「財政の崖(フィスカル・クリフ)」とは
減税などの期限が切れ、家計の税負担が増すことで個人消費が減少するほか、連邦予算の強制削減によって、公共投資や社会保障・福祉など政府の投資が減少すると予想されています。
このため、「財政の崖」が現実のものとなれば、米国経済が深刻な状態に陥ると懸念されています。
CBO(米議会予算局)は、最新の米国の経済・財政見通しの中で、「当局が『財政の崖』について解決策を講じられない場合は、米国経済は景気後退とみなすべき状況になるだろう」との認識を示し、GDP成長率が2013年上半期に前期比年率換算▲2.9%、通年では前年比▲0.5%になると試算しています。
同問題の回避には、減税失効の延期・歳出削減の見直しなどが必要となります。
民主党・共和党ともに「財政の崖」はなるべくなら、なだらかなものにしようとの方向性では一致しているものの、例えば減税については、民主党が、中間層向け減税の延長のみを行ない、富裕層や大企業に対しては相応の税金を払うよう求めているのに対し、共和党は、2013年以降も、富裕層なども含めた減税を延長すると主張しています。
現在の米議会は、上下両院で多数を占める党が異なる「ねじれ議会」状態にあることや、今年11月の大統領選挙・議会選挙を控えて、民主・共和両党の対立が続いていることから、選挙前に何らかの合意ができるかどうかは不透明な状況にあります。
問題の収拾に手間取ることとなれば、景気に影響が及ぶ可能性があるほか、2011年夏の連邦債務上限引き上げで議会が混乱した時のように、米国債の格付に影響が及ぶことも考えられることから、「財政の崖」の回避に向け、速やかに策が講じられていくことが期待されます。
(※上記は過去のものおよび試算であり、将来を約束するものではありません。
)(2012年9月10日 日興アセットマネジメント作成)●日興アセットマネジメントが提供する、マーケットの旬な話題が楽に読める「楽読」からの転載です。
→「楽読」【拡大画像を含む完全版はこちら】