「シェアハウス」興味はあるけど、本当はどうなの?
しかし、最近では、設備を最新型に整え、またおしゃれな物件ということで、周辺相場と同等の賃料、あるいはやや高額な物件もあり、一概に「低コスト」とはいいきれなくなっています。
居住者の中心は、20代~30代。
中には、若年者からファミリー、高齢者が一緒に暮らす物件もあり、このようなシェアハウスには、これまでの賃貸住宅とは全く異なる視点の選び方が必要です。
今回は筆者がこれまで取材を行った「シェアハウス」での事例を紹介します。
■一人でも、寂しくない!
筆者が以前お伺いしたことがあるシェアハウスでの話。
広ーいリビングに「ドン」と置かれた大きなダイニングテーブル。
テーブルの椅子に座って小さな女の子が絵を描いています。
傍らで女の子に話しかけている女性は……お母さんと思いきや、このシェアハウスに住む、独身女性でした。
ここでは、複数の単身者とファミリーが一緒に暮らしています。
それぞれに個室があり、広いキッチンやリビング、トイレ、お風呂を共有しています。
キッチンの壁には、調理の当番表。
食事を申し込んだ人たちで順番に食事を作るそう。
さまざまな生活上のルールがあり、それは、居住者同士の話し合いで現実に合わせて決めていくとのこと。
「熱を出したときには、おかゆを作ってもらって助かりました。
一人でも寂しくないですね。
一人になりたいときは部屋に入るので、人との距離を調整できるのがよいと思います」と、女性が話したのが印象的でした。
■シェアハウスに向く人、向かない人
シェアハウスに向いているのは、「整った設備よりも人との緩やかな暮らしを楽しみたい」という人です。
つまり、ハードという建物よりも、ソフト(つながり)を重視するタイプです。
ですから、同居する人同士の関係がよければ、設備が古いなどはあまり気にならないでしょう。
このため、まずは「人に配慮ができる」「共同生活に向いている」という「資質」が必要になります。
一方で「つながり」を重視する反面、人間関係によるストレスも存在します。よく聞くトラブルに「音がうるさい」という声があります。
完全に隣室と壁で隔てられている一般の賃貸住宅でもこういった問題は生じやすいもの。
ましてや、一つの住まいを壁で仕切った形態では、一層の配慮が必要になります。
音にとても神経質な人は、このような暮らし自体、難しいかもしれません。
設備面での問題もないわけではありません。
「シャワーやトイレが同時間帯に集中して使えない」「いつも誰かが洗濯機を使っている」「洗濯干し場がいつもいっぱい」「共同の冷蔵庫なのでスペースが足りない」などという声もあります。
■まず居住者に会ってみる
シェアハウスを選ぶには、建物のチェックに加え、居住者に会って決めるのが必須。
その人たちは、いずれ共同で暮らす人なのですから。
そして、納得するまで質問しましょう。
例えば、住んでいる人の年代や性別をはじめ、友人の宿泊の可否、居住者の生活時間帯、居住年数や退去の理由、問題解決の方法、共用施設をはじめとするルールなど。
さらに、ハード面についても尋ねます。
共同設備の使い方、私物を共有スペースに置いてもよいか、どのような不便があるか、不便がある場合はどう解決しているか。
なお、共有施設が多いほど、自分の自由度は下がります。
設備のほか、家具や家電の共有はあるのか、家電など個別に持ち込めるものに制限はあるのかも確認。
いずれも自分が許容できる範囲であるかがポイントです。
また、「なぜシェアハウスを選んだか」は、居住者の価値観を知る手がかりになります。
自分と似た回答であれば、居住後も楽しく暮らせる可能性が高まります。
また、世帯数が少ないほどアットホームになりますが、時には人間関係の逃げ場がないこともあるので、自分にマッチしているタイプを選びます。
なお、物件によっては、居住者から「入居審査」を受ける場合もあります。
これは、「お見合い」のようなもの。
お互いを知るために、飾らず本音で話し合いたいものです。
そもそも自分が「シェアハウスに住みたい目的」はなんなのか。
これを明確にして住まい選びをしていけば、その後に楽しい暮らしが待っているはずです。
(不動産・住生活ライター 高田七穂)
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