが大切です。
また、自分の状態を知ることも大切です。
何をどうしたくて、TOEIC対策をするのか、考えてみてください。
どの程度、時間があるかもそうですし、満点を取りにいくのか、600点を取りにいくのかによって対策法は違ってきます。同じ600点を目指すにしても、リスニング300点、リーディング300点で600点を取ろうとしているのか、350点、250点で行くのかによっても対策法は異なりますが、はっきり答えられる人はなかなかいません。
自分にあった問題集、自分なりの勉強法、対策法を見つけましょう。
TOEICは、ロッククライミングのように一番急な斜面を登らなければだめだと思われがちですが、その前後左右にも空間は空いているんです。
──これまで2,000人を超える人に英語を指導してきた金井先生から見て、TOEICのスコアが一気にアップする人の共通点はありますか。
はい。
迷いを断ち切って、問題集を絞り、その問題集を徹底して、3周、4周繰り返したあとに、急激にスコアを伸ばす人が多いですね。
問題集は、文法だったり、単語集だったり、2週間程度で1周できるシンプルなものがいいでしょう。
初回から完ぺきでなくてもいいんです。
具体的な方法としては、まず1周目は、わかっていること、知っているけれどあいまいなこと、まったく知らないことを分類します。
その中で、スコアアップのカギとなるのは、「知っているけれど、あいまいなこと」。
単語を例にとると、見たことがあるけれど意味が思い出せず、正解を知ると、「ああ、そうか」となるものです。
それを中心に勉強しましょう。
まったく知らない単語は後回しで構いません。
2回、3回と繰り返すうちに、初めて見た単語がやがて「知り合い」へとグレードアップしていきます。
──900点以上を目指す上級者へのアドバイスをお願いします。
言うならばTOEICのレベルを超えるような力で「穴」をなくしていくことです。
990点(満点)を取っている人は、990点を取りに行っているのではなく、1,500点を取れるような、言うならばメーターが振りきれるような力で満点を取っているものです。
そのためには大量の英語に触れること。
苦行である必要はありません。
ご自分の好きなことで、英語に触れればいいんです。
また、中華~上級者の方には英語音声を聞いて書き取る、ディクテーションをお勧めしたいですね。
頭の中で英語を再構築しなければならないので、かなり力は付きます。
TOEICのリスニングセクションの、パート1から3をイメージしながら書き出してみましょう。“Have a nice day”が「ハバナイスデイ」と聞こえるリエゾン(連音)に慣れる効用もあります。
パート3、4の会話やナレーションの部分を、ナレーターと同じ速さで発音してみるのもいいでしょう。
900点以上の人にとってもなかなか難しくて、自分が録音したものを聞き、あまりの下手さにショックを受ける人も多いんですよ。
──留学経験のない金井さんは、どのようにして英語力を伸ばしたのですか?留学経験もない、英文科卒でもない、夫も普通の日本人、父親の転勤もない──。
ないない尽くしがコンプレックスでしたが、逆にそれがモチベーションになり、今では、“Where did you learn English?”と聞かれるのがおもしろくなりました。
私の場合、とにかくたくさん英語を聞きましたし、英語のスピーカーが来る講演会とか、好きな映画は字幕版を見るとか、小さい習慣ですが、なるべく英語を使って人に会う機会をキャッチするように心がけました。
ものおじしない人は外国人がよく集まるパーティーやバーなどに積極的に足を運んでみてはいかがでしょう?瞬発力を身に付けるためにも場数は必要です。
TOEICで満点を取る人でも、瞬発力がないと、男の人の話をしていても、思わず、“she”と言ってしまうこともあります。
学んだことをアウトプットする場所は、お金を使ってでも得た方がいいと思います。
学びにいくのではなく、使いにいくという感覚でないともったいないです!学んでおいて、学んでおいて、スクールには使いに行くといいでしょう。
──金井さんが推奨されている、「耳読書」についてくわしく教えてください。
本に書かれた内容を録音したオーディオブックを聞いて、耳から読書することを、私は「耳読書」と読んでいます。
私の場合、耳読書をするようになってから、約1年後に、TOEICのリスニングセクションで満点が取れるようになり、英語のある生活が楽しくなりました。
ポイントは素材選び。
英語を学ぶためにではなく、自分が英語で何を聞きたいかを重視して選ぶと、無理なく楽しく続けられます。
日本語でも勉強するために買った本は読むのが苦痛ですが、自分がおもしろそうだと興味をひかれた本はすぐに読むでしょう?それと同じです。
──オーディオブックの素材選びのポイントについて、もう少しくわしく教えてください。レベル的にはちょっと頑張って聞けるものがいいですね。
欧米では、オーディオブックが発達していて、あらゆるジャンルのものが音声化されているので、選択肢はたくさんあります。
『はらぺこあおむし』(The Very Hungry Caterpillar)などの絵本から始めてもいいでしょう。
臨場感たっぷりに話してくれるので、大人でも楽しいですよ。
絵本が幼稚に感じるなら、日本語で読んだことのある本の英語版に挑戦してみるのも手です。
私にとっては、大きな飛躍のきっかけとなったのは、『ハリー・ポッター』シリーズでした。
映画化される前から、私の頭の中で、ハリー・ポッターは空を飛んでいたんです(笑)。
とにかく、自分が興味をひかれる、頑張らなくても楽しく続けられる素材を探すことです。
パーキンソン病発病後のマイケル・J・フォックスが朗読しているものなど、政治家やスターの自伝などを著者自身が朗読しているものもあります。
素材によって声が違いますから、さまざまな素材に触れているうちに、聞き取ることができる英語のストライクゾーンが広がっていくという効用もあります。
──リーディングの対策法についても、教えていただけますか。
耳読書で、リーディング力も上がります。
TOEICのリスニング問題の文章よりも長く、早いオーディオブックの英語を前に戻らず聞き取らなければならないわけですから、処理スピードは自然と上がります。
単語が2、3個わからなくても、全体像で理解する習慣も身に付きますから、英文を語順のまま、前から理解する感覚は読解にも役立ちます。
英語の勉強は、複合的なものです。
リスニングだけやってリスニングだけ力がつくということはありません。
何かをやれば、それに引きずられるようにして、必ず総合力はついていきますので「楽しむ」気持ちを忘れずに学習に取り組んでください!金井さやかが選ぶ英語オーディオブック■お話を伺った人
金井さやか氏。
英語コーチ、講師トレーナー、パフォーマー(パントマイム)。
留学経験なしで英語力を付け、英検1級、TOEICテスト990点(満点)を取得。
日本人が弱点を克服して話せるようになるように、現在までに子どもから大人まで2,000人以上にコーチを行ってきた。現在は、子育てをしながら、英語指導、学習情報を発信。
各種メディアへの寄稿も多い。
■著書
・国内でTOEICテスト990点―留学しなくても英語力は伸ばせる!(中経出版/1,470円) ・英語は耳読書で学べ(中経出版/1,680円) ・TOEICテスト満点コーチが教えるビジネス英語(中経出版/1,470円) ・英語の授業では教えてくれない 自分を変える英語(野村るり子・金井さやか著/講談社インターナショナル/1,260円)【拡大画像を含む完全版はこちら】